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リーディング・ハイ

【頑張っているのに、どうしてうまくいかないの!】ようやく成就した初恋が、あっけなく散った理由《リーディング・ハイ》


kawaru

 

記事:おはな(リーディング&ライティング講座)

 

 

「ごめん、やっぱり友達に戻れないかな。友達の頃のほうが、楽しかった」

 

わたしの初めての両思いは、あっけなく散っていった。

その後、彼が望んだように、2人は友達に戻ることはなかったし、二度と会うこともなかった。

3年も片思いをしていたのに、なぜもっと頑張れなかったのだろう。

もしもあの時、もしもあの時……。

 

毎晩ひとり泣き続けていた当時の自分に、この本を贈り、声をかけてあげたい。

 

「残念だったね。でもあなた、頑張り方を間違えていたんだよ」と。

 

 

****

 

昔から、何かに行き詰まると、ふらりと本屋さんに入る。

特に目的はなくても、背表紙のタイトルを眺めているだけで、問題を解決するヒントが浮かんでくる気がする。

 

その日も同じだった。

なんとなく仕事でうまくいかないことがあり、モヤモヤしていたから、お昼休憩中に本屋さんに入った。

気の向くままタイトルだけを眺め、自分の心に刺激を与えていく。

 

すると、一冊のタイトルが目に留まる。

 

 

「なぜ、あなたは変われないのか?」

 

そのストレートなタイトルに、胸がズキッと痛む。

 

「ごめんなさい。こんなわたしでごめんなさい」

思わず心の中でつぶやき、本を手にとり、パラパラとページをめくっていく。

恐らくよくある自己啓発本だろうと思いながらも、心のザワザワが止まらない。

すると、ページを進める度に、心のざわめきは、期待へと変わっていく。

――もしかしたら、この本すごいかもしれない

 

「1冊読み終えるまで新しい本は買わない」

最近自分に課したばかりのルールを無視し、わたしはすぐにレジへと向かった。

――これはすごい、これはすごいぞ!!

 

どんどん膨らむ期待を胸に、猛烈スピードで仕事を終わらせ、その日は定時で帰宅。

家に着くと、あっという間に1冊読み切った。

その時、わたしの期待は確信へと変わっていった。

 

「この本で、ようやく自分を変えられる! だめな自分を脱出できるぞ!」

 

早速わたしは、本の指示通りに行動していく。

この本は、あくまでも読み終わってからがスタート。

なぜなら、人が変われない理由、心の奥底に抱えている問題は人それぞれだから。

自分が何に躓き、どんなことに縛られているのか。

それを1つずつ自分で紐解いていかなければならない。

 

まずはお気に入りのノートを引っ張り出し、自分の感情について1日5分、メモをしていく。

 

「満員電車の隣のお姉さんが、右側にスペースが空いているのに、詰めてくれなかった!

一歩くらい動いてくれたっていいじゃん! 意地悪!」 イライラ60%

 

「今度の朝ドラにあの大好きな俳優さんが出演!! 毎日見れる~」喜び100%

 

「お客様にお渡ししたプリントにミスがあったと指摘される。あの時、突発的なトラブルに対応していて、チェックを十分にしないうちに出したんだった……」自己嫌悪90%

 

「なんでみんな洗い物を流しに置いて帰るの? 自分のことは自分でしなさいよ! ペットボトルもちゃんと自分で捨ててよ!!」イライラ70%

 

そうやって書きながら、今度はその感情の奥底に眠っている思い込みを引き出していく。

本の中の見本を見ながら、自分なりに書いてみる。

 

「他人を思いやれない人は最低だ」

「努力をしている人は美しい」

「いつどんな時でも、仕事は完璧でなければならない」

 

――あれ?

