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プロフェッショナル・ゼミ

『当たり前』に隠されたもの《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:久保明日香(プロフェッショナル・ゼミ)
 
 
天狼院書店のライティングの講義を受け始めて一年が経った。
元々書くことが好きだった私が「人生を変える」という魅力的な言葉に惹かれ、書くことに挑戦し始めたのだが、当初は自分でも驚くほど書けなかった。「私の母国語は日本語だし、文章なんて誰だって書けるだろう」なんて思っていたのだけれど、最初は2,000字の記事を完成させるのにかなりの時間と労力を要した。結局、私の記事が初めてWeb天狼院に掲載されたのは受講を始めてから1ヶ月が経った頃だった。その日は嬉しくて、仕事帰りにちょっぴり奮発して掲載祝いのハーゲンダッツを買って帰ったのを覚えている。
 
「毎日2,000字程度の記事を書いて、その中で一番出来のいいものを毎週一つ、提出してください」
 
受講生に言い渡されたこの課題をこなすことが最初は正直苦痛だった。何度書いても不掲載だったため、自分の力の無さに打ちひしがれ、方向性が間違っているんじゃないかと不安にかられた。だけど、一度掲載されてからはその気持ちは一転し、毎日が課題をこなすことが楽しくて仕方がなかった。「今日はこのことについて書いてみよう」、「この記事を読んだ人はきっと共感してくれるだろうな」などと思いながら書き続けた。仕事を終えて帰宅して、書く時間がやってくるのが毎日待ち遠しかった。全ては「掲載されたときの喜びをもう一度感じたい」という一心からだった。
ライティングゼミにおける全ての課題提出が終了し、蓋を開けてみると私の掲載率は五分五分だった。決して高いとは言えないけれど、書くことに真摯に向き合った結果に満足していた。
 
書き続けたことで「もっと書きたい、上手くなりたい」という気持ちが芽生えた私は悩んだ末に、プロフェッショナルゼミに進むことに決めた。
2,000字の記事から5,000字の記事への変化に慣れるまで、模索を繰り返した。何度か記事を提出するうちに具体的なエピソードやABCユニットを活用して記事に入れ込むことで2,000字のときよりも記事に厚みが出て面白いと感じるようになった。それ以降、プロフェッショナルゼミを継続して受講し、毎日書き続けた。書いても書いても時間が足りなかった。朝も書いて、夜も書いた。次第にコンスタントに掲載してもらえるようになり、私の中でそれが『当たり前』に変わっていった。
 
だけど、このところ調子が悪く、2週連続で不掲載という状況が続いている。
記事の掲載に限らず、何事においても自分の中で自信を持ってどうだ! と披露したものに対してOKがもらえなかったときは精神的に辛い。自分が信じて積み上げてきたものが音をたてて崩れていく気分を味わうのは久しぶりだった。掲載不可のメッセージを受け取ったその日、私はふらふらと布団へと移動し、寝転がってぼーっと天井を見上げていた。ただ仰向けになっているだけなのに、どんどん天井が遠くなる。見えない力にずぶずぶと引っ張られ、暗く深い海底に沈んでいっている気がした。
 
しばらくして「このままだと這い上がれなくなる!」と思い、気持ちを無理やり奮い立たせて起き上がったものの、心に負った傷はすぐには癒えず、頭に浮かんでいた次の記事を書く気分になれなかった。そこで私は一旦、気を紛らわすために録画していたテレビ番組を見て心を落ち着かせることにした。
 
その番組は、異なる分野で活躍する2人が、番組の前半と後半でゲスト側とインタビュアー側を入れ替えて、仕事について対談を行うというものだった。好きなアーティストが出演するということで録画をしていたそれを何気なしに見始めたのだが、番組内での彼のある言葉が私の心に深く突き刺さった。
 
