「京都天狼院」物語

僕が世界都市「京都」に天狼院を創った本当の理由《天狼院通信》


天狼院書店店主の三浦でございます。

天狼院が京都の職人さんたちとともに総力を結集して創り上げた天狼院書店「京都天狼院」が、1月27日にグランド・オープンいたしました。

京都で店舗を運営して3日ではありますが、ともかく、京都の街が素晴らしい。

凄まじく艶やかな貴婦人が、深夜ドレス姿で突然現れ、「ここ、本屋になるの?」と聞くや風のように去っていき、後日、オープン後に来店すると、僕が超絶おすすめしている浅田次郎さんの『天子蒙塵』を買っていかれる。
聞くと、「祇園」に高級クラブを持っているオーナーさんだと言う。その読書量たるや半端ない。しかも、そのディープ・リーディングっぷりは、出版に携わる僕らでも、もしかして、太刀打ちできないほどに素晴らしい。
改めて、「祇園」という街の奥深さを感じた瞬間でした。

また、京都天狼院を作って頂いた職人集団のご紹介で、京都天狼院に、祇園の大旦那が来店されました。
ちょうど、京都天狼院のオープン日とその方が持つ物件のオープン日が一緒で、見に来たと言う。
「どこを持っているんですか?」と聞くと、「そこの通りを全部だ」とその方は答える。
もはや、意味がわからない。
通りに面する6軒すべてをその方は所有しているという。まさに大旦那。
最近、僕は様々な不動産のオーナーさんや大手のディベロッパーさんとも話をしたり、仕事をさせてもらったりする機会があるのですが、その大旦那さんの静かな存在感は、一際、感じるところがありました。

あるいは、京都を纏っている、と言ってもいいのかもしれない。

天狼院は今の場所に決める前に、京都中の様々な町家物件を見させてもらいました。
その中の一人のオーナーさんが、天狼院にとても興味を持たれ、何度か、インターネット上でやりとりしていました。
今回は、今の物件に決めさせて頂いたにも関わらず、その方は、常に天狼院のオープンを楽しみにして下さって、実際に自転車で来店される。御所の真ん前の立地に大きな町家を持っていて、先代までは漆塗り職人の家系だったという。やんごとなき方々の牛車などの漆塗りを手がける、いわゆる御用達だった家柄で、何代も前から、そこにいると言います。
「それはすごいですね、本流の京都の方ですね」というと、謙遜しているわけでもなく、本当に普通の調子で、

「いやいや、うちなんて。周りには室町からの人とか普通にいますから。祇園になんて多くいるでしょう」

と仰る。

オープニング・パーティーには、西陣織の職人さんの家系の方がいらっしゃり、ゆくゆくは、事業を継ぐのだと言います。
西陣織という街は、全体が職人さんたちの街で、様々な展開をしていきたいと言う眼差しは、未来を見ていて素晴らしい。
また、普通の女子大生だと思っていた子は、京都で名門の店のご息女で、京都中に店を何軒もあるという。
僕らは知らないので、またまた、と思っていたら、四条通りや三条通りを歩いていると、その子の家の店が何軒も本当にある。

「あのさ、あのシャッターに書かれている人の絵って、お父さんだよね?」

と聞くと、

「ああ、そうです。恥ずかしいんですけどね」

と笑う。

舞妓さんは普通に往来を行き来し、休みのときには目を輝かせて、天狼院にも入ってくる。

そういった諸々を目にすると、京都に来たんだと実感するのです。

京都天狼院は、天狼院書店「東京天狼院」オープン当初から、天狼院の基幹事業として構想していたプロジェクトです。

今現在、おかげさまで、天狼院書店は、東京天狼院、福岡天狼院、スタジオ天狼院と全国の多くのお客様にご愛顧いただいておりますが、京都天狼院を作ったのは、マーケティング的に、関西という市場にチャレンジしたいという思惑がメインではありません。

天狼院はお客様に創り上げていただくスタイルなので、京都天狼院も、京都のお客様に育てられ、成長していくだろうと思います。
経営者として無責任ながら、京都のお客様の素晴らしさを実感している身としましては、京都の皆様に創り上げて行ってもらおうと半ば開き直っている次第です。そのほうが、いいものができるし、何より、京都の方々の居場所にしてもらえるだろうと考えています。

