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週刊READING LIFE vol.46

編集力とは今を生き抜く術である《 週刊READING LIFE Vol.46「今に生きる編集力」》


記事:千葉 なお美(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

不便な世の中になったな、と思う。
 
インターネットが普及し、スマホは1人1台が当たり前。
連絡手段はメールか電話だったのが、LINEというコミュニケーションアプリが主流になり、無料メッセージや無料通話が可能となった。これにより、国内外問わず遠方の人たちとも安価で気軽にやりとりができるようになった。
 
「SNS」と呼ばれる、ソーシャル・ネットワーキング・サービスも発達した。
フェイスブックにはじまり、インスタグラムやツイッターなど、あらゆるSNSが急速に増えた。これらは、ボタンひとつで誰とでも自由につながることができる。たとえ一度しか顔を合わせていなくても、あるいは一度も会ったことがない人とでも、相手をフォローしてしまえばそれ以降は自動的に相手の情報が流れてくる。
 
便利な世の中になったな、と思う。
一方で、この便利な世の中に苦しめられている自分がいる。
 
先日、見たくないものを見てしまった。
ツイッターで私の友人と思われる人物が、私についての不満を綴っていた。
ツイッターは、1人で複数のアカウントを持つことができる。
友人のそのアカウントは、私の知らないものだった。
いわゆる「裏アカウント」というものだ。
友人は、私とつながっているアカウントとは別に、もう一つアカウントを所持しており、私に知られていないアカウントで私についての不満を綴っていたのだ。
 
なぜそのツイートがまわってきたかというと、ツイッターの「便利な」仕組みにあった。
ツイッターでは、自分のフォローしている相手が誰かのツイートに対して「いいね」したりコメントしたりすると、その元となっているツイートがまわってくるシステムになっている。
つまり、自分がフォローしている相手のツイートだけでなく、自分がフォローしている相手が興味関心のあるツイートまで、ご丁寧に教えてくれるのだ。
偶然にも私がフォローしているうちの1人が、私のことだとは知らずに、友人の私に対する不満ツイートにコメントしたため、私のもとへそのツイートがまわってきてしまったのである。
そこには、私のことを「お前」や「てめぇ」という言葉で怒りをあらわにした友人の本音が書かれていた。
 
私は予期せずして絶大なショックを受けた。
今まで娯楽として活用していたツイッターが、一瞬にして凶器へと変わった。
 
似たようなことは、あちこちで起きている。
より素早く、より簡単に文字を打てるようになったおかげで、自分の感情を熱が冷めやらぬうちにそのまま文章にすることができる。
時には喜びや興奮を、時には怒りや苛立ちを、衝動のままぶつけることができる。
 
駅でこんなポスターを見かけたことがある。
 
「気をつけて その一瞬が 一生の罪」
 
殴りかかろうとしているサラリーマンの絵。
一瞬のカッとなった衝動で犯してしまう、暴力行為の危険について呼びかけたポスターだ。
 
この一瞬の衝動による暴力の矛先が、いまやインターネット上に溢れかえっている。
匿名で投稿できるSNSや掲示板では、毎日のように暴力行為が行われている。
 
平気で相手を傷つける言葉を使う。
平気で「死ね」という言葉を使う。
 
発する側にとっては、軽い気持ちでストレス発散のはけ口としているのかもしれない。
しかし受け取る側にとっては、無防備なほど大怪我をする。
 
インターネットが急速に普及した現代社会で、それを扱う人間が追いついていない。
免許が必要な車の運転と違い、インターネット上ではルールや法律、マナーや判断力のテストは何もない。
いわば無免許かつ虚偽の身分証で暴走する車が、あちらこちらで多発している。
もはやこの無法地帯を止めることはできないだろう。
 
ではこの時代を生きる私たちが、身につけなければならないものは何か。
私はそれこそが「編集力」であると思う。
 
「編集」と聞くと、書籍や雑誌、映像関係の編集を思い浮かべる人が多いだろう。
しかし、私たちは日常生活において、日々「編集」しながら生きている。
 
人は1日に9000回もの選択をしているという。
朝起きてから寝るまでの間、私たちは常に選択をしている。
朝食は何を食べるのか、駅まで徒歩で行くのか自転車で行くのか、電車はどの車両に乗るか、会社に着いたらどの仕事から取りかかるか……。
あらゆる選択肢の中から、自分の目的を達成するための取捨選択をする。
意識的に選択しているものもあれば、ほぼ無意識で選択しているものもあるだろう。
 
いわば「編集」とは、「意識的に」「切り取って」「つなげる」ことである。
意識的に切り取るためには、自分に何が必要なのかを明確に把握しなければならない。
自分の目指しているゴールは何か、また自分は今どの立ち位置にいるかを知った上で、必要なもののみを選択するのだ。
「編集力」とはそのための力、つまり「俯瞰で物事を見る力」であると私は思う。
情報が溢れている時代だからこそ、自分の全体像を見つめ直し、今自分にとって必要な情報は何かを常に考える必要がある。
 
先の私の例でいうと、実はツイッターには情報の取り込み方についての設定がある。自分がフォローした人のツイートだけを見たいのか、それともフォローした人が「いいね」をした先のツイートまで見たいのか。発信者としての公開設定などに気を使うあまり、受信者としての事前設定がおろそかになりがちだが、情報に翻弄されないためにも気を配る必要がある。
 
もちろん、発信する側にとっても「編集力」は重要だ。
衝動的な感情を簡単に発信してしまえるからこそ、一度俯瞰で自分自身を見つめ直す必要がある。
 
友人の私に対する不満ツイートを見て気付かされた。
私は同じことをしていた。
これを見ていないであろう人のことを、通りすがりに不快にさせられた人のことを、日々の鬱憤を、ここで吐き出していた。
それが巡り巡って自分に返ってきただけなのだ。
 
自分の行動はいつか自分に返ってくる。
それはリアルの世界でも、バーチャルの世界でも一緒だ。
 
だから、常に自分を俯瞰で見つめ直さなければいけない。
自分の人生は、自分で「編集」しなければならない。
 
自分の目指しているゴールは何か。
今の自分の行動は、自分のゴールに必要なものなのか。
不必要な情報に惑わされていないか。
 
立ち止まって、俯瞰で見つめ直す必要がある。
 
「編集力」とは、誰もが必要不可欠な、今の時代を生き抜く術である。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
千葉 なお美(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

青森県出身。都内でOLとして働く傍ら、天狼院書店のライティング・ゼミを経て、2019年6月よりライターズ倶楽部に参加。趣味は人間観察と舞台鑑賞。

 
 
 
 

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2019-08-20 | Posted in 週刊READING LIFE vol.46

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