 

再び心がザワザワしてくる。

どうしてだろう。

わたしは、ダメ人間で怠け者な自分から抜け出したいと思っていた。

時間を無駄にしないで、いつも笑顔で前向きに頑張る人。そんな人になりたかった。

 

それなのに、実際に自分の感情を書き出し、その奥底に眠る思い込みを引き出していくと、なんだか厳しいものばかりが飛び出してくる。

とてもじゃないが、上から目線過ぎてダメ人間には似つかわしくないものばかりだ。

 

――これって、完璧主義の人が言うことじゃん。

 

そう思った瞬間に、友人や会社の先輩に言われた言葉が次々と蘇ってくる。

 

「自分にも他人にも厳しすぎるんだよ」

「そんなに頑張りすぎちゃ、自分が苦しくなっちゃうよ」

「頑張れることも能力の一つだよ。それを他人に求めちゃだめだよ」

 

何かに悩む度に、そう言われた。

でも、正直、どの言葉も響かなかった。

それは、わたしに対して言っている言葉だとは思えなかったからだ。

だって、物事がうまくいかないのは、わたしがダメ人間だから。

才能も無いし、美人じゃないし、優しくもないし、それなのに怠け者だから、人に好かれるわけもないし、何かが上手くいくわけもない。

変わらなきゃだめなんだよ。もっと頑張らなきゃ。

なのにわたしはどうして頑張れないの! もっとちゃんとして!!

そう思っていた。そう思い悩んで、いつも穏やかにいられなかった。

 

でも、それは勘違いだったのだ。

本当の原因は、わたしがダメな怠け者だからではなく、別なところにあった。

 

「完璧でなければ価値が無い」

 

実はその思い込みに、考えも行動も長年支配されていたのだ。

だからこそ、完璧ではない自分には価値が無く、そんな自分はダメ人間だと自己嫌悪に陥り、いつも落ち込んでいたのだ。

 

「あと10点どうした?」

それは、こどもの頃のわたしに対する父の口癖だった。

「お父さん、テストで90点だったよ!」と喜んで電話をかけると、

トーンを変えること無く、いつも父はそう言った。

 

「あと10点はどうした。何を間違えたんだ。どうして満点を取れなかったんだ」

「でもね、クラスで3番目によかったんだよ!」そう言っても、父のトーンは変わらない。

「前の2人は何点だ。そいつらは正解できたんだろ。どうして一番になれなかった」

 

わたしは父に褒められたい一心で、必死に勉強をした。

次こそは、次こそは! そう思って毎日がむしゃらに教科書を読み、問題を解き続けた。

 

「お父さん、95点だよ!」「だから、あと5点はどうした」

「お父さん、今日は2番だったよ!」「もう一人いるだろ」

 

頑張っても頑張っても、父の望む満点は取れなかった。

 

ある時、ようやく努力が実り、わたしはついに父に褒められると喜び勇んで電話をかけた。

「お父さん! 98点だったけど、クラスで一番だったよ」

「その2点はどうして取れなかったんだ。学年で満点の奴はいなかったのか」

 

いつの間にかわたしは父に報告をしなくなった。

「テストはどうした?」と聞かれても、

「うるさいな、どうせできないんだよ、わたしは」そう答えるようになっていった。

どんなに頑張っても、上には上がいた。

必死で努力をしても、わたしは父の望む理想の娘には、なれなかった。

 

そうやって、「完璧でなければ価値が無い」という思い込みは、わたしの心の奥底に、深く深く刻まれていった。

 

わたしは、今ようやくそのことに気付くことができた。

実際に自分がイライラすることや落ち込むことを書き出していくことで、

その裏に潜んでいた「思い込み」の存在を知ることができた。

 

