週刊READING LIFE vol.85

超忙しい現代人のための読書法10選《週刊READING LIFE Vol.85 ちょっと変わった読書の作法》


記事:ギール里映(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
小さい子どもを抱えるママほど、本を読まない人種はいないと言われている。
 
本が大好きなのに、なかなかじっくり読書ができないでいる自分に、実はコンプレックスを感じている。アラフィフ、一児の母、会社経営、読書する時間は限りなく少ない。本を読みたい。しかし読む時間がない。このジレンマを解消するために、ありとあらゆる工夫をしている。
 
独身時代は毎日お風呂で1、2時間読んでいた。小説が好きで、一人の小説家にはまるとその人ばかり、読み尽くすまで読み倒す。通勤電車の中でも寝る前ベッドの上でもちろん読む。湯船に文庫本をどぼんと落としたことも何度もある。それぐらい読むことが大好きで、生活の一部だったにもかかわらず、その頃はまさかこれほど、読書の時間がなくなるとは思ってもみなかった。
 
結婚するだけならまだよかった。そんなに大きな生活の変化はまだ感じることなく、のほほんと読書にあけくれていても、それをとがめる人はいない。しかし出産を機に自分の生活はおろかマインドまでもが、ドラスティックな変化を遂げた。
 
はっきり、言おう。子育て中のママに、読書をする時間などない。
もっと言うならば、ゆっくりトイレにいく時間すらないのだ。子どもがまだ小さいうちは、自分がしっかりごはんを食べる時間すらない。ましてや美容院やネイルなどももってのほかだ。読書なんて、それが好きだったことすらどこか彼方に起き忘れてしまった。あれだけ好きだった小説は全てブックオフに出され、代わりに育児書が並んだ。しかしそれらはゆっくりと読まれることはなく、「いつか読もう」という気持ちとともに、部屋の片隅に積み上げられていく。
 
時間はとことんない。しかし読みたい。そんなわがままを叶えるために、私が採用している読書の10の作法をご紹介したい。

 

 

 

1 あきらめる


「全部読もう」とか「くまなく堪能しよう」という気持ちをまず、あきらめることが大事である。別にネガティブな気持ちでそうしているのではなく、本を読むことの目的をリセットしておこう、ということだ。
 
これまで、一文字も漏らさず読み尽くしたい、その世界に没頭したい、ストーリーに浸りたい、そんな思いで行っていた読書の、ゴールのハードルをとことん下げたいのである。
 
東大をめざして一生懸命勉強し、合格できなかったら相当落ち込んでしまうものであるが、そもそも東大を目指していなかったら、落ちても気にならないではないか。
できないことを目指してできないと嘆くのではなく、もっと小さな、ミニマルなゴールを設定しておけばいい。
 
本を一文字一句読み尽くすのがゴールではなく、本の世界に触れること、本の内容に触れること、そんなことぐらいをゴールにしておけば、簡単に達成ができる。そうすることで小さな満足感を日々得られていることのほうが大切なのである。
 
今日も読めなかった、また読めなかった、と、ないないが続いてしまうと、ますます読めない自分に腹がたってしまう。だから、目標は小さく。大きな目標はあえてあきらめてしまうのがいい。

 

 

 

2 全く別のゴールを設定する


本を買っただけで満足する、でもいいことにする。
いわゆる「積読」であるが、積読はいつか読むことが前提になっている。
しかし、買って置いておくだけをゴールにして、読むか読まないかはオプションでいい。そうするとやはり、読めない自分に対するコンプレックスを感じなくてすむ。
 
本当は学びが多くて楽しいはずの読書が、何か重い責務になったり、読めないことで自分を苦しめてしまうのであれば、本末転倒である。
 
いいじゃないか、とにかく。本がきれいに積まれていて、その背表紙を眺めるだけだって読書だ。本を買い、手元におき、紙の手触りを楽しみ、紙の匂いを楽しむ。そんなスタイルの読書だって、あってもいいじゃないか。
 
少なくとも私はそうやって、積読してしまうことを正当化している。

 

 

 

3 はじめに戦法


積読でもまずはオッケーとしても、やっぱり読みたいし、内容を知りたい。本もしっかり読まれたほうがうれしいだろう。やはり内容が気になって買った本だから、どんなことが買いてあるのか、読みたくなって当たり前だ。
 
ならばとりあえず、「はじめに」だけを読もう。これなら5〜10分で読める。
 
「はじめに」には、著者がなぜこの本を買いたのかという想い=ストーリーが描かれていることが多い。それらがわかるだけでも、充分にその本と出会った価値がある(と思えるではないか)。
 
