【無駄の美学】「授業とは全く関係ないんだけど」と前置きされるとなぜ聞き耳を立ててしまうのか《まみこ手帳》
「あ、わかった!」
閉店後の天狼院書店。
シフトに入っていたわたしが
せっせと締め作業に勤しんでいると、
テーブルに肘をついて何か考え事をしていた三浦さんが
ふと思いついたように口を開いた。
「まみこには、起業をさせればいいんた!」
……。
いやいや。
一体何がわかったんだ……。
「え、わたし普通に既存の企業に入りたいですよ」
「あ、じゃあさ!就活して、内定とった後に起業すればいい。で、引き渡せばいいんだ!」
「会社つくっといて、つくったらつくったで人にあげちゃうってことですか?なんと不可解な・・・」
「そう! 『卒業旅行の代わりに、起業しちゃいました』みたいな。完全に頭おかしいじゃん! 絶対面白い!」
やばい。何を言っとるんだ。
不毛も不毛。
三浦さんだけに(あっオフレコで)
「いや、確かにインパクトはありますけどね!(笑) でも経営学部だからって、別にわたし起業したいとか思ったことないんですよー」
「えー、絶対面白いのにー」
駄々をこねる店主、三浦さん。
相変わらず少年のような大人である。
今のところ起業する気なんぞ全くないけれど、確かに面白い、とは思う。
会社をつくるだけつくって、いざ事業に乗り出そう!というときに「はい、あとはよろしく〜」と他人に引き渡す。
全くもってわけわからん。
無駄の極みである。
でも天狼院からそんなど阿呆な女子大生が輩出されれば、
絶対話題になるし、伝説になるだろう。それは間違いない。
なぜって、そんなの簡単だ。
無駄だからだ。
大学生という生き物は基本的に小賢しい。
授業中、机の上に必要なものだけを並べ、
教授の話に全神経を集中させ、
絶えずノートをとりつづける学生が一体どれだけいるだろうか。
たいていはノートパソコンを開き
他の授業の課題をやったりネットサーフィンしたり
LINEで適当にスタンプを飛ばしながら時間をつぶして、
テスト前に友達同士でスカスカのノートを繋ぎ合わせて情報共有する。
それで大体は乗り切れるようになっている。
そんな小賢しい、我ら現代の大学生が、
揃ってピタリと動きを止める瞬間がある。
「あ、ちなみにこれは授業に全く関係ないんだけど、・・・・・・」
教授の趣向によって話がいらんところへ広がってしまったときにしばしば聞くフレーズだ。
これから話すことはテストに出ないという宣言である。
言ってしまえば、「無駄だよ」ということを親切に教えてくれているのだ。
しかし、これが結構あなどれない。
それまでは講義を「心地よいノイズ」程度に聞き流して内職をしていたにもかかわららず、この前置きをされた途端、自然と耳がそちらに傾いてしまうのだ。
いらない情報だとわかっているのに、
奥さんに尻にしかれているだとか、旅行へ行っただとか、
そんなどうでもいい話がぐんぐん頭に入ってくる。
内職に戻れなくなる。
悔しいことに、講義に集中せざるを得なくなってしまう。
もう仕方がないので、ノートの端にその雑談をメモし始めたりなんかしちゃう。
なんてこったい。
おそらくこういうことなのだと思う。
わたしたちは結局、無駄が大好きなのだ。
無駄だとわかっていることほど興味をひかれてしまう。
それこそ少年のように、わくわくしてしまう。
まともな人間なら誰もやったことがないはずだ、自分が第一人者に違いない、という優越感。
「あんた馬鹿なの?」(イメージはきつめ美人のお姉さん)と蔑まれるのではないかという背徳感。
そういうドキドキが胸を騒がせるのだ。
インパクトと話題性のためだけに起業する。
テストに出ない雑談を一字一句逃さずノートテイクする。
全くもって無駄だ。しょうもない。
しょうもないけど、わくわくする。
ロマンを感じてしまう。
わたしが愛して止まない作家がいる。
『四畳半神話大系』などの著者、森見登美彦さんだ。
思えば、彼の小説に登場するキャラクターはほとんど無駄なことしかしていない。
悪友の自転車を桃色に染め上げる。
自分には恋人がいることを証明するために日々、小難しい数式と睨み合う。
などなど。
なんというかもう、無駄の極みだ。
非常にくだらない。
たぶん、読んでも全く実益にならない。
だけどやたらとわくわくして、惹き込まれるのだ。
いつもキラキラと目を輝かせて
本当に充実している人、というのはもしかしたら、
周りから「くだらない」「無駄だ」と言われるようなことに
本気で魂を燃やしている人なのかもしれない。
そういう人こそが30年後、50年後、あるいは100年後にまで名を残して、伝説になっているのかもしれない。
当たり前だけど、”無駄じゃないこと”は大事だ。
例えば、目標を立てるだとか、計画を立てるだとか、合理的に管理することは必要だ。
でもそれは本当は”無駄に見えること”を本気で実現させるためにこそ存在しているのかもしれない。
くだらないかもしれない、でもわくわくさせるような素敵なことを実現させるために。
天狼院のスタッフにはクリエイティブな人たちが多い。
新しいものをどんどん生み出す才能が集まっている。
わたしはちょっと前まで、悩んでいた。
わたしは彼女たちに比べて、劣っているのではないか。
わたしは泉のようにポンポンとアイディアが出てくるタイプではない。
机の上に何度も何度もペンを走らせて、やっと「それなり」の企画を絞り出す。
だから、起業なんて発想もまず出てこなかったのだ。
自分でゼロから新しいものを生み出せない人間はここでは必要とされないのではないか。それを少し恐れていた。
そんなときだった。
「まみこ。そろそろやるよ、天狼院の組織改革」
ふいに三浦さんに言われた。
あ、と閃いた。
そうか。
必ずしも、ゼロから生み出すのでなくてもいいのか。
今ある資源の隙間を埋めたり潤滑油のようにうまく物事を回す手助けをしたりといったマネジメント。
それなら。
もしかしたらわたしも役に立てるかもしれない。
「天狼院は基盤ができてきた。これからは、そういう人材も必要になってくる。まみこ、叩き込むからな」
天狼院は新たなステージに移行してきている。わたしはそこで”無駄じゃない”ことの方を固めていく役割を担えるのかもしれない。
“無駄に見えること”と“無駄じゃないこと”を意図的に共存させてコントロールできたら、どうなるか。
わかりません。
全くわからないけれど、楽しみです。やってみるしかない。
見守っていただければ、と思います。
あ、ところでこれは、本題には全く関係ないんだけれど、
ぜんっぜん関係ないのだけれど、
テストには、出ないのだけれど、
30日に旅部で江ノ島、行くらしいよ。
締切が迫っている!!
といううわさが、あるとかないとか。
下記のリンクから、飛べるみたい。
いやぁ、楽しみだなー!
本題には全く、関係ないんだけれどねぇ。うん。
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