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チーム天狼院

さあ、『ゲリラ』戦をはじめよう


記事:永井聖司(チーム天狼院)
 
この本は、小説ではない。

それなのに1ページ目から、僕をその空間へと引き込んでくれた。

東京大学、しかも伊藤謝恩ホールなんて、行ったことはない。写真ですら見たことはない、外観すらわからない。中がどんな空間なのか席の配置がどうかなんて、わかるわけがない。

それでも、僕は確かに、その講義が行われている空間の中にいた。大勢の参加者の中のひとりとして、熱心に講義を聞いていた。横を向けば、誰かもわからぬ人の顔が浮かんできそうな感じさえした。

そんな確かな錯覚を、この本は僕に起こさせた。

 
講演をしている瀧本哲史さんの姿、雰囲気、息遣いまで、感じられるようだった。
実際のところ僕は、瀧本さんのことを見た覚えがない。テレビか何か見たことがあるかもしれないけれど、定かではない。この本の中で使用されている写真が、ほとんどすべての、瀧本さんの外見に関するイメージだ。
瀧本さんの本も、これまで読んだこともない。
名前は知っていた。それでも、ちょっと、難しそうな内容だと思って敬遠していた。

そんな、瀧本さんに関する知識をほとんど持ち合わせていない僕が読んでも、確かにハッキリと、瀧本哲史さんの存在を、ハッキリと感じさせてくれる本だった。

 
『時折、魂が込められているんじゃないか、と思える本に出合える場合がある。』

天狼院書店店主の三浦が、Facebookにこの本の感想を書いているのを見ても、全く意味はわからなかった。

社内で1番先にその投稿に反応したのが僕だったので、この本の手配を全店分手配する担当になった。それだけのことだった。
担当なのだから、読まないわけにいかないだろうと、読み始めるキッカケとしては、決して前向きなものではなかった。

それが、どうだ。

読み終えた今、1人でも多くの人にこの本を読んでほしいと、思ってしまっている。

 
本編である、瀧本さんの講演は、もちろん素晴らしい。瀧本さんに関する知識がほとんどない僕が読んでも、経済や歴史や様々な知識が弱い状態で読んだとしても止まることなくぐんぐんと読み進めることが出来る。時折辛口な内容が書かれていても、叱咤激励してくれている瀧本さんの気持ちや感情が透けて見えるようで、イヤな気分になることはない。
力強く、若い世代の背中を押してくれている、瀧本さんの人となりまで表されているような本だと思った。

でも、この本の魅力は、本編だけではない。
それと同じぐらい印象に残る部分がある。

それが、この本の最後、『あとがきにかえて』の部分である。

書いているのは、編集者として、瀧本さんと一緒に仕事をされ、今回の本の元になった、『伝説の東大講義』とまで呼ばれる内容を企画された、星海社新書初代編集長の柿内芳文さんである。

たった5ページとちょっとの内容ではあるけれど、柿内さんの、この本にかける気合や熱や意気込みが、これでもかと込められている。映画一本ぐらいに匹敵しそうな、友情なんて生ぬるい、戦友と呼んでも弱いぐらいに感じる、瀧本さんと柿内さんの、男と男の強い絆。昨年永眠された瀧本さんについて、そしてこの内容について、どうしても伝えたいという意思に、あふれている。

次世代に繋げたいという思いが、これでもかと込められている。

それは、1000年以上の時が経っても残っている仏像を作った、名もなき仏師たちを思わせる。飢饉や天変地異、不安な状況が世の中を覆い尽くしている中、国家鎮護や人々の平和を願って作られた仏像が、奇跡的にも今まで残り、変わらず現代の僕たちを癒やし、救いを与えてくれる。
そのような存在に、この本はなるのではないかと思ってしまう。

本文を読みながら、どうしてこんなにも読みやすく、熱量の込められた本が書けるのだろうと不思議に思ってしまう。それでも、この柿内さんの、『あとがきにかえて』の部分を読むだけで、その謎は一気に解ける。

熱くて熱くて、熱すぎるぐらいの気合と情熱が込められたモノは、間違いなく読者に、伝わるものなのだ。

 
2012年、東京大学伊藤謝恩ホールで行われた、『伝説の東大講義』と言われている講義を1冊にまとめた本、『2020年6月30日にまたここで会おう』。

読み終えた時きっと、多くの人は後悔をするのではないかと思う。どうして8年前のあの時、僕は私はこの場にいなかったのかと。そして同時に、感謝もすると思う。この本を出版してくれて、瀧本さんの意思を伝えてくれてありがとう、と。

瀧本さん、そして柿内さんから渡されたバトンを止めることなく、誰にどのようにこのバトンを回すか、行動として、示していこう。

そのために、天狼院書店では、7月にこの本を『課題本』とした、『課題本読書会』を開催する。

この本を読んだ人には、1人でも多く、是非参加していただきたい。

渡されたバトンに込められた意思を受け止め、『ゲリラ』戦の1つを、ここから始めよう。


7月の前、今月は、京都天狼院発信の、課題本読書会がございます!


《通信限定》【6/21(日)13:00〜】【京都天狼院課題本読書会!〜名作を味わい楽しむ〜課題本:宮沢賢治『銀河鉄道の夜』】《初参加大歓迎》


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