実際に、そうした期待をしてもらっていることを、連日訪れる京都の皆様から感じていますので、僕はその点は心配していません。
つまり、マーケティング的なビジネスとしての側面を、正直いってしまえば僕は、京都天狼院に求めていないのです。

それなので、スタッフたちからの再三再四に渡る、カフェメニューの値上げ要請も、尽く却下しています。
たとえば、原価と工数を考えると、280円が相当というメニューを、僕は140円で出すように指示しています。
具体的にいうと、2個で280円にするように指示しました。
また、コーヒーに関しましても、こだわりにこだわり抜いた豆とマシーンを使っていて、原価的には決して安くはありません。
投入した機械の代金でいえば、東京と福岡の4倍近い費用がかかっているでしょう。
しかし、僕は、東京と福岡よりも安い料金で提供するように指示しました。

もちろん、お客様はクオリティーと安さのアンバランスに驚くわけですが、スタッフは幾度となく、

「お客様も、安いと仰っています」

と、僕に言うのですが、僕は、

「それでいいじゃないか」

と、答えます。

なぜなら、僕は京都天狼院を、京都の皆様と京都に来る皆様の心地のよい居場所にしたいと考えているからです。
赤字にならないギリギリのラインであれば、多くのお客様に対して、多くのメリットを提供していることになるので、僕はそれでいいと考えています。

では、儲けについては、それほど重視をしていないのだとすれば、僕は何を目的に京都天狼院を作ったのでしょうか?

その答えは、明白です。

僕は、京都という街に、学びに参りました。
京都という街で、学ぶ拠点として、京都天狼院を創りました。

たとえば、万が一、採算の面で、京都天狼院が合わなくなったとしても、僕はあらゆる手段をこうじて、あるいは、自らの著作の印税をすべてつぎ込んででも、京都天狼院を維持するでしょう。

学ぶには、費用がかかります。
世界に憧れられる都市である「京都」の方々から多くを学べるのであれば、それも安いと考えています。

京都天狼院を作っていただいた職人さんたちにも、庭師の先生にも、祇園の高級クラブのオーナーにも、祇園の大旦那にも、漆塗り職人の家系の方にも、西陣織の方にも、そして、学生の皆さんにも、僕は学びたいと思っています。

多くを語らう場として、京都天狼院に、僕は多くの時間を費やすことでしょう。
そして、他の店舗ではあまりもう店に立つことはなくなりましたが、京都では、率先して店頭に立つことでしょう。

そして、京都の皆様や、京都を訪れる皆様のご要望を聞き、必要とされる本を取り揃え、イベントを開催し、京都の皆様の居場所にしてもらう。そうして、居場所としての京都天狼院が定着し、潤うのであれば、京都で多くを費やして、それも街に還元してしまおうと思っています。

それが、今の京都天狼院にできることなのではないかと僕は考えております。

そして、そうすることによって、多くのことを学べるようになると思っています。
そうすることによって、多くを学ぶ仲間ができるだろうと考えております。

今なぜ、京都で学びたいかと言えば、その理由も明白です。

京都の人が何気ない日常だと考えていることが、京都以外の人にとっては、とても価値のあることが多いからです。
それは、世界に通用することだろうと思います。

たとえば、天狼院書店の構想は、仁和寺の縁側で庭を見ているときに着想しました。
東京でも、郷里の東北でもなく、答えは、京都にありました。

無数の総本山があり、あまたの職人さんたち、花街の方々があたり前のように暮らしている「京都」という街から多くを学び取ることにとって、僕はようやく世界が見えてくるのだろうと確信的に思っています。

不躾で、何ら、作法もわかりませんが、包み隠すところなく、僕ら天狼院はこういった心持ちで京都天狼院を開店いたしました。

これから、末永く、生涯に渡って学ばせていただきたいと思っていますので、京都の皆様、改めてどうぞよろしくお願いします。

また、無作法がございましたら、遠慮なく、お叱りください。

改めるべきは、すぐに、改めたいと思います。

その上で、天狼院流を貫かせていただこうと考えております。

どうぞよろしくお願いします。

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5 TEL 075-708-3930 FAX 075-708-3931 kyotomap

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TEL:03-6914-3618(東京天狼院)

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