メディアグランプリ

「決めフォト」は運命を変えるか


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:田中 伸一 (ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「とってもいい挨拶だったわ。……んもう、可愛くって。抱きしめたいくらい。絶対に応援するからね」
60人ほど集まった異業種交流会の懇親会。締めの挨拶をした後、先輩の女性経営者から声を掛けられた。尊敬する先輩に温かい言葉をいただいて、
「はい! よろしくお願いします!」
と満面の笑みで返事したものの、ちょっと引っかかるものがあった。
……「んもう、可愛くって」って何?
年上の方々に可愛がられてきた。何歳になっても、可愛げのある人でいたい。それはその通りだけど、もう、今年50歳だぜ? いつまで「可愛い」なんて言われて喜んでる? そんな疑問がふつふつと湧いてきた。
 
そろそろ、人を頼るより、頼られる人になりたい。
そんなことを思っていた矢先、天狼院の山本さんから「決めフォト」のお誘いをいただいた。
プロカメラマンが「自分史上最高の1枚」を撮ってくれるサービスだという。
そうだ、写真だ。
会社案内やホームページの写真から手をつけてみよう。まずは見た目からだ。いかにも強くて信頼できそうな人になれば、自分の脳が錯覚して、「頼られる男」になれるかもしれない。
私は山本さんのお誘いに乗ることにした。
 
きちんと写真を撮影していただくなんて、4年ぶりだ。前回は、ホームページを作る時に、10年来のお付き合いのある写真家にお願いした。お互いに気心が知れているから、私らしい写真を撮っていただけた。でも、今回お願いするのは、榊智朗さんというカメラマンだ。雑誌や出版関係で有名人や経営者の写真も多く手掛けているらしい。
そんな方の前に立ったら、きっと私の人間性なんて、見透かされてしまうだろう。期待と不安が入り混じる。
 
申し込んで数日後、メールで「決めフォト コミュニケーションシート」が送られてきた。誰に、どんなふうに見られたいのか。どんなところに使用する写真なのか。そんなことを細かく問いかけてくる。
ただ漠然と、「頼りになる外見」を得ようとしていた私は、いったい誰にそう思ってほしかったんだろう。
やっぱり、あの先輩に「可愛くって」じゃなくて「渋い」とか「かっこいい」とか言ってもらいたい。私は、「女性に信頼感を与えたい」と書き込んで返送した。
 
服をどうしよう。床屋の予約もしなくちゃ。目の下にクマができないように、睡眠をちゃんと取ろう。柄にもないことを一生懸命考え、気合十分で当日を迎えた。
 
床屋で散髪して、顔のトリートメントまでしてもらって、居眠りするほどリラックスしていたはずなのに、池袋に着いた頃には、ガチガチに緊張していた。
Esolaの4階のトイレでネクタイを締める手が、震えている。思ったようにできなくて、3回も結びなおした。
無理に違う自分を演じるなんて、意味ないんじゃない?
不安げな鏡の中の自分を見て、そんなことを考えているうちに、もう予約時間が近づいている。
私は慌てて2階の天狼院書店Esola池袋店 STYLE for Bizに向かった。
 
お店に入ると、山本さんの人懐っこい笑顔が迎えてくれた。張り詰めていた気持ちが一気に緩む。よかった。知っている人がいるだけでホッとする。
カメラマンの榊さんは、想像していたより若くて、メガネの奥の瞳に強い意志を感じる方だ。撮影場所に案内される。黒の革張りのソファが並び、カーテンで薄暗い。猛暑を忘れたような大人の雰囲気だ。
 
撮影開始。
「笑顔が素敵ですけど、渋い感じに撮ってほしいということで、いいですか?」
確認されて、つい
「そう思ったんですけど、どうせごまかせないから、自分らしくでいいのかな、なんて思いました」
と、気弱な返事をする。
「大丈夫です。ちゃんといい感じに撮りますから」
榊さんは、そう断言して、シャッターを切り始めた。
「はい、そのままで、オレの方をグッと見てください。うん、そこです」
目に力を入れる。パシッとフラッシュがたかれる。
榊さんの声は、少し高めで若々しい。口調も丁寧だ。でも、自分のことを「オレ」と言うところが、ちょっと職人ぽくて緊張感を和らげてくれる。脇には山本さんが助手として入り、細かいところを確認してくれている。
 
そうしているうちに、榊さんのすごい経歴のこともすっかり忘れて、カメラのレンズに集中できるようになっていた。
パソコンの画面で、撮影した画像を見せてもらう。
……! 何これ?!
レンブラントの絵のような強烈な陰影の中に、力強い眼光を放つ男が写っている。確かに自分の写真。だけど、自分の知らない自分が、そこにいた。
いつまでもヘナヘナしたところがあると思っていたけれど、画面の中の私からは、力強さと生命力がにじみ出ている。
もしかすると、誰もが持っている命の輝きの一瞬をとらえれば、それが「自分史上最高の1枚」になるのかもしれない。その一瞬をとらえ、強調したい側面で切り取る確かな腕が、榊さんにはあるのだろう。
 
「命」には3つある、と教えてくれた人がいた。
自分では選ぶことのできない「宿命」。現代の日本に、人間として生まれたのは、自分で決めたことではない。
宿命的に与えられた、その命をどう使うか。それが「使命」につながる。何のために生きていくのか、という思いだ。
使命のとらえ方が行動を変え、その人の「運命」を変える。そんなふうに教えられた。
 
「決めフォト」で、どんな写真を撮ってもらうか。何のために撮ってもらうか。
小さなことのようだが、自分の使命をどうとらえているかに関わる問題だ。
榊さんは、STYLE for Bizの資材と光を自由に操り、狙い通りの写真を撮る腕を持っている。
その腕を、自分の使命に沿ったかたちで活用できるか。そもそも、自分の使命を自覚しているか。
もし、それがはっきりしているならば、「決めフォト」は運命を変える力を持っている。
狙った人に狙った印象を与えることができるからだ。
しかし、適当に「カッコいい写真を撮ってもらいたい」というだけなら、私はお勧めしない。
明確な狙いをもっていなければ、ただの贅沢な記念撮影で終わってしまう。
せっかくなら、志をもって明確なターゲットに「この写真で自分を売り込んでいく」という人に挑戦してほしい。そして、運命を切り開いてほしい。
 
さて、「先輩経営者に頼りになるヤツと見られたい」という不純な動機で撮ってもらった私の写真は、どんな運命をもたらしてくれるだろうか。ワクワクしながら、仕上がりを待っている。

 
 
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2018-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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