週刊READING LIFE vol.70

いっそのこと、今年は人間を辞めてみよう!〜次世代通信でVTuberとバーチャルは世界がもっと近い存在になる〜《週刊READING LIFE Vol.70 「新世代」》


記事:坂田幸太郎(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

「なんだ……これは……」
2019年冬。私は衝撃的な光景を見てしまった。
 
コミックマーケット。通称コミケは年2回行われるサブカルチャーの祭典であり、
日本各地から、いや、世界各国からサブカルに愛を注ぐ者たちが集まる。
マンガに愛を注ぐ者、同人誌に愛を注ぐ者、ゲームに愛を注ぐ者、コスプレに愛を注ぐ者。
複数の溢れるばかりの愛が重なり合い、コミケという「大人の文化祭」は毎年大盛況に終わるのだが2019年冬のコミケは例年と少し違うように感じた。
 
と、いうのも私は毎年サブカル好きの友人とともにその祭に参加しており、
2019年冬のコミケで6度目の参戦となる。
例年ならば友人御所望の同人誌エリアに行き、その後、ゲームエリアやコスプレエリアを散策するコースがお決まりなのだが、今年は「他のエリアを先に行きたい」とのこと。
 
珍しい。同人誌への熱烈な愛を持つ友人が、同人誌を差し置いてまで行きたいエリアがあるとは。
それは一体なんなのだろう?
コミケ当日、私は友人に連れていかれるがままそのエリアに足を踏み入れた。
そこで見てしまった。
「なんだコレ……」
そのエリアだけ長蛇の列を成していたのだ。
おそらく周辺のエリアで一番列を成しいていたのではなかろうか?
 
「何この列?」
私は尋ねた。尋ねずにはいられなかった。
「何って、VTuberだよ」彼は平然と言った。
「VTuber?」
聞き馴染みのない言葉が鼓膜を揺らす。
 
どうやらVTuber(ブイチューバー)とは
バーチャルユーチューバーの略称で、仮想空間に存在するキャラクターがYouTubeで動画投稿をすると言うものだそうだ。
キャラクターと言ってもアニメ的なキャラクターではなく、どちらかと言えばゲームを行うときに使用するアバターをイメージすると良いと思う。
代表的なものには、「キズナ・アイ」というVTuberがいる。
「キズナ・アイ」ぐらいは知っていたが、まさかこれほど人気なコンテンツになってたとは知らなかった。
何しろ「キズナ・アイ」以外にもVTuberがいることも、そして長蛇を作るほど盛り上がっている業界だということも初めて知ったぐらいだ。
 
そもそもVTuberというのは何をやるんだろう?
そんな初歩的な疑問を持ちながらあの列に並んだのは私ぐらいであろう。
 
人間が行うYouTuberだったらなんとなく想像がつく。
人間が動画内に出てきて視聴者の気を引く企画を行うというものと想像がつくのだがvtuberは全くの検討がつかない。
コミックマーケット後、VTuberについて調べたところ、YouTuberと同じく色んなジャンルの動画が出てきた。
 
ゲーム実況、歌ってみた、トーク。
行なっていることはYouTuberと似ている。
人間かキャラクターかという違いだけで大差はないが、もう一つだけ明確に違うものがある。
それは生配信の頻度だ。
YouTubeで動画を配信する場合、撮影したものをアップするという方法と、リアルタイムで配信するという方法がある。
YouTuberの場合、撮影し、編集したものを配信する人が多い。
方やVTuberは生配信率が高い。生配信しかしないというチャンネルもある。
友人曰く、リアルタイムで視聴者とコミニュケーションを取りながら配信している人が人気になる世界なんだとか。
確かに生配信をしているチャンネルはYouTubeのコメント機能を通じてコミュニケーションをとっている。
 
リアルタイムに届くコメントに反応してトークを行ったりゲームをしている。
同じ時間を共有したり、コメントでコミュニケーションを取れるというのは、親近感を感じ益々応援したくなってしまうものだ。
ちなみに私が最近はまっているVTuberは「大空スバル」という女性VTuberだ。
彼女はマルチで、トーク、ゲーム、歌となんでもこなす。
 