時間がない人にとって大切なのは、本を全部読んだという事実ではなく、本のエッセンスを充分に感じ取れたかどうか。そしてそのエッセンスはとりあえず、「はじめに」にふんだんにちらばめられているのである。

 

 

 

4 それでもやっぱり読みたい欲を満たす


目次をみて、一番読みたいところだけを読む。
 
そもそも本を購入したときに、その本で得たいことは8割は明確になっているはずだから、その答えが手に入るところだけを読むことができれば効率がいい。
 
その答えは、目次を見れば一目瞭然である。
目次を見ながら、一番読みたい章だけを読むことができたら、「はじめに」と合わせても30分ぐらいで読めてしまうの。それだけでしっかりと読めた気がするのであれば、それでいいことにしてしまうのだ。
 
どうせ全部読んだとしても、内容を全て覚えているわけではない。ならば知りたい答えがあるところだけを読んだとしても、読書にはかわりがない。

 

 

 

5 巷の速読ノウハウを取り入れる


読書法とか速読法に手を出してみてもいい。
 
本当の本好きはこういう読書法を邪道だと一蹴するかもしれないが、背に腹は変えられない。立ってる者は親でも使えというように、あるノウハウはとにかくなんでも使おう。まずは自分で試してみなければ、それがいいのかだめなのか、わからないではないか。
 
速読といわれるメソッドは数多くある。それほど、速く読めるようになりたい、短時間でたくさん読みたいと思う人たちが多いということだ。
 
フォトリーディングという手法を学んだことがある。その名の通り、フォトメモリー、つまり視覚で捉えて読む手法である。これだと単行本1冊を15分ほどで読むことができる。何が書いてある本なのか、要約することもできる。
 
やってみるまではまさか自分が15分で1冊を読めるようになるとは思えなかったが、やってみたら納得だった。しかもちゃんと読めたという手応えも感じられる。
 
唯一の難点は、結構ものすごい集中力を必要とすることだ。そのため、1冊に取り掛かる前にかなりのモチベーションが必要になる。この方法はゆったりと読書を楽しみたい人向きではなく、書籍から情報を収集したいという人向けだ。

 

 

 

6 読むのではなく聞く


読む時間がないのであれば、聴いてみるのはどうだろう。いわゆるオーディオブックというやつだ。これなら家事をしながらでも「読む」ことができる。
 
友人で、毎日車で都内を営業しながら回っている人がいる。彼女もママだ。車の中ではいつもなにかの録音を聞いて、学びの時間にしているという。公共の交通機関なら素直に読書は可能だが、自分で車を運転するとなるとそうはいかない。
 
運転中でも耳だけは自由。それを活用しない手はない。
 
聞く読書はもはや活字を読んではいない。これを読書といっていいのかどうかはわからないが、マルチメディア、マルチタスキングの時代である。読書だけが昔ながらの方法しかないのは、やはり時代遅れと言わざるを得ないだろう。

 

 

 

7 誰か代わりに読んでもらう


こうなるともはや読書ではないと言われるかもしれないが、本の内容が知りたいなら、誰か代わりに読んでもらうという手がある。
 
自分の代わりに読んでもらい、要点をレポートにしてもらう。自分はそのレポートを読みさえすれば、本の内容で大事なところは漏れなくわかる。
 
本を要約してくれるサイトもある。本の要約サイト、フライヤーがそうだ。
忙しいビジネスパーソンたちのために、年間8万冊出版される本のなかから、毎日1冊ずつが要約され、現在2000冊ほどが読めるようになっている。1冊10分で読めるように要約されているので、忙しいビジネスパーソンのみならず、ママたちにもぴったりのサービスである。
 
世の中は外注、アウトソーシングが盛んな時代だ。
読書だってアウトソーシングしてしまってもいいのかもしれない。

 

 

 

8 本を読むために、自分が書く


読む時間がないと感じているのなら、自分が書く側に回るといい。ブログやメルマガ でもいいし、ライターとしてどこかの媒体に書いてもいい。著者、作家を目指してもいい。とにかく自分が書く側に回ることである。
 
時間がなくて忙しい人が、読む時間すらないのに、書く時間などもっとないと思われるかもしれない。たしかに時間はないかもしれないが、ここに時間を無理やりにでも生み出すことができる仕掛けがある。
 
つまり、自分が文章を書くようになれば、自分の文章力のなさや表現力の乏しさにがっかりする。語彙の少なさに愕然とする。自分が書きたいことを書くためには、もっと文章をインプットすることが必要だというニーズが生まれる。そうなると本を読まざるを得ない。
 
