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メディアグランプリ

元恋人へ、私はあなたを嫌いになりたくないのです


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:一ノ瀬 朔(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「結婚、おめでとう。末永くお幸せに」
 
本心を打ち込んだメールに、返事が来ることはなかった。
 
恐らく、私と彼が連絡を取り合うことは、今後、一切ないだろう。
 
友人として2ヶ月、恋人として5年、そして、元恋人として約3年。
 
彼と私の関係に、これ以上の名前が追加されることも、きっとない。
 
とても、残念に思った。でも、仕方がないとも思った。
 
かつては、お互いに好意の感情を抱いていたのに、恋人としての期間が終わってしまえば、過去の感情はあってないようなものになってしまうこともあるのだと、深い諦めを痛感した。
 
「もう、前みたいに好きでいられない。だから、これ以上付き合うことはできない」
 
彼の運転する車の中。別れを切り出したのは、私だった。
 
社会人になってから、月に1回、会うか会わないかを続けること2年半。
 
一緒にいても、楽しいと思えることが段々と少なくなり、「これはもう、ダメかもしれないな」と思い始めながらも、もしかしたら次会ったときは楽しいかもしれない、と淡い期待を捨てきれない日々を送っていた。
 
それでも、彼から結婚を匂わせる話を振られたとき、自分の中にある恋愛感情が冷めきってしまっていることを自覚した。
 
私、この人とは結婚できないや。
 
そうハッキリと認識して、私は彼に別れを切り出した。
 
「別れたくない」「私は別れたい」「もう少し考えてほしい」「もう、十分に考えた」
 
4時間以上、お互いにお互いを傷つけ合うように話し合った末、私たちは5年の交際期間に終止符を打つことにした。
 
「今まで、ありがとう」「元気でね」
 
二人して無理やりに笑って交わした別れの言葉。
 
そこにはお互いへ向ける気遣いや優しさが、たしかに存在していたはずだった。
 
しかし、それからというもの、彼のSNSには無気力に満ちた言葉が綴られるようになった。
 
やる気が出ない。楽しくない。味気ない日常が過ぎていく。
 
まるで、私が彼を不幸にしたことを周囲にアピールしているような投稿の数々に、嫌な気持ちを抱かずにはいられなかった。
 
それでも、長く付き合った彼を振ってしまった罪悪感もあり、見て見ぬフリをすることに徹していた。
 
少し嫌なことをされても仕方がないことをしたんだ、と無理やりに自分を納得させたのだ。
 
いつか、彼の日常が幸福なものになることを願いながら、元気のない投稿を流し見すること約1年。
 
ついに、彼のSNSから、幸せを感じられる日常が投稿されるようになった。
 
新しい彼女ができたのだ。
 
可愛らしい女性と一緒に笑っている彼を見て、私は心の底から「良かった」と思った。
 
彼が幸せそうな日常を送っていることに安心したのはもちろん。
これ以上、彼が放つ負のオーラに嫌な気持ちを抱くことはなくなるんだ、という安堵もあった。
 
一度は好きになった人を、5年間も一緒にいた彼を、嫌いになんてなりたくなかったのだ。
 
それでも、別れてしまった恋人との関係は、とても難しかった。
 
ある日、彼のSNSの投稿を見て、私は思わず呆然とした。
 
新しい彼女とのデートの報告。幸せそうな2ショットは微笑ましいのに、その投稿につけられたハッシュタグは微笑ましいものではなかった。
 
#まだ付き合って1ヶ月
#気持ちは2年くらい
 
2年か。そうか、2年も一緒にいる気持ちなのか。
 
心の中で反芻し、そのあと、心がドンヨリと重たくなる感情に襲われた。
 
2年前は、まだ私と付き合っていたんだけどなぁ、と。
 
もしも、ここで私が馬鹿正直に心の声をコメントに書き込んでいたら、彼と彼女の間に修羅場が訪れていたかもしれない。
 
それでも私は彼の幸せを祈っていたし、新しい彼女の不幸を願ったわけでもない。
 
だから私は、その時も見て見ぬフリをすることにした。
 
悲しかった、と言えば嘘になる。
 
5年も付き合っていた元恋人から、透明人間扱いされたことに多少なりとも怒りだって感じた。
 
それでも、だ。
 
私は、過去の恋愛感情を誇りに思いたかったし、彼のことを嫌いにもなりたくなかった。
 
そして、それから1年後、彼がSNSで結婚報告をしたときも、「幸せそうでよかった」と心から思えた。
 
きっと、これが最後の連絡になるだろうな、と思いつつ、「結婚、おめでとう。末永くお幸せに」と、送った。
 
が、残念なことに、彼からの返事は来なかった。
 
なんとなく予想できていた結末だった。
 
元彼女からの連絡を疎ましく思ったのかもしれない。元彼女と連絡を取るのは奥さんに申し訳ないという理由で返事をしなかったのかもしれない。
 
それでも、悲しくないと言えば嘘になる。
 
どうして、過去は好きだった相手に対して、情のないことをできてしまうんだろうか、と。
 
メールを無視されただけなら、まだよかった。でも、振り返れば、彼のSNSには、私への思いやりの一切もなければ、寧ろ、悪意が含まれていたようにも思えた。
 
別れた後、不幸自慢を繰り返し、新しい彼女ができれば、一緒に過ごした時間をなかったことにされる。
 
果たして、それは好きだった相手にするべき態度だったのだろうか、と。
 
付き合っていた期間が終わった相手に対しては、優しくする義理が消滅してしまうのだろうか。
 
“好き”を終わらせるためには、それに反発できるような“嫌い”を持ち込まなければならなかったのだろうか。
 
やむを得ない態度だったのかもしれないし、それが彼の本音の表れだったのかもしれない。
 
だとしても思うのだ。
 
無理やりに笑って別れの言葉を交わし合った“不格好な優しさ”を、温かい思い出として胸の中にしまい続けていたかったと。
 
 
 
 
***
 
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2020-01-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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