特にトークが面白く、視聴者のいじりに対し独特なワードセンスで対応する。
学生時代、男グループの中でも会話の中心にいられるタイプの女子がいただろう。
まさしくノリがそんな感じだ。
だから男性視聴者にとっては居心地がいい。
ボーイッシュな女の子である。
こんなにトーク力があるならVTuberではなく「ショールーム」などの配信者になればいいのに。と初めの頃は思った。
もちろん、VTuberと言えども声は人間が担当している。
アニメでいうところの声優である。
あれだけのトーク力があるなら、声を担当している人が表に顔を出して配信者となってもいいのになぜ、VTuberの声優という道を選んだのだろう。
 
と疑問に思ったが配信を見ていくうちにある考えが浮かんだ。
彼女は「大空スバル」に憑依することで自分の持つトーク力以上にトーク力を発揮しているのではないか。
 
俳優や声優も、役やキャラクターになりきることで自分のポテンシャル以上の力を発揮する。
それらと同じで、「大空スバル」になりきることで楽しいトークが生まれるのではないかと思うようになった。
 
「ショールーム」に代表される配信者は人間性を見られる仕事。
片やVTuberの声優は、キャラクターに憑依する仕事。
 
YouTuberは動画を一つの作品として楽しんでもらう仕事。
片やVTuberは同じ時間を共有しあうのが仕事。
 
配信者でも、YouTuberでもない新しいジャンル。VTuber。
それはバーチャル世界に存在するキャラクターに配信側、そして視聴者が想いや感情を憑依させるという不思議な世界のようのも感じる。
だが、かえって人間ではない仮想のキャラクターに想いを馳せることで、何もしがらみもなく本音でトークができるのではないか。
だからVTuberのトークは面白いのではないか。
 
またVTuberは世界から注目されるのではいかと思われている。
YouTuberだとやはり海外から評価されるのは難しい。
やはり、顔の成り立ちなどが自分と違う人が行なっている動画は本能的に見にくいという問題がある。
現に日本人も海外のYouTuberより日本のYouTuberの方を好む。
しかし、VTuberだと肌の系統も何もない。
人間では越えられない壁を優に越えられるのだ。
一旦人間をやめて世界へ羽ばたく。
一旦人間をやめて自分をさらけ出す。
一旦人間を辞めることで自分の新たな才能や本音が見えてくるのかもしれない。
 
トーク、ゲームが人間という概念すら飛び越えて楽しめる時代。
しかし、一つ問題がある。
それは通信速度だ。
VTuberは様々な高機能コンピューターを使い動画を配信している。
しかも、リアルタイム配信が主流の世界なので通信速度が遅いとフリーズしたり、視聴者のコメントとのラグが発生し、コミニケーションが取れないなど何かと不便が起こりうる。
現状の通信速度はやはり限界があるのかフリーズやラグというのが目立つ。
そんな折、ある吉報がVTuber界に舞い込む。
来たる2020年春。5G時代が到来する。
5Gといえば次世代通信として注目されており、とくかにかくに通信速度が今までと比べ物にならないほど速いらしい。
なんでも、映画を2秒でダウンロードできるとか。
そんな次世代の波は確実にVTuber界を飛躍するに違いない。
 
人間とバーチャルがもっと近い存在になる時代。
自由に人間界と仮想空間を行き来できる時代。
新たな時代はもうあなたのすぐそばまで来ている。
 
益々飛躍すること間違えないvtuber、そして、ますます進化するバーチャルな世界から今年は目が離せなくなりそうだ。
 
 
 
 

◽︎坂光太郎(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
26歳。東京生まれ東京育ち
10代の頃は小説家を目指し、公募に数多くの作品を出すも夢半ば挫折し、現在IT会社に勤務。
それでも書くことに、携わりたいと思いライティングゼミを受講する
今後読者に寄り添えるライターになるため現在修行中。。。

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2020-02-24 | Posted in 週刊READING LIFE vol.70

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