いつも物事がうまくいかないのは、わたしがダメ人間だからじゃない。

完璧を求めすぎていたからだった。

結果を出せない過程には意味が無い。結果が出せない努力は時間の無駄。

完璧でない人には価値が無い。

だから、自分は成功することもないし、誰かに愛されることもない。仕方がないんだ。

そう決めつけていた。

わたしに足りない物を持っている人に憧れ、比較し、自己嫌悪に陥る。

努力しない人を見ると、人生を無駄にしているなと蔑んでみてしまう。

それなのに、その人が幸せそうにしていると、腹が立って仕方がない。

どうして。わたしはこんなに頑張ってもうまくいかないのに、どうしてあんな楽をして幸せになれるの! そんなのズルだよ! そう、思っていた。

 

わたしは呆然としながらも、次の問いを自分に投げかけた。

「父は、わたしをダメなやつ、価値の無い人間だと思っていたのだろうか」

それは、即答で「NO」だ。

父は厳しかったが、いつも誰よりもわたしのことを思ってくれていた。

エレクトーンのコンクールの結果発表で、予選突破のメンバーにわたしの名前が呼ばれた時、観客席に座っていた父は、誰よりも喜んでくれた。母が人差し指を口に当てて「シー」っと恥ずかしそうに言うくらい、誰よりも大きな声で「ヤッターー!」と叫んでいた。

 

母が言うには、父はわたしのことを外で話す時には、親バカが過ぎるほど褒めちぎるらしい。「アイツは耳が良いから英語ができる」「アイツは小さい頃からなんでも一人でできるんだ」それは、わたしが30の年を過ぎても変わらない。父は誰よりもわたしのことを信じ、応援してくれている。

 

だったら、なぜわたしは「完璧でなければ価値が無い」という、思い込みにしがみついてきたのか。失敗しても、一番になれなくても、わたしは父にとって自慢の娘だったのだ。

 

それなのに、そんな思い込みのせいで常に自己嫌悪に悩まされ、他人にまで完璧を強要し、嫌な思いをさせてしまった。

 

ただ気付けばよかったんだ。

「それは思い込みだよ」って。向き合う問題点がまるで違っていたのだ。

足りない点ばかり数え、たどりつけない頂点に立とうともがいていた。

そんなことはしなくても、よかった。

頑張ることで、十分に得られる成果もあった。

常に努力をしていなくたって、のんびり穏やかに過ごせることが幸せなことだってあった。

何よりわたしは、そもそもが「デキる人間」じゃない。

何をするにも人より時間がかかるし、ドジばっかりしてしまう。

飛び箱も、前転も鉄棒も、いつまでたってもできなくて、みんなを体育座りで待たせていた。

つい先日なんて、茹で上がったパスタをザルに空けようとして、ザルごとひっくり返してしまい、茹でたてのパスタが見事なスピードで排水口へと消えていった。

 

「あー、なんで自分はみんなみたいにできないんだろう」

「はぁ、どうして自分は器用にそつなくこなすことができないんだろう」

いつもひとり、溜息をついていた。

 

それでも、そんなわたしが頑張ることで誰かに勇気を与えられることもあったし、わたしの可笑しな失敗で、誰かが笑ってくれて、楽しい思い出になることもあった。

何もすべてがダメなわけじゃない。

何かが足りないなら足りないなりに、その部分を楽しさや美しさで埋めてきた。

それでよかったんだ。そのままで、よかったんだ。

 

そう思っていると、ふと初恋の記憶が蘇り、一人思い出し笑いをしてしまった。

わたしが恋した彼は、野球のイチロー選手みたいに、真面目でカッコいい努力家だった。

器用でも美人でもないわたしは、いつも彼を笑わせようと必死だった。

面白いと思ってほしい。一緒にいたいと思ってほしい。その一心で、彼を笑わせ続けた。

そして、3年間の片思いが実り、中学卒業間近の冬に、ついに両思いになることができた。

 

だけど、恋人同士になってからは、一緒に笑い合うこともなく、手を握ることもなく、夢見た両思いは、あっけなく1ヶ月足らずで終わってしまった。

 

「ごめん、やっぱり友達に戻れないかな。友達の頃のほうが、楽しかった」

 

