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プロフェッショナル・ゼミ

ワードが真っ白でスタンバってる《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:なつき(プロフェッショナル・ゼミ)
 
このところ「30分でその辺の適当な題で文章を書く」ことを実践中だ。たとえば目の前のお茶とか、ふとその時に思った言葉とか。お風呂を上がっていつもの様に伊右衛門をレンジで熱くする。パソコンを立ち上げる。ワードを立ち上げる。起動する間にふと別のことを思い出す。席を立つ。
 
いま天狼院書店の講座に通っている。その一つに「演じる小説ゼミ」がある。11月に開催される天狼院の文化祭での発表なども加味した講座だ。自分で脚本を書いたり、大勢の前で台本なしに演じる。演劇は大好きだ。小学校で3年間演劇クラブに入っていた。中学は事情があり部活に入れなかったが、高校でも1年間演劇部に入っていた。本当は3年間やりたかったが、成績が下がり親に怒られ断念した。高校の文化祭などでも演じた。当時は覚えることも大した労力は使わなかった。
 
昨年、手術のための入院をした。手術は順調に終わり入院生活は時間がたっぷりある。そこで本を読み始めた。数行で眠くなる。難しい本だからいけなかったのだろう。簡単なものにしてみる。やはり数行で眠くなる。手術する前日までは普通に理解できていた入院中の注意事項だったり、そんなものも理解できない。おかしい。病院の消灯は21時だし、たっぷり睡眠はとっているのに。手術で体力を消耗(寝ている間に終わったのでわからないけど)したからかなあと思った。手術は身体を切る。修復しようと細胞が頑張るから疲れやすくなる、と聞いた事があった。体力回復に全力を振り絞るから他のことには力を使ってられないよ、ということなのだろうか。
 
それまでも疲れたと思うことはあっても、その比ではなかった。「疲れた」の言葉が出る前の段階で睡魔が来る。気づいたら寝ている状態だ。退院後徐々に回復。ところが、一か月後からの抗がん剤治療によりまた記憶力が怪しくなった。抗がん剤は再発防止を防ぐために使用した。これは全部の細胞を攻撃する。記憶しようとする細胞も攻撃されるし、体力を回復するので精いっぱいの細胞も攻撃される。ダブルパンチだった。
 
少しずつ薬の内容が軽くなった。仕事をしながら他の講座に通うことができるまでに体力と記憶力も持ち直しつつある。それでも記憶力が怪しい今、演劇ができるのだろうか。このゼミの目的を見直してみる。するとある言葉が目に飛び込んできた。「カンニング劇(手元に台本用意)」今回の講座の主目的は動画や発表会で演じることだが、台本有りでも良いというものがあった。公開の発表会などには繋がらないようだ。多分講座内で発表して終わりなのだろう。あれ、でもそれって……。急いでパソコンが立ち上がる間にスマホでメモをする。
 
台本を持ったまま演じると言うことは、声優がするアフレコに似ている。あるいは声優による朗読劇。私は声優が好きなので、台本を持ったまま演じるのも面白いんじゃないかな、と思った。気づいたら、打つのが苦手で時間がかかるスマホに何行もメモをしていた。今回のテーマは3人の会話劇だ。一人3役も有りと言っていたし、大好きなアフレコを体験できるチャンスなんじゃないか。そう思った。3人の掛け合いも面白そうだ。でも一人でもやってみたい。
 
近く、自分が書いている脚本を使った劇を行うのに、他の参加者を募るプレゼンの機会がある。メモした内容をちょっと興奮状態のまま夫に話してみると「それって何をプレゼンしたいの? 誰にどんなアクションをしてほしいの?」あっさりバッサリ。なんか急に自分が馬鹿に思えてくる。「一人でやるけど見に来てね、の方向になるよね」なるほど。スマホのメモに打った興奮状態のメモを見て「滑るよ」身も蓋もなかった。「気づいたら打つのが苦手なスマホに打ってた」と言うと「それパソコンで書けばいいのに」と言われた。確かにそうだ。
 
