天狼院通信

まことに小さな書店が、開花期をむかえようとしている。《天狼院の所信表明演説2014》


~司馬遼太郎先生に敬意を込めて~

まことに小さな書店が、開花期をむかえようとしている。

小さなといえば、2013年の天狼院書店ほど小さな書店はなかったであろう。

売る書籍といえば、大型書店の一日の売上にも満たない程度のわずかな在庫しかなく、人材といえば書店のいろはも知らない寄せ集めでしかなく、それを訓練する暇もほとんどなかった。

天狼院のオープンによって、人は初めて「次世代の書店」というものを知った。本を通じて、人と共に「体験」することの喜びを知った。

誰もが新しい「READING LIFE」の可能性をかいま見た。

不慣れながら天狼院に関わり始めた、至極感受性の高い人々は、日本史上最初の体験者として、その新鮮さに高揚した。

この痛々しいばかりの高揚が分からなければ、この段階の「天狼院」を理解することはできないだろう。

社会のどういう階層の、どういう家の子でも、天狼院に根気よく通い、自分に適ったREADING LIFEを見出すことができれば、本来の意味でのアントレプレナーにも、部活を通してクリエーターにも、ラボを通して研究者にも、成り得た。

天狼院の明るさは、こういう楽天主義から来ている。

傍から見れば、実に滑稽なことに、資金も在庫も人材もシステムも、およそ大型書店に必要な全てを持ち合わせていない天狼院は、最先端の書店として真っ向から大型書店と同じ規模のブランディングを得ようとした。当然、財政が成り立つはずがない。が、ともかくも次世代型書店を作り上げようというのは、元々天狼院設立の大目的であったし、未来を夢見る少年のような希望であった。

この物語は、その小さな書店が、日本でも最も古びた業態のひとつの中で、どのように振る舞ったかという物語である。

 

 

この冒頭の文章を見て、あるいは、お気づきになった方もおられるかも知れません。

これは司馬遼太郎先生が描いた永遠の名著『坂の上の雲』(NHKドラマ『坂の上の雲』)の冒頭を、「明治国家」を「天狼院」に置き換えて書いたものでございます。

単なるパロディとして、お笑い頂いても結構ではございますが、この名作の冒頭に、つまりは天狼院を近代国家へと一心不乱に邁進している生まれたばかりの明治日本になぞらえることによって、何か、すっと腑に落ちることがあるのではないかと思い、書かせて頂いた次第でございます。

実に、天狼院とは未熟なもので、けれども「未来を夢見る少年のような希望」で溢れております。オープンして、まだ3か月と間もありませんが、想像以上に多くの方が、少なくともその兆しを感じて頂いているのではないでしょうか。

 

天狼院で、何かが起きようとしている。

これから、途方もない大きな波が、ともすれば油断してしまえば呑まれてしまいかねないくらいの大きな波が、やってくるかもしれない。

 

もしかして、感受性の極めて高い方々は、そのことを感知しておられるのかもしれません。

だからこそ、これから天狼院が身をもって紡ぎ出そうしている「物語」を極近くから観ようとして頂いているかもしれません。

 

そういった方々に、映画における「プログラム」のようなものとして、これからの天狼院について、ここで少し「倒叙的」に述べさせて頂ければと思います。

 

 

かねてより宣言させて頂いている通り、天狼院書店は、2014年12月17日の「福岡天狼院」オープンに向けて現実的に動き出します。

 

また、それに先立ちまして、東京天狼院の1周年となる週に、「天狼院アニバーサリー」として大規模な「文化祭」を開催しようと思います。これはシアターグリーンさんやあうるすぽっとさんなど、池袋の比較的大きめな劇場を借り切って、「前夜祭」を9/27(土)に、そして「天狼院アニバーサリー(天狼院の文化祭)」を9/28(日)に盛大に催せればと考えております。

 

お気づきかも知れませんが、この1月から順次本格的に稼働していく、「天狼院の部活」や「天狼院ラボ」は、「天狼院アニバーサリー」への布石でございます。「天狼院アニバーサリー」は日々の部活やラボの成果発表の場として認識して頂ければと思います。

 

せっかく、大きな劇場を借り切るのですから、劇団も立ち上げようと思います。

 