体育館裏でそう言って、彼は去って行った。

わたしは信じられなくって、その場にいた野良猫を撫でながら、しばらくしゃがみこんでいた。

 

どうして、どうして。頑張ったのに。いっぱい我慢もしたのに。

ようやく、ようやく両思いになれたのに……。

悔しさと悲しさでいっぱいだった。

 

でも、20年近くたった今ならわかる。

あの頃のわたしよ、あなたは「頑張り方」を完全に間違っていたんだよ。

 

あの頃すでに「完璧でなければ価値が無い」と思い込んでいたわたしは、完璧じゃないわたしを彼が本気で好きになってくれるわけがない、と思っていた。

だから、自分のワガママがばれないように、ダメなところを見つけられないように、彼に減点されないように、必死だった。

「近くで見たらやっぱりブスだなー」そう思われないように、どうしたらいいか考え尽くした。

その結果、頑張って、出来るだけ彼と話さないようにしたし、頑張ってなるべく彼の視界に入らないようにした。

彼が言うことには「そうだね、そう思うよ」と相槌だけ打って自分の本音を言わないようにしたし、できるだけ彼の2~3歩後ろを歩いて、わたしの姿が見えないようにしていた。

 

思い出しただけで笑えてくる。

あの頃のわたしよ、なぜそんなことに必死になっていたんだ。

せっかく一緒にいられたんだから、いろんなことを話せば、2人の好きなことをいっぱい発見できたり、一緒に笑って「あーこの子といると楽しいな」と思ってもらうことだって、できたかもしれない。

容姿に自信がないなら、そのゲジゲジ眉毛をどうにかしたり、落ち込んで布団にくるまってないで、可愛くなれる努力の一つでもしたらよかったじゃないか。

 

そもそも、いつも面白いことを言い続けるわたしを彼は選んでくれたのだ。

付き合い始めた瞬間に、何もしゃべらなくなり、視界からも消えてしまったら、そりゃ彼だって戸惑うはずだ。「あれ、友達の頃の方が楽しかったな」そう思うのは当然のことだった。

 

 

あー、もしもあの頃の自分に会うことができたなら、この本を渡して教えてあげたい。

 

「残念だったね。でもあなた、頑張り方を間違えていたんだよ」と。

 

そしたらきっと、生意気盛りのわたしはこう答えてくるはずだ。

「おばさん、気付くの遅いよ!」と。

 

そう。それには今のわたしも反論ができない。

わたしはやっぱり、何をするにも時間がかかる。

見ているポイントがずれているから勘違いも多いし、ドジばっかりしてしまう。

32歳になって、ようやく自分が完璧主義だったということに、気が付いたのだ。

だけど、だからこそ学べたこともたくさんあったし、いっぱい悩んだからこそ、今は人と共感できることもたくさんある。

それでよかった。この人生に後悔はない。

 

でも、せっかく自分を縛っていた「思い込み」の正体を知ることができたんだ。

これからは、もうちょっとのんびりと景色を楽しめる人になりたい。

ゆるやかに穏やかに。

「大丈夫、わたしにもできたから」

そうやって、誰かと一緒に励まし合える、まるい人間になっていきたい。

「またやっちゃったよ」と笑いながら、前を向いて歩いていきたい。

 

残念ながら、初めての失恋に泣き尽くしていた当時のわたしに、この本を渡すことはできない。

だから、よければ、あなたに読んでもらいたい。

 

変わりたいのに変われない。

そんな自分を責め続けている頑張り屋さんのあなた。

責めなくても諦めなくても大丈夫。

あなたを苦しめている心の奥底に眠る思い込みを、この本を読んで見つけてみませんか?

大丈夫、わたしにも見つけることができたから。

 

 

*『なぜ、あなたは変われないのか?』古川武士著、2016年、株式会社かんき出版発行。

 

 
 

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2016-08-22 | Posted in リーディング・ハイ, 記事

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