プロフェッショナル・ゼミ

会社を辞めて独立したい人は勉強しない方が良い《プロフェッショナル・ゼミ》


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記事:鈴木佳文(プロフェッショナル・ゼミ)
 
 
「会社を辞めて起業したいと思っているんです」
僕は経営コンサルタントとして、創業塾や経営関連セミナーの講座で講師を務めることも多いので、起業の相談をよく受ける。その中で、「経験が無いんですが大丈夫でしょうか?」という質問や「資格を取った方が良いでしょうか?」という質問は6割を占めると言っても過言ではない。
 
これから、会社を辞めて独立・起業したいと考えている人は、このような質問をしたいと考えているのであれば、黄信号だ。
 
相談の内容にもよるけれど、「今の仕事が辛い」とか「人間関係に問題がある」とか、本人にとってはとても厳しい状況でも、独立を考えている人にかなりの確率で僕がするアドバイスは、「どうしてもやりたいことがあるので無ければ、今の仕事を頑張りながらじっくりと準備をしましょう」というもの。
 
このようにお伝えすると、がっくりしてしまう人もいるけれど、ノーリスクで起業してほしい僕としては、黄信号が出ている人にはストップを掛けざるを得ない。
 
「フランチャイズの加盟を考えているんですが、どこが良いでしょうか?」
「どんな業種が当たると思いますか?」
「居酒屋で起業したいのですが、どうすればうまく行きますか?」
 
こんな質問が出てくる人は、赤信号。起業は考え直した方が良い。
独立して働く、ということが自分事になっていないので、ほぼ確実にうまく行かない。そして、アドバイスをしたコンサルタントを恨むことになるだろう。
起業したら、給料は毎月振り込まれるものではなくなる。自分で動いてお金を稼がないといけないということを忘れてはいけないのだ。
 
赤信号の人は論外として、黄信号の人は準備の仕方次第では、ほぼノーリスクで起業できる。
独立起業した先輩として、準備の際に注意してほしいのは“勉強してはいけない”ということ。その理由を3つに絞ってお伝えしたい。
 
僕自身は、サラリーマンから修業期間を経て、経営コンサルタントとして独立して10年を超えている。サラリーマン時代よりは収入は増えているので、うまく行っているほうだと思うけれど、出だしは本当に辛かった。
 
師匠が気前よく、自分で開拓した客先は持ってまま独立して良いと言ってくれたけれど、あっという間に契約は解消された。
クライアントは、僕ではなく師匠がいるから契約をしていてくれたことに契約解消されてから気がついた。
 
今でこそ、修業時代の体験はノウハウの一部として僕の中で整理されているけれど、独立した当初は単なる知識に過ぎなかった。約2年間の修業期間中に書き留めたノートは20冊ほどになるが、自分のものとして消化されておらず、使い物にならなかった。知識だけでは対応できない、現場は生ものなのだ。
 
当時は、「ノウハウをしっかりと学ばなければならない」と自分を叱咤激励してノートに書き込みをしていたけれど、そんなものは役に立たない。会社で学んできた知識を元に起業しようとしても、僕が契約解消されてしまったように、“バックに会社組織があるから”付き合ってくれていたお客様かもしれないことは心に留めておいた方が良い。
 
こんなことを踏まえると、理由の一つ目は“勉強して得た知識は役に立たない”ということだ。
僕のノートが役に立たなかったのは、師匠の教えを殆どそのまま書き留めていたことによる。師匠自身のノウハウとしては確立していて効果も高かったけれど、僕がそのまま真似てみたところでうまく行く筈もなかった。師匠のノウハウは、師匠が積み重ねてきた経験があって初めて現場で活用できる。知識だけ吸収して出来る気になっていた。
 
起業相談で話を聞いていると、「ノウハウを知りたい」と一生懸命知識を集めている人が多い。知識を集めるだけで行動しない人を“ノウハウコレクター”と揶揄する言葉もあるけれど、自分の言葉で語れるくらいに体験と紐づけて消化しておかないと現場で使い物にならない。気を付けてほしい。
 
“セミナージプシー”という言葉を聞いたことがあるだろうか。
“ノウハウコレクター”と同じような意味合いだが、ノウハウを学ぶためにいくつものセミナーを渡り歩く人のことをいう。
 
恥ずかしながら、僕もジプシーの一人だったと思う。
改めて、セミナーに投資した金額を勘定してみたら2000万円を超えていた。
経営コンサルタントの養成講座、講師の養成講座、チラシの作成、動画の制作、カウンセリング、コーチング、などなどジャンルも様々。クライアントを支援する過程で必要なスキルを学んだということもあるけれど、プロとして食べていけるレベルに到達したものは僅かだ。
 
様々なセミナーを渡り歩く過程で知り合った人たちとのネットワークが役に立つことも多いし、学んだことも役に立つけれど、そこで満足してしまうことに注意したい。同じ目的で出会った人たちなので、話していても共通の話題で盛り上がれる。一緒にいると居心地が良かったり、何だか自分のステージが上がったような気がする。それが罠だ。
 
特に、高額の講座には気を付けてほしい。良い先生、良い講座は確かにある。一方で、いかにも成功が約束されたかのようにアピールしている講座で、役に立たないものも多い。体験談は簡単に信用してはいけない。高額講座を受講した自分を正当化するために、良いところばかり探して話している人もいるのだ。
 
