エンタメは味付けだ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:リュウヒロキ(ライティング・ゼミ平日コース)
「みんなで力を合わせれば、なんでも出来る!」
そう謳う物語はこの世にあふれていて、もはやどの作品から影響を受けたのか定かではない。
だけど、そのメッセージは確実に自分の中で血となり、肉となり、自分を形作る大事な一要素となっている。
誰もが身に覚えがあるだろう。
僕らはきっと様々なことを映画や音楽、漫画といった「エンターテインメント」から学んでいる。
それは時にワクワクするような冒険物語の形で、あるいは心を打つようなバラードの形で。
そのレパートリーは本当にバラエティに富んでいる。
当然それらの作品は誰かの手によって生み出されたものだ。
胸に秘めたメッセージを届けるために、あまたのクリエイターが試行錯誤を繰り返し、多くの人に消費され、その結果ヒット作品が生まれる。
映画に音楽、漫画と、その形は様々だ。
ミリオン、ベストセラー、満員御礼、そのあらわれ方も様々だ
だけど一つ、確実に共通していることがある。
それは、クリエイターの“伝えたい思い、メッセージ”がその作品の核になっていることだ。
クリエイターはそのたった一つの“伝える”という目的のためにあらゆる手を尽くす。
料理でいうなら、メッセージは食材だ。
もちろんそのままでも食べられるが、それでは美味しくない。
栄養素的には生野菜をそのまま食べるのでもいいのかもしれないが、たまにはドレッシングだって掛けたいし、揚げたり煮込んだり料理にした方が断然食べやすい。
作品も同じだ。
メッセージをただそのままストレートに伝えても「なんだこいつ、うるせぇな」と聞いてもらえないのが当たり前だ。
だからクリエイターは、エンターテインメントという手段を取る。
エンターテインメントとは、「人々を楽しませる娯楽」を指すそうだ。
そう、伝えるためには楽しんでもらうことが効果的なのだ。
伝えたいメッセージという目的と、それを表現する手段がかみ合ったときヒット作は生まれる。
後に“傑作”と言われることもあるだろう。
先日、幸運にもその一例に出会った。
それは何の気なしに単館系の小さな映画館を訪れた時のことだった。
その映画は日本の小さな島を舞台に、子供を手放さざるを得なかった生みの母親と、一方でその子を引き取り我が子のように大事にしてきた育ての母親が、子供を巡って様々な葛藤を繰り広げる物語だった。
作品自体も秀逸で、「この子を離してなるものか」という切実な想いと、それぞれが母親ゆえにお互いがどれほど深い愛情を持っているか分かってしまうといういたたまれなさに、上映中は涙が止まらなかった。
そして、劇中で非常に印象的だったのが「島の子」という表現だ。
「島の子供は島のみんなで育てる」という意識の表れで、結果この一言が主人公たちの救いに、そして作品のクライマックスにつながっていくという非常に重要な言葉だった。
そんなことを考えながら最後までエンドロールを見ていると、ふと違和感を覚えた。
最後に「製作:長島大陸映画委員会」とクレジットに記載されていたのだ。
普通は「作品名+製作委員会」となっているのが普通だ。
それで気になって調べたところ、衝撃の事実が分かった。
この映画の製作主体は、舞台となった島の有志が集まってできた団体だったのだ。
さらに驚いたことに、その資金は地域創生にあてられる補助金から拠出されているという。
これは “奇跡”だと思った。
映画のクオリティは言うまでもない。
島の魅力を、子育てという観点で「島の子」に焦点をあて、物語として描き切ったことは素晴らしいとしか言いようがない。
まさにメッセージが、エンターテインメントとして最高の形を授かった好例と言えるだろう。
映画のタイトルは「夕陽のあと」。
これは自分も負けていられないと思うには十分すぎる作品だった。
エンタメ業界に携わるはしくれとして、そして地域創生というテーマを扱うものとして、この作品に負けないよう邁進していきたいと思う。
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