500円玉で、自信を買った
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記事:いしはら(ライティング・ゼミ日曜コース)
わたしのお財布は、ずしりと重い。
荷物は極力少なくしたい派なので、ポイントカードの類も最低限に整理してあるし、レシートだって溜めていない。かなりスリムなお財布ライフを送っている。
それにもかかわらず、重さがある理由。それは、500円玉貯金だ。
もうここ5年ほど、500円玉を集めまくっている。主な活動は、お釣り銭として500円玉が返ってくるように小銭を払い、ゲットした500円玉は使わずにキープ。おうちに帰ったら、せっせと集めた500円玉たちを貯金箱にインするというものだ。
毎日貯金箱に入れられれば良いのだけれど、帰ってすぐ手を洗ってしまったりしてお金を触りたくなくなることが多く、お財布の中に500円玉をジャラジャラと待機させてしまう。これが、けっこうな重さになる。
正直、わざわざそんな重たい思いをしなくたって貯金はできるはずだ。お給料日に貯金用の口座へ送金するとか、投資してみるとか、色々あるだろう。でも、あえて目の前にある500円玉を使わないというミッションを課しているのだ。始めた理由は何だったか思い出せないけれど、続けている。
実のところ、ある時期、自分を信用できなくなっていた。
仕事で些細なミスが続いたこと。うっかり忘れてしまったタスクがあったこと。「やります!」と自分から言ったのに、ちゃんとやれなかったこと。
私生活もそうだ。朝は7時に起きると決めたのに一向に起きられない。今日はお風呂の掃除をして夜ごはんは自分で作ろうと思っていたのに全部できない。せめてこんな時は早く寝ようと思ったのに、何をするともなく夜更かしをして眠らない。
何してるの自分、もういい加減にしてよ。
いつもそう思っていたけれど、思うだけで何も変わらない、変われない。自分との約束をひとつも果たせない。あーあ、全然ダメダメだ。自分がどんどん落ちていくのに、うまくあがけない。一体どこまで落ちるんだろう。
そんなわたしを救ったきっかけは、毎年恒例の家族旅行だった。お決まりの宿と、近くの海鮮丼屋さんと、陶芸教室に行くというのが鉄板の流れ。目新しさはほとんどないものの、だからこそ絶対的な安心感があるので、毎回楽しみにしているのだけれど。
なんとその旅行代を、500円玉貯金でまかなえたのだった。
それまでに貯金箱を開けようとしたことはなかった。でも、なんとなく貯まってるような気がしたし、ラッキーな気持ちになりたくて、ふと思いついてしまったのだ。たまにはいいことのひとつ、あってもいいよね。
ということで、開けてみたらびっくり。そこには予想をはるかに超える7万円があった。何の気なしに始めた500円玉貯金が、こんなにもハッピーな気持ちにさせてくれるなんて。毎年楽しみにしている家族旅行が、いつも以上に気持ちを満たしてくれるものになった。
500円玉を使わずに貯めておく。ただそれだけのことをコツコツ積み重ねた結果が旅行代になった。うれしかった。チリも積もれば山となるとはこういうことなのかと、身をもって知った。わたしはどうにも飽きっぽいから何かを継続するのは苦手だと思っていたけれど、こんな喜びがあるのなら、できそうかも。
いままでのわたしは、何かを達成するには「短期集中型」が一番だと思って依存していた。たしかにこのやり方の機動力は高い。でも、自分が不安定なときにそれをやると間違った方向へとひた走ってしまうのだ。結果、自信を失う。
そこで効果を発揮するのが、500円玉貯金的な「長期分散型」の努力だ。これは、毎日かならずやらなくたっていい。できるときにやる。即効性はないけれど、何かで自信を無くしたときにこそ、この手で積み上げた成果が効く。なんだ、なんだかんだでちゃんとしてるじゃん。そう思えれば、また前に進んでいけるのだ。
自分自身を信じられなくなっていたあの頃のことを思うと、いまはかなり元気になったなあと思う。あの家族旅行の後、わたしは500円玉貯金以外の「長期分散型」努力として、筋トレと文章を書くことに力を入れてきた。筋トレは仕事で疲れた身体をほぐしてくれて単純に気持ちがいいし、多少引き締まった身体になってきているのがうれしいので続けている。文章を書くことは頭の中の整頓にぴったりだ。自分の考えがクリアになるし、振り返って読むことで自分がどれだけ前進してきたががわかる。どちらも、すぐに結果は出ないけど、大きな結果を味わうことができるものだ。
そういえば今日はお財布の中にあまりお金が入っていなくて、やむなく500円玉で支払ってしまった。ちょっと残念な気持ちだけど、別にそれを責めたりはしない。また貯めればいいのだから。1枚や2枚くらい、すぐ戻ってくる。
こういう気持ちの余裕を持てるようになったのも、自信が戻ってきた証拠かな、と思う。500円玉、貯めてみてよかったな。
次回の家族旅行も、500円玉貯金で行けるよう、コツコツとやってみます。
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