美しい文章を書くためには、美しい表現をたくさん読んでおきたいし、わかりやすい表現をするためには、わかりやすい文章に触れておきたい。文章を書くという行為は、あくまでも自分のなかにあるものを、自分の頭の中にあるボキャブラリーと表現
を使って文章化していく行為だ。そのため、自分の頭のなかに入っていないものは出せないのである。アウトプットするためにはインプットが必須になるから、無理やりにでも読書をする時間を作り出せるだろう。実際私も、自分が物を書くようになってから、圧倒的に読書量が増えた。仕事に費やす時間も増えているにもかかわらず、それでも読書の時間を作り出すことができているのは、書くことの巧妙だと思っている。

 

 

 

9 忘れちゃいけない漫画


読書する時間がないなら、まずは漫画で読むのもいい。
 
実用書も昨今漫画化されるものが多い。また小説も漫画化、アニメ化されるものが多い。文章を読む、というニーズは満たせないかもしれないが、本の世界観に触れたり内容を把握するのであれば、漫画やアニメが手っ取り早い。
 
わかっている。これは邪道だということも。本が好きな人にとって、アニメでみるとか、漫画で読むとか、言語道断といわれることぐらい承知している。
しかし、それでも読んだ気になれるのであれば、それで納得するのであれば、そういう読書があってもいいではないか。
 
また、漫画は実用書が漫画化されたものだけに限らない。
 
そもそも日本には、世界が羨む漫画文化がある。人生において大切なことは全て漫画で学べるぐらいに、漫画の世界にしか存在しない才能があふれている。漫画を読むこともれっきとした読書だ。私が子どものころは漫画ばかり読んでいたら親から叱られたりもしたものだった。しかしいまはむしろ、漫画の世界の面白さや奥深さを親世代ですら理解している。
 
速く読めるしわかりやすい。なんなら子どもと一緒に読むこともできる。
漫画は忙しいママの救世主なのだ。

 

 

 

10 なんだかんだいっても、正統派


本を読むことの目的が何か、と考えたときに、情報を得るためだとするならば、これまでにご紹介した方法で充分だと思う。本を読む目的は、新しい情報や知見を得て、知らない世界を知り、自分の教養を深めることだとするならば、それが叶えば充分だと言える。
 
しかし、本好きが本を読むのは、本が好きだから読むのだ。
なんだかわからないけど本が好き、読みたいから読みたい。そう思う人にとっては、やはり正統派の読書法しかない。
 
お気に入りの椅子に座って、大好きな飲み物を用意して、本のページをめくる。好きな音楽をかけてもいい。椅子でなくても、ソファやハンモックでもいい。本を読むのが好きな人は、本を読む行為が好きなのだ。お気に入りの空間で、本の世界、活字の世界に没頭する。その世界のなかに完全にトリップして、この世のことを忘れてしまう。その体験がしたいからこそ、本を読むのが好きなのだ。
 
そういう人は、読むしかない。それももしかしたら、キンドルや電子書籍すら邪道かもしれない。印刷されて製本された本を読むという行為が好きなら、それに没頭するのが一番である。
 
小賢しい読書法やノウハウなど一切無用。ただ、思いっきり好きな本を読むこと。
それが何よりも最高である。
 
私たちの生活は、ここ30年ほどでとても忙しくなった。
パソコンが普及し、携帯電話やスマホが普及し、デジタル文化が大きく花開いて、生活様式ががらりと変わった。
新しい方法、新しいカルチャーがどんどんと生まれ、本を読むという行為すら、一つの方法ではなくなってきた。もしかしたらもうすぐ、AI やらICチップやらが頭に埋め込まれて、本の表紙をみただけで本の内容が一瞬で読めるようになる時代が来るかもしれない。そうなると私たちは、本をもはや読まなくても情報が手に入るようになる。
 
しかし、本好きが本を読む目的は、情報を得るためではないのだ。本を読むという体験自体を楽しみたいから、本を読みたいと思うのだ。
 
もしかしたらこの正統派読書法が、もはや一番希少で変わった読書法と言われる時代が、すぐそこにまできているのかもしれない。
忙しい現代人だからこそ、ゆっくりじっくり読書にひたる時間が必要なのではないかと思う。
 
やはり、最後に勝つのは正統派なのだろう。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
ギール里映(READING LIFE編集部公認ライター)

食べかた研究家。京都の老舗料亭3代目として生まれ、現在は東京でイギリス人の夫、息子と3人ぐらし。食べることが好き、が仕事になり、現職は食べるトレーニングキッズアカデミー協会の代表を勤める。2019年には書籍「1日5分!子どもの能力を引き出す!最強の食事」、「子どもの才能を引き出す!2ステップレシピ」を出版。

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2020-06-29 | Posted in 週刊READING LIFE vol.85

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