天狼院通信

発売前損失額340万4000円以上!天狼院最大のトラウマは雑誌『READING LIFE』だった。《『READING LIFE』の挑戦》


「ちょっと待ってくれ」

そう僕が手のひらをかざして、そこに集まる天狼院のスタッフに言ったとき、その場は息をのんだように止まった。
その刹那、誰もが、嫌な予感を感じただろうと思う。
なぜなら、それまで僕の口数は少なく、表情は終始晴れなかったからだ。
おそらく、スタッフたちは、その言葉だけは言ってほしくないと思っていただろうと思う。

しかし、僕はそれを知りながらもこう告げた。

「雑誌『READING LIFE』の発売を、無期限で延期する」

ため息を吐かないまでも、さすがに、チームのメンバーは落胆の表情を見せた。
これまでの数ヶ月にわたる奮闘はなんだったのだと。

無理もない。
数ヶ月かけて準備をしてきた。
デザイナーの長澤にいたっては、雑誌『READING LIFE』のメインデザイナーとなってもらうために、およそ一年がかりで主に雑誌のデザインを手がけるデザイン会社から、強引に引き抜いた。

彼は、天才だった。

まだ若く経験値としては決して多くはないながらも、時折天狼院と組む際にその片鱗を見せつけていた。
早稲田大学理工学部に入りながらも、中退してデザイン学校に入り直し、デザイナーになったという経歴からもデザインにかける尋常ならざる想いが窺い知れるだろう。

その彼の天狼院での存在意義を、僕の言葉は失わせる危険性を秘めていた。

雑誌『READING LIFE』の発売を遅らせるのは、これが初めてではなかった。
2014年11月8日に創刊号が出て以来、季刊で出るはずだった『READING LIFE』は、2年近く、次の号が出ていなかった。

まずは、2015年9月26日の福岡天狼院オープンに合わせて、2号目となる『READING LIFE』が出る予定だった。
だが、僕はそのときも発売を見送った。
そして、1年後の2016年9月26日にも、発売のチャンスがあった。
その日は、天狼院書店ができて3周年の記念すべき日だったからだ。
しかし、ここでも、僕は発売を見送り、そして、今回、2016年11月8日の発売を見送る決断をした。

なぜ、発売を見送ったのか?

理由は単純明快だった。
発売をするかどうかを決める際に、シンプルな問いをしていたからだ。

僕なら2,000円でその雑誌を買うだろうか?
迷うことなく答えは出た。
――いや、死んでも買わないだろう。

それは、今回ばかりではない。
発売を見送ったどの時点でも、その答えは変わらなかった。

僕なら買わないものを、お客様に売るわけにはいかない。

今年の冬に、小さな騒動が起きた。

雑誌の発売を期待し、雑誌『READING LIFE』の編集にも関わっていたお客様数名から、雑誌『READING LIFE』編集部は詰問を受けた。

なぜ、自分たちが練った企画が雑誌化されないのか、もう雑誌を作る熱意も失ってしまっている。この状況を編集部はどう考えているのか。

もっともなご意見だった。抗弁の余地もなく、もしお客様が望むなら、損害を賠償しようとも考えていた。
その上で、こんな謝罪文を編集部のグループに僕は掲載した。

【お詫びとご提案】天狼院書店店主の三浦でございます。再三にわたり、雑誌『READING LIFE』の発売を延期させたことをお詫び申し上げます。昨日の記事でも発表しましたが、発売の延期につきましては、ひとえに、編集長としての僕の判断です。
11月8日の発売は、デザイナー、印刷会社、その他、関連会社にも一旦は、ゴーを出しましたが、雑誌の台割を作った結果、雑誌のコンテンツとして、お客様に提供できる記事は、ほとんどプロの僕が書いたものしか出せないという結果になりました。天狼院のスタッフが用意した記事もすべて没としました。
創刊号の反省より、お客様に受け入れられないコンテンツは、絶対に載せないという方針を掲げておりましたので、そうした判断を下しました。
これについても、率直に申し述べればよかったのですが、そうすることもしなかったこと、重ねてお詫び申し上げます。