僕の体験の中で例を挙げると、動画製作の講座を受講した時は、少なくとも受講料分の仕事が貰えるような話だったと記憶している。ところが、結局フォローも殆どなくて仕事を貰うまで進まなかった。機材もソフトも一式そろえたので、150万円を超える出費だったが、残ったのは“動画制作をかじったことがある”中途半端な状態だけだった。初心者の僕には、プロ仕様のソフトも撮影テクニックも消化するには高度過ぎたのだ。
 
こんなことを踏まえると、理由の二つ目は“方向性の明確でないセミナー受講は無駄になる”ということだ。僕が失敗したのは、どんな経営コンサルタントになりたいかのイメージが固まらないまま、「スキルを身につけないといけない」と脅迫観念に取りつかれたかのように、高額セミナーの謳い文句にフラフラと引っかかったからだ。活用することを前提に、身に着けたスキルで受講料が回収できるくらいの気持ちが無ければ、高額なセミナーは受講しない方が良い。
 
自分が、高額セミナーを受講してうまく行くかどうか、事前に試す良い方法がある。それは、天狼院のゼミを受講してみる事だ。沢山のセミナーを受講してたが、しっかりとした高額セミナーと共通している点が“毎週課題の提出を求められる”こと。天狼院のゼミで確実に課題が提出できないようなら高額セミナーは受講しない方が良い。実にリーズナブルに、役立つノウハウが身に着けられる。
 
「経営コンサルタントは役に立たないから来なくていい」
そんな厳しいセリフで僕が洗礼を受けたのは、初めて商店街支援の担当者として訪問した時のことだった。中小企業診断士の資格を取っていたし、1級販売士の資格も持っている。実務実習で商店街診断を経験したし、プロコンサルタントの養成講座で2つの商店街を支援した経験もある。
 
でも、そんなことは商店街の役員さんには関係が無かったのだ。ようやく僕が受け入れられ始めたと感じたのは、通い始めてから2年も過ぎようとした頃。資格の有無よりも、人柄や商店街の皆様と関わる姿勢に少しづつ見られ方が変わっていったように思う。
 
起業相談を受ける際に、「資格を取った方が良いでしょうか」と質問を受けた際に黄信号を出すのは、この否定された体験が大きく影響している。資格を取得したからといって、いきなり飯が食えるわけではない。サラリーマンをしていると、資格取得で手当てが出たりすることもあって勘違いをしがちだが、資格イコール仕事ではないことは心に留めておきたい。
 
僕も経営コンサルタントで独立して10年が過ぎているので、様々な経営コンサルタントにお会いしている。「この人は凄い!」と思う人は、資格を持っていないことも多く、資格が仕事を作るのではないことを実感している。勿論、資格を持っていることでお声がかかる仕事があることは否定できないが、それにしたって、徒弟制度のように先輩の覚えめでたければ仕事が回ってくるような感じだったりして、資格よりもコミュニケーション能力がモノを言う世界なのだ。
 
こんなことを踏まえると、理由の三つ目は“資格を取っても仕事が来るとは限らない”ということだ。
中小企業診断士の資格を取っても経営コンサルタントとして必ず仕事が来るという訳ではないし、法律で職業領域が守られている税理士や社会保険労務士だって、そうそう簡単に仕事にありつけることは無い。結局のところ、仕事が受注できるかどうかは資格の有無よりも、本人の行動にかかっている。
 
いかに顧客に価値を提供できるスキルを身に着け、いかに自分の存在をお客様になる人に知ってもらい、いかに入口の対応でその気になって貰うか。資格を取って独立する前に、じっくりと仕組みを構築しておきたい。
 
結局のところ、勉強しようとすると、①先達の下について現場でノウハウを学ぶ、②セミナーに参加してノウハウを学ぶ、③資格を取得してスキルを身に着ける、といった行動を取りがちである。勉強とは、“勉めることを強いられる”ということ。「○○しなければならない」という気持ちで動いているなら、僕のような失敗に繋がる確率が高まってしまう。勉強はしない方が良い。
 
では、どうするのか?
1つ例を挙げよう。
 
僕が、店舗を出して起業しようとする人に必ずするアドバイスは、「かならず現地に行って体感しながら調査してください」ということ。でも、これを実践する人は殆どいない。
 
ある飲食店は、ご夫婦の趣味が高じて立ち上げたお店だが、開店から5年が過ぎて赤字の月がゼロの優良店だ。地域においては高めの価格設定ながら、着実にファンを増やしているし、テレビの取材を受けたこともある。
 
このご夫婦、商店街にお店を出したくて、40以上の商店街を実際に回ってヒアリングをしたり、通行量や顧客の動きを調査したりした。シェフを務める奥様は、フランス料理とドイツ料理のお店で働いて、仕入れから調理までのノウハウを学んできている。目的に合わせ、何年も前から準備を進めていた。
 
会社を辞めて独立したい人は、勉強しない方が良い。
大切なのは、まず自分が経営者としての在り方を身に着けておくことだ。
それには、行動して体験から学ぶことが早道である。目的を明確にして行動すれば、どんな結果であれ学ぶことは多い。苦しいことも楽しみに変えて乗り越えていける。
 
ノウハウやスキルを得ること、資格を取ること、これらが無駄という訳ではない。それ以上に、“行動し、体験から学ぶこと”が生ものである現場では役に立つということである。
 
僕も更なる成長に向けて、体験から学んだことを体系化し、新たな仕事に繋げていきたいと思う。
 
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