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関係人口さん、いらっしゃい!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:神東美希(ライティング・冬休み集中コース)
 
 
「関係人口」という言葉をご存知だろうか?
 
移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない「観光以上、移住未満」で地域と多様にかかわる人々のことだ。
 
総務省のホームページには以下のように書かれている。
 
「地方圏は人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面していますが、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、『関係人口』と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されています」
 
うーん、分かったような、分からないような……。
 
最近「関係人口」という言葉が一人歩きしている気がする。
大切なのは言葉や数字じゃないはずなのに……。
 
なぜそう感じるかというと、私自身が田舎に移住して暮らしているからだ。
 
人口が減り高齢化が進むと、どんな困りごとが起きるのか?
それを目の当たりにしている立場から、事例を紹介したい。
 
私が住んでいるのは静岡県川根根本町(かわねほんちょう)。
人口6600人ほどの小さな町である。
 
暮らしはじめた8年前、町の人口は8000人を超えていた。
この8年間で1400人以上も減ったことになる。
 
65歳以上の割合は全人口の48.5%。
これを世間では「高齢化率」と呼び、静岡県の市町では二番目に高い。
 
ただし、65歳を高齢者扱いしてもらっては困る!
田舎ではバリバリの現役世代なのだ。
 
農作業だって山仕事だって若い衆の倍は動く。
ある人に言わせると「50、60は鼻たれ小僧」なんだとか。
 
さらに驚くのが75歳以上の割合が約30%なのに対して、昨年一年で生まれた子どもは、たったの12人しかいない。
 
要するに、お年寄りが多くて子どもが極端に少ない町なのだ。
 
こういった状況はこの町に限ったことではない。
どこの地方でも似たり寄ったりだろう。
 
人口が減ると町への税収が減る。
出費(福祉や医療にかかるお金)が増えて、町の財政を圧迫する。
 
若い人たちは就職や進学をきっかけに町を出ていく。
一度離れるとまず戻ってこない。
 
町の主要産業である茶業や観光業の後継者も減っている。
空き家や耕作放棄地が見る見るうちに増えたのを実感。
 
お祭りや神楽などの伝統行事も、あと数年で成り立たなくなるかもしれない。
 
とまあ、挙げればキリがない。
 
町全体に活気がなくなってしまうのだ。
何ひとつ良いことはない。
 
めっきり暗い話になってしまったけれど、そればかりでもない。
 
私が住んでいる集落ではまさに今週末、神社のお祭りが行われようとしている。
年に一回の小さなお祭りだが、だんだん規模が縮小されている。
 
「昔は子どもも大勢いて賑やかだっけんなぁ」
おじさんたちはそう言って昔を懐かしむ。
 
そんな話を聞くのがせつなすぎて、数年前から女性4名で神楽のお囃子(笛)を担当することにした。4人のうち3人が移住者だ。
 
私たちを除く神楽会メンバーの最年少は70歳。
 
舞い手のKさん(80歳)は膝が痛くて練習もままならない。
笛のエースのNさん(75歳)は、入れ歯にしてから上手く吹けないと嘆く。
 
それでも「お囃子が賑やかくなっていいよ」とか「練習に励みが出るわ」と言って、私たちを歓迎してくれる。
 
私たちが神楽を始めたことを知り、集落の若い衆(といっても50代)が「それじゃ、俺も」と練習に加わるようになった。
 
練習より世間話したりお酒を飲んでいる時間のほうが長いけど、みんなが楽しそうだから「まぁ、いいか」
 
激動の社会情勢に比べれば、取るに足らない変化だろう。
だが田舎暮らしは良くも悪くも、小さな変化の積み重ねなのだ。
 
「交流人口」と「関係人口」の話に戻ろう。
 
私の仕事は観光業。
町の自然資源を生かした体験型のツアーを開催して、外から人を呼び込む。
 
四季折々の自然の魅力を伝えるのは、地域を愛する住民たち。それがツアーの売りだ。
おかげ様でリピーターも多く、口コミでお客様がお客様を呼んできてくれるようになった。
 
目指すのは「交流人口」の拡大。
つまり、地域のファンを増やすこと。
わずかながらでも地域にお金が落ちる仕組みを作ること。
 
だからこそ「1万人の1回よりも、千人が10回、100人が100回訪れる地域にしたい」と考えている。
 
先日、とても嬉しいことがあった。
長年ツアーに参加してくださっているお客さんが、我が町にふるさと納税をしてくれたのだ。
 
その理由が「ツアーに参加したことにより町の魅力を知り、一番好きな町になったから」だと言う。
好きな町を応援しようという気持ちが有り難いではないか。
 
このお客さんの場合、最初は「交流人口」だった。
しかし、総務省の定義に照らし合わせると、今は「関係人口」だと言える。
 
実はこの「関係人口」、行く行くは「定住人口」になる可能性も秘めている。
 
縁あって訪れたこの町で、農家の現状を知った東京のコンサルタント会社社長。
 
「農業で川根本町の課題を解決したい!」と、農業法人を立ち上げた。
東京に住んでいた社員は町へ住民票を移し、サテライトオフィスまで作ってしまったのだ。
 
耕作放棄地を借りてユズなどの柑橘を植え、生産から商品開発、販売まで行う予定だという。
ボサボサに伸びた茶畑が瞬く間に更地になった。
地域住民も大喜びで、今後に期待している。
 
このように、我が町にはすでに相当数の「関係人口」がいる。
 
都市部の企業やNPOは、何年も前から植樹や間伐などの森づくりをしている。
彼らは必ず農家民宿やキャンプ場に泊まり、作業の翌日には私たちのツアーに参加してくれる。
 
また最近では、大学生が授業や現地実習を通じ、住民と一緒になって地域課題解決に取り組む例も増えた。
高齢化が進む集落では、若い世代との交流が刺激になり活気を生んでいる。
 
このように、地域との関わり方は十人十色。
しかし、共通するのは町に対する愛着があるということ。
 
交流人口の場合「お客様」という立場だが、関係人口の場合「仲間」という表現がしっくりくる。
町への愛着を感じるからこそ、私たち住民はその仲間たちとともに汗を流したい、協力したいと思うのだ。
 
総務省の調査によれば、都市部に住む20代以上の男女で「農山漁村地域に定住してみたいという願望がある」もしくは「どちらかといえばある」と答えた人は、全体の約3割いるという。
 
つまり、3人に一人は田舎暮らしに関心があるということ。
かといって、いきなり移住というのはハードルが高すぎるだろう。
 
地域との関わりのステップとしては、「交流人口」→「関係人口」→「定住人口」
 
もしあなたが「どこかの地域と関わりたい」「第二の故郷を作りたい」と思っているなら、まずは観光で訪れてみることをオススメする。
その場所が気に入ったら、もう一歩踏み出して「関係人口」になってほしい。
 
願わくば、その候補地にぜひ、静岡県川根本町を加えてほしい。
 
そして、候補地に選ばれるために私たち住民ができることと言えば……。
 
自らがここでの暮らしを楽しむこと。
住民が生き生きしている町は、外から来た人にとって魅力的に映るだろう。
 
しかし、私はさらにその先を目指す。
この町の魅力や暮らしを、少しでもたくさんの人へ効果的に伝えていくのだ。
 
さぁ、関係人口さん、いらっゃい!
 
 
 
 
***
 
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2020-01-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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