正直、どうすれば、面白い、お客様に手にしてもらえるコンテンツを揃えられるか、頭を悩ませました。

多忙ということもありましたが、それ以上に、コンテンツを揃えられる自信が、編集長としてなかったのです。それ故に、発売日を再設定することも避けました。

ここにもあるように、実は天狼院のスタッフの中には、共通した苦い経験があった。

あるいは、それを「トラウマ」と言ってしまってもいいかもしれない。

2014年11月8日に出した雑誌『READING LIFE創刊号』は、内容こそ様々挑戦したが、あまりに誤植、誤字脱字が多く、見るに堪えないものになっていた。

あまりのことで「編集長失格」という謝罪文をおつけして売っていた。

あのときの悔しさが、未だに痛みとして、僕ら編集部では共有していた。

創刊号のときのような想いは絶対にしたくはない。

それは、恥というよりかもはや強烈な執念にも似た感情だった。

【お詫びとご提案】の文章は、さらにこう続く。

ただ、希望はありました。

今現在、天狼院では、ライティング・ゼミで力をつけているお客様が多くいらっしゃり、それ以上に、この前からスタートしたライティング・プロフェッショナルのお客様の実力が、まさに消費に耐えられる「コンテンツ」の域に達しました。

ライティング・プロフェッショナルの方々の成長は、僕の想像のはるかに上をいくものでした。

このライティング・ゼミの力を、雑誌に活かす方法はないかと考えました。
単発のイベントを続けたとしても、散逸して、集中力がなくなり、結果として、かたちにならないだろうと考えました。

有り体に言ってしまえば、創刊号で誤植や誤字脱字が多かったのは、校正・校閲に回す時間がまるでなかったからだ。
そして、校正・校閲の時間がまるでなかったのは、雑誌の編集やライティングに参加してもらったお客様の文章が、とても「コンテンツ」のレベルに達しておらず、これの修正を依頼し、あるいはリライトすることに、ほぼすべての時間を費やしてしまったからだ。

「お客様と一緒に作る雑誌」。

たしかに、聞こえはいい。
けれども、現実問題として、書く訓練を受けておらず、書くことを体系的に学んだことのないお客様が書く文章が、お金を支払われる「コンテンツ」レベルに当初から達しているということはありえなかったということだ。

その反省から生まれたのが「天狼院ライティング・ラボ」だった。

そう、全国で延べ2200名様以上が受講した「人生を変える天狼院ライティング・ゼミ」の前身が「ライティング・ラボ」だ。

図らずも、今、「ライティング・ゼミ」は進化を続けて、天狼院でも屈指の人気コンテンツに成長した。
ここから、プロも何名も輩出され、著者の方々も受けて自作に活かすようにもなった。
それは、『READING LIFE創刊号』の反省から、徹底して、お客様の「再現性」を追求した結果だった。

そう、あの創刊号で味わった悔しさがなければ、決して生まれなかったゼミだった。
図らずも、このゼミの内容は、大手出版社より、書籍になることがすでに決まっている。

また、お客様の強い要望から「ライティング・ゼミ」の上位クラスとして生まれた「ライティング・プロフェッショナル」が、開講間もなくからとんでもない成果を上げた。天狼院が誇るプロライター・スタッフたちをも、そのクラスの皆様は凌駕して、商業出版やラジオドラマの台本の仕事を得たりと、プロとして頭角を現す方が続出した。

この「ライティング・プロフェッショナル」が予想外に成長したのをみて、僕は、ようやく、確かな手応えを覚えた。

よし、これなら、いけると。

仕切り直して、全面的に企画を刷新した。
徹底的に面白い企画を作っても、ライティング技術が著しく向上したお客様やスタッフなら、これにたえる記事を創り上げるだろうと確信をもっていた。