30分文章を書くためにパソコンを立ち上げていた。ワードを立ち上げていた。その立ち上げのちょっとの合間にメモしている間に1時間が経っていた。その間ワードは真っ白でスタンバっていた。今か今かと今日の30分文章は何が来るのか待ってくれていた。それを半分裏切って、明日のプレゼンの締め切りが怖くて、夫がそのメモ見てどう思うのか知りたくて、見せて話をしている間ずっと、パソコンに「待て」の状態を強いていた。パソコンは無言で待ち続けている。プレゼン話をしながら既に夜中の1時半になっていた。
 
今週は仕事が忙しくて究極に眠い。今日は30分も書いていられないかもしれない、15分でギブアップするかもしれない。それでも、お風呂をあがったら、なるべくパソコンを立ち上げ伊右衛門を入れ、書くぞ! の状態に持っていっていた。私の書くスタイルはこれで出来上がっていた。お風呂で一日の絡まった頭の中を落ち着かせて、時には歌って発散させる。湯船で何となく面白かったことが断片的に見えてくる。ストレスがたまりすぎている時にはここでも、イライラしていることもあるけれど。シャワーを浴びて上がってお風呂のドアを閉めると、モヤモヤが強かった日もあらかた落ち着いてくる。そして少しずつ文章を書きたい、にシフトし始める。
 
パソコンを立ち上げながら伊右衛門をレンジで熱くする。昔から暑い日も熱いお茶を飲むのが好き。中でもサントリーの伊右衛門は、奥に苦味が広がり気持ちがすっきりとしゃんとする。これでまた透き通った気持ちになれる。一種の精神統一かも知れない。
 
そんな状態で立ち上げていたパソコンだったから、ワードだったから裏切りたくない。頑張って書き始める。10分程書いてまだ睡魔と闘いが続いていた。15分経過、もっと書きたくなってくる。20分が経過、パソコンを打つ手が止まらなくなる。時間を30分と定めているが、ここであと10分しかないと焦りだす。そして30分経過したところで、今日もよく頑張ったと自分を褒める。その時は睡魔もどこへやら、ちょっとした興奮状態となる。もう少し書き続けたくなる。とはいえ、1時間書くのはちょっとしんどい。できるだけ毎日継続するためには、自分に負担をかけすぎず、細々でも自分のルーティンに組み込むことだ。
30分書くことが日々のルーティンになれば、そのうち5分、10分と時間を伸ばしても書き続けられるようになるだろう。そして今はまだ、書くだけで精一杯。途中で終わってまとまりがない。物語としては確立していない。ただ、書くうちに自分の中に眠っていたエピソードが、連想ゲームの様に数珠繋ぎ式に出てくるようになった。これには驚いた。意外な事もあった。この言葉でこういうことが連想されるのかと面白くなってきた。
 
30分文章を書く。初めの頃は目の前の真っ白いワードが怖かった。30分と時間設定をしているので、何を書こうか思いめぐらせていると、あっという間に時間が来てしまう。目の前のものを題材にすると、特に思い入れが無いものもあった。何か面白いことに繋がなければと思っていた。それがプレッシャーだった。そこで、目の前のものを題材にした時に、思い入れがあったものは「○○が好きだ」、たとえ思い入れがあまりなくてもその題材に対して「○○と言えば」と言う言葉で取り敢えず始めてみた。書き始めて面白いことに気づく。
 
「○○が好きだ」で始めた文章。好きで思い入れがある題材。一気に書きたいことが頭に浮かんでくる。それはまあ至極当然のことと言える。「好き」なんだから書きたいことはいっぱいある。思うままに書き始めると、それまでたくさん書きたくて溢れだしていた事柄が整理され始める。きちんと順番待ちを始めるのだ。結果なぜそれが好きだったのか、今はどうなのか。そしてその題材から意外な方へと繋がることも。思いもよらないところに着地することもある。ただ「好き」で始めた題材がそれまで全く繋がりが無かった物事に繋がっていく。それが本当に面白い。
 
そして「○○と言えば」で始めた文章。特に思い入れが無い。取り敢えず一般的な事に繋げてみる。するとその繋げた一般的な事から連想がスタートする。普段何気なく見ているもの。それが偶々繋げた一般的な事によって見方が変わってくる。今まで素通りしていた「物」が「事柄」が色を纏い始める。輝きを帯びてくる。それが本当に面白い。
 
さて、今日もワードが立ち上がった。どんな文章になるかな。ワードは真っ白でスタンバってくれている。
 
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