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母の偉大さに身が沁みた1月2日


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Kimmy(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
1月2日は、いつも憂鬱な日だった。
父方の親戚一同が集まり、ご馳走を囲んで新年を祝う日。
 
 

「そう言えば、○○ちゃん、まだ彼氏作らないの?」
 
 
……はい、出ました。先鋒 叔母1、得意技は「交際関係の詮索」
妙齢の若者を捕まえては、ずいと寄ってくる。まだ一口もご飯を口に入れていないというのに、今年はなかなかに出だしが早い。
 
 
20数年生きてきて、毎年繰り広げられる叔母2の「誰も得しない辛辣なツッコミ」も、そのほか一同の「まったく手を貸さないお客様ぶり」にも、そろそろ慣れていいはずなのに。
 
 

それでも、無性に嫌になってくる。
親戚との攻防戦は、いつも大量のエネルギーを奪っていくから。
 
 
今年はいつも盾になってくれる母が風邪をひいて欠席になったため、なおさら参加をためらっていた。「自分にも風邪がうつった」と嘘でも言って欠席しようか本気で迷っていた。
 
 
結局、孫の顔を楽しみにしている祖父母を裏切ることが出来ず、しぶしぶと参加を決意した。といっても今年だけの話ではなく、毎年祖父母のために顔を出しているようなものだった。
 
 
ただ、今回は母が居ない。
自分が代わりとして振舞ったことで、母が毎年どんなに大変だったのか良く分かってきた。
 
 

我が物顔で座って談笑している親戚をよそ眼に、祖母と一緒に料理の下ごしらえや盛り付けをし、食卓へ運び、余分な食器を下げる。当然、口に入れるときには料理は冷めている。
 
 
母は良く「新年だから、ニコニコしていてね」と自分に言っていた。
手伝いながらも、傍から見ていてむしゃくしゃしていたのがきっと顔に出ていたのだろう。
 
 
当事者として場を仕切るようになると、腹の底から湧き上がってくる苛立ちは、自分が今まで感じてきたものの何十倍、何百倍と大きかった。
 
 
なんて母は偉大なんだ。毎年、どのような気持ちでニコニコしていたのだろうか。これが、嫁いできてからずっと続いていたのだろうか。
 
 
かつて母がしていたように、親戚が帰った後も残ってお皿を洗いながら、昔の記憶にある母の様子を思い出していた。ずっと、優しく笑っていた。
 
 
家へ戻るやいなや、母を抱きしめた。
 
 
「どうしたのよ?何かあったの?」
戸惑う母をよそに、今までありがとうと感謝の気持ちを込めた。
 
 
母にその日にあったこと、感じたことを洗いざらい話すと、母は少し寂しそうに俯いてから、また笑って目を見た。
 
 
「大丈夫よ。私たちが自分を誇れるように生きればいい。ほかの人がやらなくても、自分が必要だと思うことをやるだけ」
 
 
すごくシンプルな言葉だったけれども、母の言葉には十数年の悩み、憤り、失望を乗り越えた過去が詰まっているのが分かった。
 
 
中国から日本へ嫁ぎ、当初は日本語も分からず、家族や親戚はおろか身近な友人さえも居なかった母。
 
 

もともと、母にとってなにもかもが不利だったのだ。親戚付き合いで「よそ者」かのように扱われることを、父に不満を言ったところでどうしようもなかったのだろう。否、言ったところで父にはその不平だと思う感覚さえ分からなかったかもしれない。
 
 
それにしても……。母の半生を思い返すと、本当に血と汗のにじむ苦労をしてきていた。
 
 
中国の名門大学を卒業してそのまま大学で働いていたにもかかわらず、キャリアを捨てて日本へきて、一から日本語を習得していた母。
 
 
まく言葉を伝えられず苦労しただろうに、幼い自分を育て上げるとともに、才能を活かして日本でのキャリアを確立してきた。昔は親戚に軽くあしらわれたこともあったが、今では当時見下していた誰よりも稼いでいる。
 
 
それでも「嫁いできたよそ者」として扱われ、親戚付き合いではひたすら雑務を押し付けられているにもかかわらず、母は手本として率先とこなしてきた。
 
 
当然不平不満を感じるに違いないのに、「自分を誇れるように生きればいい」と割り切って言ってしまえる潔さがあった。
 
 
母をぎゅっと抱きしめると、またもや言い知れない感情に襲われた。
 
 

いつぶりに抱きしめたのだろう。
どうしたのよ、と笑いながら背中をさすってくる母の身体が、昔よりも随分小さい。絶対的に大きな存在だった母が、こんなにも華奢に感じる。
 
 
母はすっかり年老いてしまった。近くでよく見れば白髪も多くなっている。
最近は風邪を引きがちになってきた。
 
 
親戚付き合いだけでなく、仕事も、家事も、子育てもなんだってがむしゃらにこなしてきたのだろう。少しずつ身体に長年の疲労が見え始めていた。
 
 
これからは、わたしが母の盾になるから。
心の中でそう思いながら、母をもう一度抱きしめた。

「いつも本当にありがとう」

 
 
 
 
 
 
***
 
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2020-01-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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