そして、編集部は、新しい『READING LIFE』の発売日を、2017年4月23日に設定した。
その発売に向けて、我々編集部は、全力で記事を書き、雑誌を構築して言った。

発売を前にして、デザイナーの長澤や副編集長の川代ら編集部のスタッフを前に、僕はまた晴れない表情をして、

「ちょっと待ってくれ」

と、そう僕が手のひらをかざした。
だが、もう、その場は、息をのんだように止まらなかった。
僕の言葉を期待を持って、待っているようだった。

「雑誌『READING LIFE』の発売を、延期する」

スタッフたちは、落胆しなかった。

「その方がいいと思います」

と多くのスタッフが晴れやかな顔で頷いた。

徹底して記事の内容を精査し、校正・校閲が終わるまでは世に出さない。

その意識が編集部の中に充溢していた。

自分が買わないものを、お客様に売るわけにはいかない。
自分が買わないものに、お客様の記事を載せるわけにはいかない。

幾度となく、台割を修正し、記事を修正し、表紙を泣く泣く没にし、新しいコンセプトで表紙も作り直した。
幾度となく、チェックを繰り返して、そして、その日を迎えた。

「これで、校了だ」

不思議と喜びが湧かなかった。
ただただ、ホッとしていた。

そして、いつものように自問した。

僕ならその値段で買うだろうか?

答えは明確だった。

ーーいや、むしろ、買わない理由が見当たらない。
4,000円出しても間違いなく買うだろう。

最初に発売する予定だったのは、2015年1月だった。
遅れに遅れ、結局、『READING LIFE』の2号目の発売日は、2017年6月17日に正式に決まり、印刷所にデータを入稿した。

2年5ヶ月遅れた雑誌になった。

その歳月の間に、天狼院は多くを損失した。

もし、去年のうちに雑誌『READING LIFE』が発売されていれば、デザイナー長澤の一年分の給与が無駄にならずに済んだはずだ。
そして、新しくこの雑誌に取り入れようとしたARの契約金と毎月の料金が、完全に無駄になった。
もうARが真新しい時代ではなくなったので、『READING LIFE』で取り入れるのをやめ、その分が丸々損失となった。

そして、何より、これまでこの雑誌を作るのに協力してくれていた多くのお客様の信頼を失うことになった。
これは数値には現れないが、この損失がもっとも大きい。

雑誌『READING LIFE』の2号目は、出る前にざっと計算して2年5ヶ月で

¥3,404,000以上

損失したことになる。
お客様の期待を裏切り続けたことも含めれば、まさにプライスレスな損失だ。

――だが、これは本当に損失だったのだろうか?

長澤は『READING LIFE』のデザインをやらない時期も、店舗やチラシ、HPのデザインを一新して天狼院のブランディングを大きく向上させた。また、雌伏の時期があったからこそ、今回の雑誌ではそのデザイン能力をいかんなく発揮したのだろうと思う。

また、お客様からの叱責があったからこそ、今回の内容に活きたと思う。
今回の雑誌を読んでもらえれば、僕らの雑誌がどこを目指していたのが、ご理解いただけると思う。

こうしてできた雑誌『READING LIFE 2017夏号』の発売を一週間後に控え、僕は複雑な想いでいる。

おかしな話だが、これほど苦労して創った雑誌だというのに、今、猛烈に、この雑誌を出したくないと思っているのだ。

印刷代だけ損切りすれば、そして、今注文してくれている多くの方に返金すれば、雑誌を出さない選択肢もあるのではないかとふと考えることも、本当にあるのだ。

なぜか?