「僕たちは、こんなことができる場所はここしかない、という気持ちでパフォーマンスを行わなければいけない。「大丈夫だよ、僕がやったらなんとかなるから」なんて思ってしまったらそれはもうアウトだなと思う。何よりも、誰よりもここが貴重な場なんだ、と思わないといけない」
そう話す彼の表情からは何ともいい難い強い覚悟が感じ取れた。
 
彼は年に数回、沢山の観客を集めて大規模な会場でパフォーマンスを披露している。
私は今まで彼のことを恵まれた特別な存在だと思っていた。自分の輝ける場所を早々に見つけ、そこで成功し、大成した彼はメディアに露出することができる“今”を楽しみ、自由にのびのびとパフォーマンスを行っているんだろうなと思っていた。だけど違ったのだ。
パフォーマンスをいつも披露できる状況は『当たり前』ではない。それは努力してやっと辿り着いた場所であり、気を抜けば一瞬にして消えてなくなるのだ。その状況に決してあぐらをかいてはいけない。今の状況を『当たり前』だと思わず、常に感謝し、努力を怠らずに毎日を過ごさなければいけないのだということを番組内で何度も話していた。
 
その番組を見終わった後、最近の私について振り返ってみた。
書くことに対して、きちんと向き合えているだろうか。
掲載が続いているという状況にあぐらをかいていないだろうか。
 
そこで私はボツになった記事をもう一度読んでみることにした。
この記事を書いたとき、どんな目的で、誰を思い浮かべて書いていたかを思い返す。冷静に、第三者の目で記事を読み進めていくと、一年前にライティングゼミを受講し始めたときに私が抱いていた、楽しみながら書くことや伝えるために工夫を凝らした表現などが欠けているような気がした。
いつからこうなってしまったんだろう……。
私はただひたすら、過去に書いた記事を順番に読み返していった。そしてその中で同じプロフェッショナルゼミの仲間から感想をもらった記事に再会した。
 
私の記事を引用してくれているもの、面白かったです、次も期待していますといったもの、ちょっぴり泣いちゃいましたなんて嬉しい言葉がもらえているものもあった。ありがたい言葉は記事をさかのぼればさかのぼるだけ、どんどん出てきた。
最低でも感想をくれたこれだけの人が私の記事を読んでくれたのだという事実を改めて感じ、心の中が満たされていくのがわかる。それに、きっとこれだけではなく、もっと多くの人が私の記事を天狼院書店のWeb上で読んでくれている。それは『当たり前』でも何でもなくて、私が毎日書くことに力を費やした結果得た、宝ものだった。
 
私はひたすら自分が書いた過去の記事を読み漁り、仲間や友人からの言葉の宝ものを拾い集めた。その全てをパソコン上でまとめて可視化すると、なかなかの量になった。
本当にありがたかった。思わず目に涙が滲んだ。
 
ふと外を見ると雨が降り始めていた。
掲載が続いているという現状に驕り高ぶって、調子に乗っていた私の代わりに涙を流して謝ってくれているのかもしれない。書くことに対する姿勢を一旦、全て洗い流し、ライティングゼミを受講し始めた当時のまっさらな私に戻してくれようとしているのかもしれない。この雨は私を再び立ち上がらせてくれる恵みの雨だ。昔の自分にできたことが今の自分に出来ないはずがない。
 
私くらい文章が書ける人は日本全国を探せばいくらでもいるだろう。突出した才能がないことは自分が一番よくわかっている。だからこそ、今の私には“続ける”しか選択肢が無いのだ。昨日よりも今日、今日よりも明日……。書き続けることで一歩ずつ成長が見込めるはずだ。だからまず、書き続けるという努力を『当たり前』にできるようにならなければならない。そしてあわよくば、私の書いた文章を読んだ誰かから宝ものを受け取りたい。それを少しずつ、増やしていきたい。
 
その場所に辿り着くまで、どれだけかかるかわからないけれど、一掃された気持ちと共に、未来に向かって進もうと思う。
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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