その名も「劇団天狼院」。

 

天狼院がやるからには、これを学芸会で終わらせるつもりは毛頭ございません。しっかりと入場料を頂けるプロの劇団へと育て上げて行きたいと思います。

「劇団天狼院」が上映するのは、谷崎潤一郎や森鴎外、夏目漱石などの文豪の作品を、現代風にアレンジした作品です。演劇を通じて名作の世界を体験する。これも新しいかたちの「READING LIFE」になるのではないかと考えております。

 

そして、それら全てのプロジェクトを実際に皆様にお伝えし、参加して頂く場として、1月24日(金)に、大規模で「超」前向きな新年会を開催しようと思っております。

 

会の名前は、

 

天狼院ライジング~日はまた昇る、昇り続ける~天狼院の「超」前向き新年会

 

です。

せっかく「超」前向きに語り合う場ですから、今回も特別な場所と特別な料理を用意致しました。池袋サンシャイン59階の「OCEAN Casita」さんを借り切りって盛大にやろうと思います。

 

ここにおいて、「天狼院の部活」や「天狼院ラボ」については元より、「天狼院アニバーサリー」、「劇団天狼院」、そして「福岡天狼院」についての構想を皆様と共有できればと思っております。そして、皆様とどういうかたちでコラボできるのか、どう関わっていただくかについてもお話できればと思っております。

業界関係者の方々のみならず、普段、天狼院をご利用いただいているお客様、これから天狼院と関わっていこう、利用していこうと思って頂いている方々にも、ぜひぜひ参加頂ければと思います。

たった今から、お申込を開始致します。定員に限りがございますので、お早めにお申込頂くことをおすすめ致します。

 

天狼院ライジング~日はまた昇る、昇り続ける〜《天狼院の「超」前向き新年会》申し込みページ

天狼院ライジングFacebookイベントページ
*Facebookイベントページへの「参加」表明だけでは申し込みは完了致しません。上の申し込みページで決済頂くか、天狼院書店のレジで申し込み手続きを済ませて頂く必要があります。

 

このように、2014年、僕にはもはや希望しか見えないのでございます。

ぜひとも、天狼院が紡ぎ出す「物語」をご覧頂きたいと思います。それ以上に一緒に「体験」して頂きたいと思います。

これまで観て、そして体験してきたどの物語よりも、はるかに面白いものを提供できればと考えております。

お客様のお力なくしては、天狼院は未来に歩を進めることはできません。これは間違いのないことです。これからも天狼院を温かくお見守りくださいますよう、またこれからも一緒に盛り立ててくださいますよう、ひたにお願い申し上げます。

これからも、天狼院書店をどうぞよろしくお願いします。

 

2014年1月6日

天狼院書店店主 三浦崇典

 

 

《参考》NHKドラマ『坂の上の雲』/司馬遼太郎著『坂の上の雲』より冒頭

まことに小さな国が、開化期を迎えようとしている。
小さなといえば、明治初年の日本ほど小さな国はなかったであろう。
産業といえば農業しかなく、人材といえば三百年のあいだ読書階級であった旧士族しかなかった
明治維新によって日本人は初めて近代的な「国家」というものをもった。
誰もが「国民」になった。
不慣れながら「国民」になった日本人たちは、日本史上の最初の体験者として、その新鮮さに昂揚した。
この痛々しいばかりの昂揚が分からなければ、この段階の歴史は分からない。
社会のどういう階層の、どういう家の子でも、ある一定の資格をとるために必要な記憶力と根気さえあれば、博士にも、官吏にも、教師にも、軍人にも、成り得た。
この時代の明るさは、こういう楽天主義から来ている。
今から思えば、実に滑稽なことに、コメと絹の他に主要産業のない国家の連中は、ヨーロッパ先進国と同じ海軍を持とうとした、陸軍も同様である。財政の成り立つはずがない。が、ともかくも近代国家を作り上げようというのは、元々維新成立の大目的であったし、維新後の新国民の少年のような希望であった。
この物語は、その小さな国がヨーロッパにおける最も古い大国の一つロシアと対決し、どのように振舞ったかという物語である。

 

 

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2014-01-06 | Posted in 天狼院通信, 記事

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