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チーム天狼院

女子力より「主婦力」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:斉藤萌里(チーム天狼院)
 
 
 
すっと横から伸びてくる絆創膏。
前の会社に勤めていたとき。
職場の書類を整理していたときに指を、切ってしまった。
「いたっ」って、気づいたときにはもう遅くて、A4一枚の紙で少しだけ皮膚を引き裂いた。
大事には至らないほどの傷。
けれど、放っておくと小さな傷からジクジクと広がってゆくいやーな痛み。
傷だけ見ると、「そんなに痛い?」と疑いたくなるほどの微量な傷なのに。
どうしてこんなに、痛い?
一度気になり出したら止まらない傷の痛みを思いながら、「紙で指切っちゃったんです」と先輩に伝えたら「え、大丈夫? 絆創膏あげるよ」と渡してくれた。
その先輩は、面倒見が良くて、私が困ってなくても「何か困ってることない?」と常に聞いてくれるような、優しい女の先輩だった。
「ありがとうございます」
絆創膏を持ち歩いているなんて、女子力が高い。
絆創膏だけじゃない。
さらさらの髪も、おしゃれなカフェを知っているところも、いつもいい匂いがするところも、全部ひっくるめて、「女子力が高い」。
 
ハンカチだけじゃなくてポケットティッシュを常備している女子。
絆創膏を常備している女子。
お弁当を持ってくる女子。
流行りのコスメを持っている女子。
 
世間一般的にいうところの「女子力が高い」女子たちを、私はこれまで何人も見てきた。
先輩だけじゃなくて、高校や大学の同級生にもいた。
「美穂ちゃんって、なにしても本当美人」
体育の授業中、体操服姿でダンスを踊る美穂ちゃんは、それだけでクラスの女子たちの注目の的。
体操着姿なんて、最も嫌いな服装だ。
できることなら女子にも男子にもあまりじろじろ見られたくないし、とっとと着替えてしまいたいと思っていた。
美穂ちゃんみたいな人を眩しいと思いつつ、自分はそんな「女子力が高い」女子になれないということも知っていた。
おしゃれをしたいけれど、流行りの髪型もコスメも知らない。
知っていたとしても「自分には似合わないから……」と諦めていることがほとんどで。
脱毛サロンに行ったりネイルサロンに行ったり、まつエクをしたりしたこともあったけれど。
結局はどれも続かない。
私は、憧れていた「女子力が高い女子」にはなれないのだと悟った。
 
今年、結婚して1年になる私は、24歳。同級生のほとんどの人たちの中で、かなりの早婚だった。
そんな私、結婚する前から一人暮らしをしていたので、洗濯も掃除も、まあ人並みにはできると思い込んでいた。
料理だって、上手いとは言えないが、「料理が好き」という気持ちはあったから、結婚しても大丈夫だと信じていた、のだけど。
 
現実はそれほど甘くなかった。
 
掃除、洗濯、料理。
夫婦で二人暮らしを始めてから、すぐにあることに気がつく。
ペースが、合わない。
よく考えれば、いや、よく考えなくても分かることなんだけれど、「いつ洗濯をして、いつ掃除をして、いつご飯を食べたいか」は、人によって全然違う。
 
私は洗濯を朝終わらせたい人間なんだけれど、夫は夜に洗濯をする派だった。
私は一日三回ぐらい掃除機をかけたい派だけれど、夫は一日一回以内でも平気だった。
私は夜ご飯をできるだけ自分で作って家で食べたい派だけれど、夫は仲の良い人たちと飲みに行くのが好きだった。
 
同じ人間なのに、こんなにも生活が違うものなのか。
結婚して1,2ヶ月の間はもはや、夫を宇宙人としか見られないぐらい、私は混乱していた。
気がつけばいつも自分だけ掃除や洗濯をしているような気がして、「不公平だなあ」と不満に思いながら時々喧嘩をする。
 
私と夫の共通の知人たちにこの話をすると、「いや、分かるよ。二人とも」となぜか両者の意見に同意してくれる。
「男はさ、掃除なんかしないって」
極論だとは思うけれど、一人の男性がそう言った。
「でも、働いてるのは同じじゃん」
「そう。だから全面的に男が悪いって」
そうだそうだ! と私の肩を持ってくれる人に、一瞬同意しかけた。
が、そこでふと覚えた違和感。
 
男が、悪いんだろうか。
夫が、悪いんだろうか。
 
夫は一人暮らしをしている時、本当に掃除をしなかったらしく、それでも居心地が悪いと感じたことがないと言っていた。
彼にとってみれば、二人で一緒に暮らし始めてからも同じペースで生活したいと思っていたんじゃないだろうか。
だとすれば、「ねえ、掃除してよ」「ゴミ捨てようよ」と何度も小言を言う私は、彼にとって、居心地の良い暮らしを脅かす地球外生命体以外の何者でもないことになる。
「……」
私が彼を宇宙人だと感じたように、彼は私を宇宙人だと思っていたかもしれない。
 
これまで、潜在意識の中で「自分はこんなに家事をしているのに」「自分だって働いているのに」と文句を垂れ流し、「私は悪くない」と思い込んでいたことが急にバカらしくなってきた。
「洗濯を朝終わらせたい」のも、
「一日三回ぐらい掃除機をかけたい」のも、
「夜ご飯は家で食べたい」のも、
全て私の偏った価値観であり、自分が正しいことなんて決してない。
もちろん自分の中の正義は変わらないけれど、夫婦だからと言ってそれを相手に押し付けるのはおこがましいことだ。
「いつも怒ってごめん」
認めてしまえば簡単だった。
思えば夫は普段から「ご飯ありがとう」とか「美味しい」とかちゃんと伝えてくれていた。
私だけが、「ちょっとでいいから手伝って」というふうに頼まずに、ただ「なんで掃除してくれないの」と怒っていただけ。
お互いにの生活に対する価値観を認め合ってから、気持ちはすっと楽になった。
これまで悩んでいたことが、嘘のようにどうでもよくなる瞬間。
 
私は自分が掃除をしたいから掃除をするのだ。
自分が洗濯をしたいから洗濯をするのだ。
自分が料理をしたいから料理をするのだ。
 
「こんなにしてあげてるのに」じゃなくて、「自分がやりたいことだから、勝手にやってしまう」と心のスイッチを切り替えた。
 
そうすると不思議なことに自然と、掃除をして家が綺麗になるのを見るのが楽しいと思えてきた。
「もっと綺麗にしたい」
「もっと効率よくしたい」
「どの順番で家事をすれば自由な時間が増えるのかな」
頭を思い巡らせて手を動かす。
パズルのように、今日やるべきことの順番を組み替えながら、どう動くのが最適かを考える。
そうか、私にはこういうのが必要だったんだ。
ネイルをしたりおしゃれな髪型を追求したりすることはとても楽しい。
「女子力が高い」と言われるのは誇らしい。
でも、今私が一番喜びを感じているのは、「家事を効率よく終わらせて仕事までしている」と自己肯定できる感覚。
女子力ではなく「主婦力」を磨くこと。
主婦力は仕事にも役立つし、身につければ一歩大人に近づけるような気がする。
 
誰かに言われたからではなく、「誰かのために」と傲るのではなく。
 
ただ一人、自分のために磨くのだ。
「主婦力」を、これから。
 
 
 
 
***

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