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電車は応援し合う場所になる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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ゆきもと(ゼミ平日コース・ライティング)
 
私は18歳の時に、70代くらいのおばあさんに電車で席を譲られたことがあります。書き違いではありません。18歳が、70代の方に席を譲っていただいたのです。
 
季節は秋の終わり。セーターを着ても風が吹き抜けて、コートが欲しくなる時期でした。私は大学受験に向けて浪人していました。大手予備校出版の英単語帳と付箋、蛍光ペンを握りしめて、英単語を覚えていました。平日の夕方16時頃で、帰宅する学生も多く席は埋まっていました。私は車内中ほどの座席の前に立っていました。
 
その頃の自分は、受験に失敗したら親へ申し訳が立たないという思いでいっぱいでした。そしてその緊張感だけが英単語を覚える馬力になっていました。問題が解けるためにこの知識が必須だという理論的なことより、英単語を覚えれば合格に近づくはず! という焦りの方が強かったのです。
 
頭の中で英単語と和訳を呪文のように繰り返していました。電車の揺れや雑音などは全く気づきませんでした。
 
「あなた、座ってください」
 
いきなり声をかけられました。自分の顔と単語帳が15cmにまで近づいていることにはっと気づきました。声の方を向くと、品の良さそうな70代くらいの高齢の女性が目の前に座っていました。優しそうな目で私を見ていました。
 
「頑張っているのね。座ってくれていいの」
 
私は怪我をしていた訳でもない。風邪をひいていた訳でもない。事態がのみ込めないまま、
相手の方は席を立ち、誘導されるがまま私は座りました。私の頭は英単語でいっぱいで、そのまま勉強に没頭しました。そこから6駅ほど先で、その女性が降りていく気配がしたのを覚えています。
 
その時は不思議なことが起きたものだと思った程度でした。
 
しかしそれから8年後、私はあの時のおばあさん側の立場を体験したのです。
私は社会人3年目になりました。通勤のために朝8時台の電車に乗り、その日は運良く座れました。席はスーツ姿の人や、買い物袋をぶら下げた母親らしき女性、講義プリントを持つ大学生で埋まっていました。
 
どこかの駅で40代くらいの男性が電車に乗り、私の前に立ちました。そしてすぐに、英単語帳を開きました。本のカバーから、最近出版されたものではなく、40年前からある古い形式のものだと分かりました。その男性は耳にイヤホンを指し、細かに再生しなおしていました。単語の発音を何度も聞いているのでしょう。時折、几帳面にそっとペンで線を引きました。3駅、4駅と電車が進みました。その間ずっと、男性の目線は本にくぎ付けでした。
 
40代男性が英単語帳を勉強しているなんて会社で知られたら、バカにする人もいるかもしれません。でもそのおじさんは、ひたむきにひとりで頑張っていました。
 
私は自分自身を振り返りました。私も、希望の仕事に向けて勤務時間外も勉強はしています。社外セミナーに通い、企画コンテストに応募しています。けれど、いつもどこか周りの人と比べて、今自分はこれくらいかなと位置を図っているように思いました。
 
自分も学生時代は、こんな風に勉強に没頭していたなとギクリとしたのです。
 
その男性がひとりでひたむきに頑張っているから、思わず何か手を貸したくなりました。私は声をかけました。
 
「あの、座ってください」
 
そのおじさんは英単語帳から顔を上げ、きょとんとした顔をしました。「ああ、次で降りるんですか」と理解した風で、軽く頭を下げて私が譲った席に座りました。そしてすぐに英単語帳を開きました。私は目的地だった6駅先で降りました。
 
電車は不思議な場所です。大会社の部長さんが立って車両中ほどで潰されている一方で、まだ学生気分の新入社員が座ってスマホゲームするなんてざらにあることです。快適なスペースが確保できるかということに性別や地位なんて関係ありません。
 
そして、みんなただ乗っているだけではなくて、勉強・ゲーム・寝るなどおのおのが好きなように過ごしています。こんなにも無防備に生活の一部をさらけ出している空間は、なかなかありませんよね。
 
そんな毎日乗る電車を、頑張りを応援し合う場所にするのはどうでしょうか。自分が頑張る側になってもいい。自分が応援する側になってもいい。
スマホゲームや漫画でだらだらと時間をつぶすことに後ろめたさを感じていたら、新書を手に取ってみませんか。
コツコツ勉強したいのだけど続かないという人は、周りを見渡して頑張っている人に手を貸すと、新しい世界が見えるかもしれません。
いや、今の生活に満足で電車で頑張らなくていいや、という人はそれで素敵だと思います。電車で疲れてみえる人に、心の中でお疲れさまと伝えて、たまに席を譲るのもありかもしれません。
 
電車は頑張りを応援し合う場所だと考えると、毎日の時間が素敵なものになるのではと思います。
 
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2018-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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