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週刊READING LIFE Vol,96

時間の意味《週刊READING LIFE vol,96 仕事に使える特選ツール》


記事:なつき(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
15分。これが私の精一杯の時間。これ以上はちょっと無理。何の時間かというと、苦手なことをやるのに集中できる時間。
 
私は時間を区切るのがあまり好きではなかった。1日の始まりに時間配分をしてキチキチに固めてしまうのが苦手だった。とても圧迫され窮屈になると思っていた。時間というものはいつでも流れているものなのだから、流れを止めずにその流れに乗って行けるのが自然だと思っていた。だからその流れを分断することはしたくなかった。だって、集中できることとできないことがある。集中できないことを時間で縛ると常に時間を気にすることになる。楽しいことはあっという間に時間が過ぎるのに、楽しみを見出せないことはなんと時間の経つのが遅いことか。30分集中していたつもりで実際は5分しか経っていなかったりすることもよくあった。なぜ時間は、好きか嫌いかでこんなにも感じ方が違うのだろうか。
 
私は絵を描くことが好きだ。絵を描き始めると気づいたら2時間、3時間はざらにある。私は、勉強が嫌いだ。参考書を開いて読み始めると、急に睡魔が訪れる。それまで睡魔なんてなかったのに、参考書を持ったまま、こっくりこっくりしだす。気持ちを奮い立たせて歩きながら読んでみても欠伸が出てくることもある。
 
時間とは何なのだろう。ふと私が集中できているのはどれくらいなのか計ってみたくなった。時間を区切るのは嫌だけれど、自分を知るのに必要なことだと思った。計るのは何がいいだろう。時計を見る。これでもいいけれど、もっと、時間を始めから決めておける物。タイマーってあったっけ? 実家にいた時は冷蔵庫にデジタルタイマーがくっついていた。今の家には無い。タイマー、どこかに無かったかな。部屋中を探してみる。無い。それもそのはず、私自身買った記憶がない。どうやら夫も持っていないようだ。
 
そういえばiPhoneって目覚まし機能あったよね。それでセットすればいいか。iPhoneを起動する。時計アプリを開き目覚ましセットしようとしたときのこと。下の段にタイマーの文字があった。こんなところにタイマー機能入ってたんだ。iPhoneすごい。設定する時間はどれくらいがいいだろう。タイマーを見つけたものの肝心の時間を決めていなかった。
 
30分、ちょっと長すぎるかな。20分、好きなことならいいけど苦手なことには難しいかも。15分、1時間の4分の1か、これくらいがいいかな。10分、ちょっと短いか。5分、タイマーセットしてすぐ時間が来る気がするから違う。最初は15分からやってみることにした。
 
15分。タイマーがセットされた。参考書を取り出す。読み始めた。やはり眠くなる。読むことは苦手ではないのになぜか眠くなる。この勉強が嫌いなのだろうか。特にそういうわけでもない。時間を計っているし集中しなきゃと思っても中々集中できない。タイマーがピピピと鳴った。
 
15分。次にやるのは好きな絵を描くこと。描き始める。少し乗ってきたところでタイマーがピピピと鳴った。もっと描きたいのに。
 
15分。次にやったのは食器洗い。洗剤をつけてスポンジでこすり洗う。ピピピと鳴ったタイマーとほぼ同時に洗い終えた。
 
15分ひとつとってもこんなにも時間の感覚は変わるのか。参考書を読んでいた時は早く終われと思っていた。絵を描いている時は時間が足りないと思った。最後の食器洗いはタイマーと競っていた感があった気がする。洗い終えた時に鳴ったタイマーに対し、勝ったという気持ちがあった。特に勝ち負けを定めていたわけではないし、タイマーと競争したくてやったわけでもない。それでもタイマーが起動した瞬間に全速力で洗っている自分がいた。
 
全速力で洗う。食器洗いに関して言えば集中して速くやろうとしている状態だ。この全速力の状態を他のことにも応用できないだろうか。参考書を読むのに全力疾走できたら、それを眠くならずにできたらもっと自分に自信が持てるのではないだろうか。それにはさっきのタイマーと競争、が結構いいかもしれない。15分で集中できなかったからここは5分にしてみよう。そしてその5分で頑張れそうなギリギリの読むページを設定する。
 
スタート。タイマーは5分。5分だけ読めばいい。これが功を奏した。すぐに時間が来てくれる安心感から眠くならなかった。すぐに時間が来るから自分で決めたノルマをちゃんとこなさなきゃと思った。タイマーがピピピと鳴った。
 
思った以上にすぐだった。読めると思ったページまであとちょっと足りなかった。敢えてギリギリに設定していたから仕方なかったけど、なんだかタイマーに負けた気がして悔しかった。タイマーに負けるという感情、一体何なんだ。
 
でもこの感情面白い。そう言えば子供時代に似たようなことがあった。誰と競争しているわけでもないのに競争心が出ることがあった。それをクリアすると勝った気になった。それはこんな感じ。外を歩いていて、信号機から信号機までの間に赤い車を5台見つけるとか、5分歩く間に花を見つけられたらとか、そんな他愛無いものだったけど、自分でちょっとしたノルマを決めて達成するのが楽しかった。そう、この時の感覚に似ている。この遊びは細かく区切っているほど面白い。ちょこっとだけ楽しむのがいい。
 
時間を区切るのを苦手と思っていたけれど、知らないうちに自分で区切ることを遊びとして楽しんでいたことがあったんだ。それも辛いとかではなく、楽しみながら。
 
すっかり忘れていた。時間を区切ることは自分を窮屈にすると思い込んでいた。そうではなかった。もしかしたら参考書を読むことは時間を決めた方が捗るのかもしれない。そう思って取り敢えず5分で区切って読むことを続けてみた。すると5分では物足りない時があった。今度は1分増やして6分にしてみた。iPhoneのタイマーの良いところはちょっと指をスライドするだけで簡単に時間設定の変更ができるところだ。そして1度設定した時間はそのまま残って表示されているので繰り返し同じ時間で行うことができる。
 
設定時間は少しずつ増えていった。今では15分でも集中できることが増えてきた。そして私は15分がちょうどいい時間だということが次第にわかってきた。ずっと時間は流れに任せていたいと思っていたら気づけなかったことだ。身近にいつも手元にあるiPhoneにタイマー機能があったことで時間を決める習慣がつきつつある。苦手なものも時間配分することで、苦手を最小限にすることができるようになった。苦手を好きにするのはまだ少し先のことになると思うけど、少なくとも嫌いではなくなったことは大きな進歩だ。
 
iPhoneにあるタイマーは私に時間の意味を教えてくれた。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
なつき(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

東京都在住。2018年2月から天狼院のライティング・ゼミに通い始める。更にプロフェッショナル・ゼミを経てライターズ倶楽部に参加。書いた記事への「元気になった」「興味を持った」という声が嬉しくて書き続けている。

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2020-09-22 | Posted in 週刊READING LIFE Vol,96

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