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「美味しいハンバーグ」が出来るまで。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:佐野利恵 (ライティングゼミ・平日コース)
 
「私、包丁はアメリカに捨ててきたんです」と言い始めて数年になる。
 
アメリカに留学したのが5年前。
それまでに、ほんの少しだけ料理をしていた時期もあったが
アメリカ留学を機に全く料理をしなくなった。
 
理由は、まあ、滞在していたシェアハウスの台所が凄まじいほど汚かったこと、
日本の食材が手に入らなかったこと……等々があげられる。
一番は、ストレス由来の摂食障害になって
食べる、という行為に不快感を覚えるようになったからだった。
 
3年前に日本に帰ってからも、その生活は変わらなかった。
 
文字通り包丁を捨て、炊飯器も自宅に置いていない。
ほとんどの食事は外食。または、納豆や豆腐、卵、ミニトマトなど素材をそのまま美味しく食べられるものに頼る。
幸い、日本はお惣菜も大変健康的であるし、お野菜やお魚もおいしいから
健康上は問題ないのだ。
 
なんなら、いかに素材をちょっとの調味料だけで美味しくいただくか
または電子レンジとマグカップだけで調理を済ませるか、といったスキルを極めている。
なんて、全然自慢にならない自慢を
料理の話が出るたびに、周囲には話してきた。
 
「まあ、このままでいいか」と、私は漠然と思っていた。
「料理なんて、やればすぐに出来るようになるよ」
そう、優しく言ってくれる家族や友人の言葉にもうなずいていた。
 
その間も、摂食障害は結局治らず冷蔵庫はからっぽのまま。
この生活が、きっとずっと続くんだろうなぁ、と思い
しかし心のどこかでは「これで良いのだろうか」と焦ってもいたのである。
 
 
そんな私に、転機が訪れる。
 
「結婚」ーー28歳になり、いよいよ私は結婚を本格的に考え始めたのだ。
 
しかし、そこで大きな問題が起こる。親との決裂である。
 
私の母は、結婚について確固たる信念を持っており
彼女が良い、と思う相手と私の相手とで、相当な食い違いが生じた。いや、現在進行形で、生じている。
 
「最悪、これは勘当されるかもしれない」
そう思うような口論が、親との間で続くようになった。
 
家を飛び出し、数年後に子供を抱えて帰省し、孫の可愛さあまり親もようやく和解……なんて、ドラマで見たような、嘘のような未来像がちらつく。
そうして、私は急に焦り始めた。
 
これは、自立をしないといけない。
もっと言えば、自分の幸せについて、もっとちゃんと向かわなければならない。
 
 
想えば、病気になってからというもの
私は「食べる」という生きることの根幹を、他人に依存してきた。
外食、惣菜、週末は実家では母の手料理。
 
もっといえば、自分の身体にもずいぶんと酷いことをしてきた。
どこかで「自分はどうなってもいいや」なんて気持ちがあったのだと思う。
 
しかし、自分以外の誰かを巻き込んで
結婚とか、家庭とかいうものを真剣に考え始めた今。
 
肉親とのすれ違う痛みを肌で感じながら
「本当にこれでいいの?」「何が一番大切なの?」と毎朝毎晩、自問自答するようになってから
私は急に思ったのだ。
料理、しないとーーと。
 
 
最初に選んだのが、ハンバーグである。
 
繰り返すが、私は5年間台所に立っていない。
だから、玉ねぎのみじん切りの仕方も知らないし
パン粉に生とそうじゃないものがあることも、知らなかった。
 
 
ただ、
何か一つでも、自信を持てる料理が作れたら変わるんじゃないか。
その一心で、私はひたすらハンバーグをつくり始めた。
 
寝る前、起きた後にベッドで料理用アプリを開いて
料理の得意な友人にポイントを教えてもらって
行きつけのカフェで、マスターに頼んで調理場に入れてもらって
食べてほしい人に好みの触感を聞いて、
これは固い、これは脂っぽい、と
不器用ながら、試行錯誤を繰り返した。
 
そうして、辿り着いたレシピがこれだ。
基本的な作り方は皆さんご存知だと思うので、私が大切だと思ったポイントだけを記しておく。
 
<たね>
・ 卵は卵黄のみ、牛乳は使わない
・ 玉ねぎはレンジで甘みが出るまで熱する そのあと冷凍庫でしっかり冷やす
・ セロリのみじん切りも入れる
・ こねるときは、手ではなく木ベラで混ぜる
・ お肉は塩だけでしっかり混ぜる
・ 隠し味に味噌とマヨネーズを入れる
・ たねは密閉した状態で、冷蔵庫にて一晩寝かせる
 
更に大切なのが、焼き方である。
テフロン加工のフライパンで、終始じっくり弱火で焼く方法、
フライパンで初めに焦げ目をつけて、オーブンで蒸し焼きにする方法、
など色々試してみた。
一番、バランスよく美味しく仕上がったのは、七層構造のステンレスフライパンである。
無水鍋としても使える、定価で1万円くらいの、某料理人が監修したというフライパンを
私は思い切って購入してみた。
 
ステンレスフライパンというものは、料理に慣れている方でも扱いが難しい部類というではないか。
それを初心者の私が使えば、さて、どうなるだろう。
 
新品のフライパンを、意気揚々とコンロにかけて数分。
油を引いた瞬間に煙がもくもくと立ち込め、つややかな銀色の鍋は
一瞬にして綺麗な銅色へ早変わり。
「まだお肉すら入れてないのに……」
重曹やら何やらを手に、半泣きで油焼けと格闘する羽目になった。
 
そんなこともあったが、無事にフライパンが銀色になったところで
改めてハンバーグを焼いてみると、これがどうも、とても美味しい。
 
ステンレスフライパンならではの高温で、ジュッ! と焼きつけた焦げ具合と、
七層構造の特性を利用した蒸し焼きでふっくらジューシーなハンバーグが出来上がった。
 
ハンバーグをつくり始めて、数週間目のことだった。
使ったお肉は約二キロ。玉ねぎも、何個切っただろう。
 
「これは、いける」
 
いける、と言ったからって、どこかに出店するわけでも
誰かにすぐに食べさせる予定もないのだが
私の胸には、自分自身へと、そして将来へのかすかな自信が灯ったのである。
 
 
ついに納得のいくハンバーグが出来たよ! と、温かく協力してくれた人たちに連絡をすると皆が心からの祝福をしてくれた。
 
そして、私の状況を知る友人は一言。
「後悔しないようにね。自分がどうありたいか、だよ」
 
 
私の料理修行は、始まったばかりである。
 
数年後の今頃、大切な人のために、家族のために
美味しい手料理を振舞える日を、目指したい。
 
***

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2018-12-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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