メディアグランプリ

呼吸を合わせて~彼と彼女のタイミング~


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:イリーナ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「おかえり!」
 
自宅到着の連絡を実家の母にし終えるやいなや、彼からのLINE通知が目に飛び込んできた。
あまりの絶妙なタイミングに、一瞬ドキッとする。でも、すぐに、たまらなくうれしくなる。
今日、帰省先から戻ることは伝えていたけど、詳細な時間は知らせていなかった。
そんなのたまたま、と気にしない人もいるだろう。よくあること、という人もいるだろう。
でも、ばかばかしいと思われても、こういうタイミングが合うと、「やっぱり、この人は特別な人なんだ! 運命の人なんだ!!」と勝手に感じちゃったりする。
 
実は、数か月前にデートしてから、彼と全然会えていない。
 
その時のデートはめちゃめちゃラブラブで、最高に楽しかった。
あり合わせの材料で作ったトムヤムクンスープを、喜んでほおばる彼。すぐ隣で見つめる私。まだ付き合い初めて間もないけれど、これからこういう幸せを、もっともっと一緒に積み重ねていくんだ、とワクワクしていた。
それからしばらくは、LINEのやり取りも続いていた。
女の私の方が、やっぱり書く量も頻度も、そしてスタンプの種類も多いが、彼の方も(おそらくかなり頑張って)返事をしてくれていた。
ところが、だんだん彼の返信が遅くなる。
既読にはなるけど、返事がないままのことが多くなる。
「忙しいんだろうな。あんまり送るのも迷惑かな……。」と私は考え始める。
そして、2日たち、3日たち、5日たち……。
不安になって、また私からメッセージを送るけれど、一言二言の返事で終わってしまい、続かない。
そもそも、いつも私からばかり。それって、どういうこと? もう私には興味がないってこと??
初めはあんなに熱烈にアプローチしてきたのに???
いやいや、1週間も連絡がないなんて、ひどすぎる!
 
……ありがちな展開だ。
今までも、こんなことはよくあった。
逆のパターンもあった。
母の入院などがあってバタバタして、返事が1日遅れたら、
「家族と僕、どっちが大事なんだ? いい気になるなよ!!」
と、ある男性にキレられたことがある。その男性とは、まだ付き合うという話もしていなかったように思うが、彼の気持ちは、随分先に進んでいたのだろう。
 
その時の、どちらの気持ちが強いとか弱いとか、それもあるかもしれない。
忙しいとか、忙しくないとか、筆まめとか、そうじゃないとか、それもあるかもしれない。
でもきっと、それだけじゃない。
生まれも育ちも違う、他人の2人が、互いに心地よく気持ちのやり取りをするためには、呼吸を合わせて、タイミングを計る練習が必要なのだ。
 
陸上のリレー競技を思い出す。
個々の選手の速さ以上に、見どころはバトンの受け渡しだ。
バトンパスに失敗すると、一気に順位を下げてしまうことがある。
逆に、スムーズにパスできると、個々の速さはそれほどでなくても、上位入賞したりする。
定められた範囲のバトンゾーンで、前走者は次走者に確実にパスしなくてはいけない。
前走者が遅すぎると、次走者はバトンをつかめずに落としてしまう。
早すぎても、距離がつまり過ぎて、次走者はやはりバトンをつかみにくい。
前走者が差し出したときに、次走者がちょうどしっかりバトンをつかめるように、両者がタイミングを合わせないといけない。
そのために、競技者はバトンパスだけを繰り返し練習する。何百回、何千回と練習する中で、互いの息づかいや動きの間隔を感じ、次第に呼吸のペースやタイミングが合うようになるのだろう。
 
メールやLINEも、彼がしっかり受けとめられるタイミングが大切だ。
しっかり受けとめたら、それをつかんで気持ちよく走り続けてくれる。
そして、そのメッセージのバトンを、また私が受け取るのだ。
走者は2人だけど、それはリレー競技のように続いていく。
でも、早すぎても、遅すぎてもいけない。
メッセージのバトンを、急いで次々差し出したら、彼はバトンを取り損ねてしまうだろう。
ゆっくりし過ぎても、バトンを持たずに走り去ってしまうだろう。
 
だから、彼の呼吸を想像して、感じてみる。
タイミングが合わないと思ったら、立ち止まって、彼に合わせて行動してみる。
そうすると、彼のペースが見えてくる。
バトンという気持ちを、差し出すタイミングがつかめてくる。
 
トムヤムクンの彼は、1週間に1回位がちょうどいいみたい。
だいたい木曜日か金曜日。
他のカップルと比べる必要なんてない。これは、私と彼のタイミングだ。
彼と私にとって心地よいペースであればいい。
彼の呼吸に合わせることで、それは私の呼吸にもなる。そして、それが自然になる。
普段から、本当に必要なことしか連絡しない人だ。
その彼が、絶妙なタイミングで「おかえり!」とバトンを差し出して、私もぴったりのタイミングで受けとめ、返事をした。そして「君が好きだ!」と、またバトンを渡してくれた。
それは、本当に大事なことだったからだ。
 
しかしながら、それでもまだ、あの日以来私たちは会えていない。
彼から誘われても、私の都合がつかなかったり、体調が悪かったり……。
まだまだ、私たちのタイミングは完璧ではないようだ。
でも、焦らずに、彼の行動に合わせてみる。
スムーズに気持ちのやり取りができるように、日々練習を続ける。
このリレーにゴールはない。
永遠に、心地よく、2人で走り続けるために、運命という絶妙なタイミングをとらえるのだ。
 
 
≪終わり≫
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2018-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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