メディアグランプリ

三つ子の魂は三つじゃなかった話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:長谷川絵里香(ライティング・ゼミ特講)
 
 
長女が3歳の時だった。
 
「生まれてこなきゃよかった!」
 
険しい顔でそう言ってぴしゃりとドアを閉め、玄関から長女が出て行った。まだあどけない喋り方をするたったの3歳の子が。
 
驚きと戸惑いでしばらく呆然と立ち尽くす私。
ショックはもちろんあったが、どこでそんな言葉覚えてきたんだろう……その疑問で頭はいっぱいだった。
 
長女の下には年子の次女がいる。
当時、次女2歳。イヤイヤ期全盛期だった。
自我が芽生え、自分でやりたいがために周りの言うことに何でも反対してイヤ! と言う。かと言って自分でやっても思い通りにできないので、その葛藤にブチ切れまくる時期。
癇癪持ちで繊細、そして一旦「イヤ!」モードがオンになると、ギャン泣きを2時間は続けられる凄まじい体力の持ち主。
彼女が2時間全力で泣き、ようやく疲れ果てて泣き止む頃には、母はほぼ燃えカス状態(部下が反論など許されない状況で、上司から理不尽な叱責を2時間延々とされるようなものだと想像してほしい)。
当然母のストレスは長女に影響する。
 
10年暮らした東京を離れ、結婚とともに全く地縁のない名古屋へ越して3年。近所に同世代の母がいても何となく気が合わず、母達のマウンティングとハブに怯えながら周りに合わせることにも疲れ、いっそ一人でいいやと孤軍奮闘する年子の育児だった。
夫の両親とは敷地内別居で、私たちは以前両親が住んでいた戸建て暮らし。一見何不自由なく暮らす幸せな新米ママ。
しかし家の中は子どもの泣き声と私の怒声で溢れかえっていた。負のエネルギーと負のエネルギーをぶつけ合いながら、どちらかが力尽きるまで闘い続ける死のリングだ。(24時間365日続く)
 
だから、3歳の長女が「生まれてこなきゃよかった」と言った時、そりゃそうよね。と妙に腑に落ちたのも事実だった。
 
その頃からだろうか、長女が不思議なことを言い出したのは。
 
「サチはね、お空の国で、コキヤマ シオリさんと暮らしていたの」
 
えっ? 誰よ、コキヤマさんて。
 
その名を初めて聞いたとき、絵本やお話が大好きな長女のことだからきっと自分で考えた創作話だろうと思っていた。
しかし、その話は毎日続いた。
まさか……。
エゴサーチもかけてみた。当然ヒットなどしない(笑)
 
ふと、妊娠中に産婦人科の待合室で読んだ一冊の本を思い出す。
『ママのおなかをえらんできたよ』−それは胎内記憶について書かれた池川明氏の著書だった。
単語ではなく文章で言葉を発する2〜3歳くらいの時に現れ、大きくなるにつれ次第に話さなくなることが多い。お腹の中にいた時の話や、生まれる前の記憶を持つ子どももいるらしい。見たことないはずなのに、あたかも胎内から母と一緒にその景色を見ていたように語る子もいるという。
 
私はどちらかと言えば理屈っぽく、スピリチュアルな話は信じない方だ。
だが、幼児の話の一貫性と言葉の具体性にただならぬものを感じていた。大抵、子どもの作り話は「なんで?どうして?それから?」と根掘り葉掘り聞くうちに、話は盛り、矛盾と破綻を期していく。しかし、彼女の話は3歳から6歳になるまで、辻褄があったまま、多少のディティールは変わりながらも一貫していたのだ。
ふと思い出したように突然始まる長女の「お空の国話」を聞いては、メモに残した。
 
以下、6歳の長女が当時発した言葉を記したメモだ。( )は補足だが、喋った言葉のママである。子育てや保育に関わっている方はぜひ、6歳幼稚園児が語る言葉を想像して読んでみてほしい。
 
「11年前、こきやましおりさんは骨折して死んだ。われわれの国が春のこ
と。死んだ。アメリカの人がいて、サチ(自分)の家を鉄砲でバンバンっ
て撃って、ドアを開けたら撃たれた。
サチのお空の国はあるけど、人々が死んでしまった。だからパラシュートにのって降りてきたの。
ぶしっ!て(ママの)お腹の中に突っ込んできたの。(ちなみに3歳の時は、気球にのってママのお腹にぶつかったと表現していた)
あーちゃん(妹)はお空の国にいる時、一緒に遊びたいから生まれてきてねってサチが誘ったの」
 
インターネットで調べていくうち、こうした胎内記憶や出生前記憶を科学的に研究している大学教授がいることが分かった。しかも同じ愛知県に。
思い切ってその先生にメッセージを送ると、娘の話をヒアリングしたいと返信がきた。
会いに行って話を聞いてもらうと、この「お空の国」の話をする子どもが何人もいること、そして前世記憶と体内記憶の間にあるこれを「中間生」ということも教えて頂いた。
私は彼女の話を真摯に受け止めようと決めた。
 
そしてある日、何でママのところにきたの? と聞いてみた。
 
「ママが優しそうだったから。ママに会いたかったから」そう彼女は言った。
 
「子は授かりもの」とよく言ったものだが、心のどこかでは、この子は自分たちが産み出したものと思っていた(物理的には間違っていないが)。
だからこそ、産んだ責任を自ら課し、より良い母であろうとし、この子をよりよく育てようと躍起になり、思い通りにならなくては焦ったり怒ったりしていたのだ。
私の目指すあるべき型に彼女を当てはめようとしていた……。
その苦しみの根本に気付いた瞬間、肩の荷がホッと降りた。
 
この子は、私を選んでこの世にやってきてくれた。
せっかく生まれてきてくれた魂に、来てよかった、幸せだった、と感じてもらうことが私のやるべきことなのかもしれない。いい子に育てることじゃない。
私は魂を預かる役目を頂いたのだ。
 
それから、私の長女に対する接し方に変化が現れた。
私が彼女に与えるのではなく、与えられていたのは私だったのだ。
 
そんな大変な育児期間を過ぎ、二人とも小学校高学年になった。
 
いつも誕生日に伝えてる言葉がある。
「パパとママのところに生まれてきてくれてありがとう」
 
 
 
 
***
 
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2020-01-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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