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メディアグランプリ

被災地は世界の最先端!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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佐野利恵(ライティング・ゼミ平日コース)

日本の外に出たい。
大学生だった私は、毎日そう思っていた。

進学に失敗し、プライベートでも悩みが尽きなかったあの頃。
将来に希望が持てず「生きることが辛い」と泣いた夜も少なくない。
「日本が沈没する」というアニメを見ながら「本当にそうなってしまえばいい」と、思ったことすらあった。

大学3年生のとき、故郷の東北で東日本大震災がおこった。
幸い、私の実家は被災していない。
しかし沿岸部は、ご存じの通り凄惨の極み。
数日後にボランティアで訪れると、瓦礫で埋め尽くされた茶色い街は映画のワンシーンのようで
周りの人たちは「ショックで言葉がでない」と言っていた。
一方私は、言葉の選び方が難しいが、「”より不幸”で、”より悲しい”の基準は、何なのだろう」などと、
その光景をただぼんやりと見ていた。

一年間、被災地でボランティアをした後、私は大学を卒業してようやく日本を出た。
この抑鬱とした想いを消してくれるような「世界の最先端の刺激」を感じたい。
海外ならきっと……と、思ったのだ。

まずはフィリピン、パラグアイなどの途上国に行って、有名な国際機関でインターンをした。
スラム街を歩き、英語の通じないタクシーにぼったくられ、小さな子供にお金をせびられる日々。
警察も役人も、”迂闊に”信じられない国。
国際協力の最先端では、いわゆる”腐敗した政府”の現実を、肌で感じることになった。

あるとき、電気も通っていない地域の一画で、上半身裸で砂袋の上に座り
ぼんやり宙を見ている少年を見かけた。
その瞳は、ただ虚ろだった。怒りでも悲しみでもなく、”諦め”だけがそこにあったのである。

その姿を見ながら、私は同情の念ではなく、
「なんだ。日本の若者と途上国の若者は、”同じ”だな」と、不思議な感情を持った。

「希望がない」
という問題の、解決のヒントを求めにいったつもりだった。
しかし、得られたのは「皆、同じなんです」という回答のようで
ちょっとだけ肩を落として、私はアメリカに向かった。

アメリカで、もっとも治安が悪いと言われる地域の一つで、私は大学院生に。
そこで運よく国連のインターン枠をゲット。数か月の間、世界一の都会と言われるニューヨーク・シティで働けることになった。

そのときの体験は、それまで私が願っていたような刺激的なものだった。

世界の外交官たちと、議論を交わす。
ニュースで見る「緊急安保理会議」の傍聴席で、関係者とともに固唾をのむ。
まるで自分が、他の人より一歩先に行ったような、良い気持ちだった。

インターンの後、私は少し得意になってクラスの友達に「国連でインターンしたんだ」と話してまわった。
ところが彼らは「あら、よかったわね」と言ったきり、こちらが期待するような反応をしてくれない。

国連に限らず、教授にキャリアの相談をするときも、国際機関でのインターン経験は大してきにとめてもらえない。
日本の知人に言えば、「どうやったの!?すごい!」とお祭り騒ぎなのに……。

ある日、クラスメイトに自分の経歴を話していたときのこと。
私は途上国から始まる一連の経験談をし、付け足す程度に「母国では、被災地でボランティアをしていたよ」と言った。
するとクラスメイトは声を大きくして
「日本の被災地で!?それは凄く価値のある経験じゃない」と言う。

「え……そうかな」
「日本では避難所に集まった人たちが、互いをサポートするってニュースを見たわ。
行政の人々も、すごく真摯で感銘を受けた。それは世界が学びたがることなのよ」

私は少し驚いて学部長の元を訪れ、被災地の経験を話した。
これをいかしたキャリアはあるか?と相談すると、学部長は目を開いて
「それは君の武器になるね。世界では戦争、紛争の復興に頭を悩ませている。
日本人の経験を、皆学びたいと思うはずだよ」
と、言った。
「いずれ世界の国が、”母親”にアドバイスを求めるように、日本を訪れるときがくるよ」

世界の母親。
私はその言葉の意味を考えながら、それ以降、SNSを使って
被災地の人たちの活動紹介のページを見るようになった。

そのときで、震災から5年。
”5年たってもまだ”被災地にいる人たちは、「ボランティア」から
「本気で地域経済の仕組みを変える」人たちに変わっていた。

特に目をひいたのが
被災地の人たちが「誰かのために」生きることを手伝い
それを自らの仕事として、成り立たせている人たち。

例えばある人は、マスコミで働いていた経験をいかし、被災地域のフィルムを集めてドキュメンタリー映像を作っているらしい。
これだけならボランティアだが、狙いはその先。上映会を通じて地域内の会話を増やし
市街地への車の乗り合い、子育ての助け合いなど
いわゆる「地域の互助・自助(地域包括ケア)」を促している。

他には、商社で働いていた20代が、地域の事業者たちの仲介役となり
商品開発を手伝っている、という例も。
いわゆる「六次産業化支援」というものだが、その本質は加工業者もサービス業も、知恵を出し合い協力し
被災した漁師に利益を還元しよう、というスタートラインにある。

思えば、確かに被災地ひいて日本では、行政も住民も、「誰かのために」「公のために」生きることが
よくも当たり前とされていた。
それは世界からみたら、当たり前ではないのかもしれない。

また、欧米の有名な心理学者は
「自分が辛いときほど、人の為に生きると救われる」と言っている。
被災直後に出会った市役所の人は、
「綺麗ごとではなく、それが自分のために必要なことなんだ」と
たくさんの辛さを噛み締めた上での、確信に満ちていた顔。

「それはあなたの武器になる」
学部長の言葉と合わせて、以来、私の心から離れなくなった。

大学院の卒業を控えた春、私は被災地の行政職員に連絡をとった。
一時期、一緒に活動をしていた人だ。
「やり残したことがあるんです。そこで働かせてください」

それから4年。

私は今、被災地で地域をサポートする団体の広報。
「被災地は世界の最先端です」と、
国内外から訪れる人たちに伝える仕事をしている。

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2018-10-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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