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メディアグランプリ

運動オンチの私でも、スポーツを好きになっていい?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ゆきもと みちこ(ライティング・ゼミ平日コース)

「自分の今期目標はボルダリング部メンバーを増やすこと。 対象者N=1で、ゆきもとさんが来てくれれば100%達成!」
マーケティング本部に異動したての頃、先輩が目をきらきらさせて言いました。
私はとてつもない運動オンチなんだけど。先輩のお誘いだし新しい部に馴染めるかな。
はじめはそんな下心だけでした。

私は運動オンチです。小中高と、運動の時間は恐怖でした。
バスケではパスが回ってくると手先がもつれて、取りこぼす。
剣道部では大事な大会で引分けか負けばかり。
チームメイトはがっかりです。「勝てるところだったのに!」
その度に私はズキンと胸が痛みました。
運動神経がなくて格好悪いことは諦めがつくのです。でも、パスしたり点を取ったり、スポーツで求められているコミュニケーションに応えられないことが、悔しくて悲しかったのです。

でも、ボルダリングなら完全にひとりスポーツなはず。

そう思って、会社帰りに先輩について行きました。ジムでシューズを借りて、初心者講習を受けます。
ルールは簡単。手綱なしで、ホールドと呼ばれる突起に手足をかけて登ります。同じ壁に8級~1級までの難易度別ルートがあって、一番上のホールドに両手でタッチしたらゴール。
「ゆきもとさん、一番簡単なルートいってみよう」
講習を受けている他の人の前で登るんだ。緊張します。
8級の緑色テープがついているホールドだけに手足をかけます。
うっ。腕に体の重さがかかってくる。3メートル位の高さまで登ると怖くて、指でホールドにしがみつきます。足も必死に上げます。
あ。もうダメだ。腕が疲れて、次のホールドを掴めない。私はぼふっとマットの上に落ちました。
他の人も同じルートを登って、次々ゴールしていきます。

あーあ。
ルートが同じだけに悔しい。だって私は運動オンチだから。身長だって154センチだし…と心の中でふてくされた時。
「惜しいな~。 ボルダリングはね、自然に逆らわないで登るんだよ」
ジムの人の声に振り向きました。
「ゆきもとさんは足を上げすぎたんだよ。手と足が近くなりすぎると体が曲がって、腰が壁から引けちゃうでしょ。 すると動けなくなる。 体を曲げすぎないし伸ばしすぎないし、自然に登るんだよ」

講習が終わった後、私は壁をじっと見つめました。
そういえば、私はチビで筋肉もないハンディを、自分にあるもので補ってきました。バスケならゴールはできたからゴール下でボールを待ち構える。剣道なら「負けない」守りの型をつくる。
私に腕の筋肉はないけど、足は人並みに動きます。重力に任せて、体を足に支えてもらおう。
さっきダメだったルートに再チャレンジしました。
地上4メートルの高さで、片手を一瞬離して飛ばないといけないところがあります。
体が「行きたくない! 物理的に、落ちる!!」と抵抗して、手を離してくれません。
私は自分の体に伝えました。「飛べるよ。 足が支えてくれるから大丈夫」
そうしたら、体がすっと自然に動いたのです。いつの間にかゴールできました。
「すごい! すぐ登れたじゃん! ちょっとスキルも使ってたし!」
壁を降りると、すぐに会社の先輩が駈け寄ってくれました。
手をグ―にして、コツンッとぶつけ合う。

あれ、ちょっと嬉しい。

ルートを選んで、自分と対話しながら登る。失敗して周りにがっかりされることもなくて、頑張りを共有してくれる。その達成感と気軽さは素敵でした。

先輩に誘われなくても月1、2回はボルダリングにどうも通ってしまう。こんなことは初めてです。
半年くらいしてジムの人が「もっと回数おいでよー」と声をかけてきたから、私は笑って返しました。「運動できないことが怖くて、夢中にはなれない」
ジムの人はちょっと驚いて、私の隣に座りました。
「スポーツってフィジカル、ブレイン、スキルの3要素でできてるんだって。
例えば短距離走は、走り方といったスキルもあるけど、やっぱりフィジカルが大事。ゴルフはフィジカルよりもスキルで決まるんだって。
ボルダリングは、腕の筋肉とかフィジカルだけだと、上手くならないんだよね。
ムーブっていう壁から離れないスキル、どうやったら登れるかなとパズルを解くみたいなブレイン、3つの要素が同じくらい大事なんだよ」

ああ。私がボルダリングを好きになった理由はここにあるのかもしれない。
フィジカルがダメダメなのは分かってる。
でも、他のクライマーと、どう足を使おうかと考え合う。
重心移動のスキルを教えてもらう。
選んだルートに向き合って、登れた時の達成感。
それはどれもワクワクするものです。

団体スポーツはコミュニケーションに応えられないから、とボルダリングに逃げてきた私が求めたのは、やっぱり対話でした。
自分自身と向き合うだけではない。何より、ボルダリング仲間と話してスキルやブレインを育てあうことでした。
私はスポーツが怖かったけど、それはフィジカルに応えられないだけでした。
本当はスポーツを通して対話したかったし、スポーツを好きになりたかったのです。

それから週1で通い始めた私。ワクワクしていたら、暗雲が立ち込めました。
初心者コース6級に手こずっていると、
会社の先輩は「何でできないのかが分からない」と真顔。
ジムの先輩は「このレベルができないこと、気にしたほうがいいよ!」と笑顔。

あれ。風当たりが強い。

これまではちょっとでもできたら「すごい! がんばった!」と優しかったのに!
初心者ウェルカム期は終わって、6級に甘んじている私のケツ叩きが始まったようです。
ボルダリングは対話だから、これも仕方ないか……。
ちょっと嬉しくため息をついて、私はそっとホールドに手をかけました。

*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。 http://tenro-in.com/zemi/66768

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2019-01-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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