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人生を変えた腕相撲


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:丸山 泰宏(ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
「腕相撲しようぜ」
突然、同級生のS君が私に話しかけてきた。
これは、私が高校1年生の2月の出来事である。
私は、別に勝っても負けても、失うものは何もないと思ったので、即答で「いいよ」と答えていた。
するとS君は、すぐにK君に審判を依頼し、腕相撲のできる態勢を作り上げていた。
K君は、慣れた手つきで二人の握りこぶしを揺すぶりながら「Ready go」と掛け声をかけた。
 
当時の私は身長も小さく、筋肉もあまりなかったので自信はなかったのだが、S君も自分と同じくらいの身長だったし、S君自体もそれほど強くはなさそうに見えたので勝負を受けたのである。
 
しかし、勝負はあっという間についた。
正確な時間は覚えていないが、おそらく3秒程度だろう。
気が付いたころには、私の右手の甲は机にぴったりとついていた。
「お前、弱いな~」
そう言って、S君は笑っていた。
S君に恐らく悪気はなく、本音を言っただけなのであるが、その言葉は私の、心に強く響いた。
 
男ならば誰でも、漫画などの影響から、強い男になりたいと思った時期があると思う。
その私の情熱にS君は火をつけたのである。
「お前、弱いな~」の言葉で。
 
その日から、私のトレーニングの日々が始まったのである。
とは言っても、最初は何をどのようにやればいいのかわからず、ただひたすらに腕立て伏せや腹筋を毎日つづけていた。
 
しかし、腕立て伏せや腹筋をやるだけでは、飛躍的な筋肉の成長は見込めなかった。
それから、ただがむしゃらにトレーニングをするだけでは、効率的に筋肉をつけることができないことを学んだ。
 
そこから、筋力トレーニングに関する本を読み漁り始めた。
そして、筋肉をつけるには、トレーニング以外にも食事を工夫することが重要だということを学んだ
 
そして、私は、母親に毎日鶏のささみを弁当に入れてほしいと頼んだ。
今思えば、なんとも面倒のかかる息子だったろうと思う。
突然、筋力トレーニングに目覚めたと思えば、弁当に入れる食材まで指定するのだから。
 
自分で、毎日鶏のささみを入れてほしいと頼んでおいて、こう言うのも良くないと思うのだが、はっきり言って、「鶏のささ身を茹でただけのおかずはまずかった」
 
母親は時折、私に「毎日鶏のささみだけで飽きないのか」と気を遣ってくれたが、私は自分で頼んでおいて、「まずい」とは言えずに「美味しいよ」とやせ我慢をしていた。
 
そして、食事を変えると、少しずつではあるが、私の身体は変化していった。割れていなかった腹筋は割れはじめ、心なしか今までなかった力こぶができてきた。
 
さらにトレーニングを続けていると、少しずつ、自分の身体の使い方が分かってきた。
 
どのように、負荷をかければ、自分の筋肉を効率的に鍛えられるのかが分かってくるのである。
 
そのような、体験を通して、私にとって筋力トレーニングはどんどんと楽しいものとなっていった。
 
塾などで帰宅が遅い時であっても、必ず自宅でトレーニングを行っていた。
次第に毎日トレーニングをしなければ、気持ちが悪いと感じる状態になっていった。
筋力トレーニングの観点から言えば、順調に思えたが、勉強などその他の面で弊害がでてきていた。
 
私は、睡眠時間を削ってまで、トレーニングに励んでいたのであるが、それが仇となり、日中眠くて仕方がない状態になっていた。
 
慢性的な寝不足とトレーニングによる身体の疲れが原因だと思う。
 
日中眠いため、どうしても授業中に起きていられず、私の成績はどんどんと下がっていった。
進学校に通っていたため、成績が下がれば、先生には注意されるし、毎回追試を受けるといった、惨めな状態へとなっていった。
 
しかし、私は不思議と悔しくはなかった。あの腕相撲に負けた時と比べれば。
むしろ、「自分の好きなことをやって、何が悪い」と思っていた。
 
そして、学校の成績と反比例するように、筋肉はどんどんついていった。
 
それから、1年が経ち、高校2年の冬がきた。
私は、S君に「腕相撲やろうよ」と誘った。
S君は「やろうか」と即答した。
S君は、頭の良い人間だったので、腕相撲に勝っても負けても人生に影響はないと思っていたのだと思う。
 
私は、近くにいた友人に審判を依頼した。
友人は、「Ready go」と掛け声をかけた。
 
一年前、私がS君にあっさりと腕相撲に負けた時と同じように。
 
ただ、一つ違ったのは、私とS君の状況が正反対になっていたことだった。
S君の右手の甲は、あっという間に机にぴったりとくっついていた。
「お前頑張ってたもんな~」と笑いながらS君は言った。
「一年前、S君に負けたからね」と私が言うと、
S君は「えっ、あれが、きっかけなの」と目丸くして言った。
 
それから、私は鍛えた身体で何をしようかと考え始めた。
「格闘家にでもなろうかな」とか色々と考えたけれど、私が出した結論は「陸上自衛官になる」ということだった。
鍛えた身体を使って、他人の役にたてる仕事ができれば良いと思ったからである。
陸上自衛官という道を選んで、13年が経ち、今、私は陸上自衛隊のへリコプターのパイロットとして、勤務させてもらっている。
高校生当時の私からは想像もできなかった世界である。
 
あの時のS君との腕相撲がなければ、今の選択はしていないと思う。
人生は、何をきっかけにして変わるか、わからないものだなとしみじみ思う。
だからこそ、人生は面白いのだろう。

 
 
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2018-07-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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