あまりに、出来が良すぎるからだ。

この内容を、2,000円で世の中に公表するのはもったいないのではないかと、ついケチな性分が表に出てきてしまうのだ。

まずは、第一特集がやばい。

「本」の再定義で今回僕が語ったことは、NHKさんや日経ビジネスオンラインさん、地方の放送局で取り上げられている「論点」を詳しく、そしてわかりやすく解析し、解説したものだ。
このメインの文章によって、世界に対して、新しく「本」と「本屋」を定義したと思っている。
そう、日本だけでなく、世界でこの論点で語っている人はいない。

つまり、この記事だけで、永久保存版になると僕は捉えている。

また、第二特集の「博多美人はなぜ美人なのか?」は、結局、完成まで足掛け2年間を要した。
けれども、天狼院流の、博多美人の理由が、あらゆる論を網羅しながら明確に解明されている。
私家版「博多美人論」は、ぜひ、読んでほしい。

これも、176ページある『READING LIFE 2017夏号』のほんの一部だ。

書籍でいえば、軽く3冊分の文量がある。

これが、2,000円だとすれば、もう買わない理由はないと、至極客観的にみても思うのだ。

また、もし、これが他から出されていれば、雑誌だったとしても、僕は迷いなく、「天狼院秘本」に選定しただろうと思う。

様々な紆余曲折があった今回の雑誌『READING LIFE』は、ライティング・ゼミを生むなど、波及効果も計り知れない。

この時期に、発売される運命だったのではないかと僕は思うのだ。

この雑誌を皆様にお届けできることを、本当に嬉しく思います。

2017年6月10日
READING LIFE編集長
三浦崇典

 

■雑誌『READING LIFE2017夏号』2,000円+税《現在、予約受付中!》

6月17日(土)19時から東京天狼院、福岡天狼院、京都天狼院各店にて発売開始・予約順にお渡しいたします。

 

【雑誌『READING LIFE』予約する際の注意と通信販売について】

いつもありがとうございます。雑誌『READING LIFE』副編集長の川代でございます。
『READING LIFE』は3,000部作りますが、発売日にお渡しできる分の数に限りがございます。確実に手に入れたい方はご予約をおすすめ致します。初回限定特典として、ご予約先着順にて、雑誌『READING LIFE創刊号』(2160円相当)を差し上げます。この創刊号のお渡しは、なくなり次第終了となります。ご了承ください。
また、万が一予約が殺到した場合、予約順でのお渡しとなりますのでご了承くださいませ。

店頭、お電話、メール、下の問い合わせフォーム、Facebookメッセージなど、あらゆる方法で予約受付致します。

 雑誌『READING LIFE2017夏号』2,000円+税
6月17日(土)19時から東京天狼院、福岡天狼院、京都天狼院各店にて発売開始・予約順のお渡し

今回は通信販売も同時に受付開始します。通販での受付も予約受付順の発送となります。PayPalでの決済完了時間が予約受付時間となります。
通信販売の場合、送料・手数料として500円別途頂きますが、その代わりに天狼院書店でご利用頂ける「コーヒーチケット(360円相当)」をおつけしますので、店舗に来る際に、ぜひ、天狼院でご利用頂ければと思います。
通信販売分は、発売日より、予約順に順次発送致します。

《一般先行予約》*雑誌『READING LIFE創刊号』つき
雑誌『READING LIFE2017夏号』2,000円+税




《通販先行予約》*雑誌『READING LIFE創刊号』つき
雑誌『READING LIFE2017夏号』2,000円+税
送料・手数料 500円(*360円相当コーヒーチケットつき)
発売日から予約順の発送




 

▽6/17(土)19:30〜 雑誌『READING LIFE』2017夏号、発売記念パーティを開催します!
どなた様も大歓迎!ここでしか聴けない雑誌の見どころ・制作の裏話も聴けますよ。《お食事付き/フリードリンクも選べます》

【東京・福岡・京都 6/17(土)】雑誌『READING LIFE』2017夏号、発売記念パーティ!どなた様も大歓迎!ここでしか聴けない雑誌の見どころ・制作の裏話も!《お食事付き/フリードリンクも選べます》《雑誌『READING LIFE2017夏号』予約受付中!》

 

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