有事に磨くはユーモアセンス!?
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:Mayumym(ライティング・ゼミ平日コース)
ここ数週間、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、子ども社会も大人社会も、不安が渦巻いている。まるで洗濯機の中にいるかのようだ。渦中を抜け出すまではぐるぐると……目が回る。すっきりしない。
前触れもなく、急に「今日でこのクラスは終わり」と聞いた小学2年のわが子のクラスは号泣の嵐だったそうだ。それだけ別れを悲しむほどの絆が培われていたことに、母としては驚きと共に、思わず涙腺が崩壊した。悲しみの向こうに見つけた絆とは、何とも尊い。ただ、8歳の子どもたちにとって、突然別れを切り出される失恋は到底受け入れがたいものだ。
大人社会に目を移してみると、TVでは「今日は何人の感染者になった、日本という国の水際対策の甘さ、総理の判断ミス、政治家が話し合う国会の議題選定の是非、マスクやトイレットペーパーなどの買いだめや品不足、各自の行動責任を問う」といったニュースが大洪水のごとく流れてくる。ビジネス上では、集合型イベントが軒並み中止となり、痛手を被っている。大人社会で直面する現実もこれまた痛く、思わず目を覆いたくなる。
「この有事を、自分はどう過ごしていきたいのか」
ふと、そんな問いが頭に浮かんできた。
例えば、自宅に在庫がある商品が品切れだと騒がれるとその商品を追い求め、
いくつもの販売店をまわるのか。
あらゆるニュースを見て、不安な気持ちを募らせて毎日を過ごしていくのか。
この現状について、誰かしらに怒りをぶつけるのか。
仕事の滞りを嘆き、途方に暮れるのか。
あるはずだった学校、仕事が無いことを悲しみ、何も手につかない日々をおくるのか。
人はつい、先の見えないことに不安を覚えるが、その見えない不安に振り回されて生きるのを望んでいないことも明らかだ。
つい数日前、わが子のかかりつけの病院へ行った帰りのことだった。病院近くの珈琲専門店に立ち寄り、そのカウンター席で遅めのランチを取ることにした。目の前に並ぶ5台のサイフォンで丁寧に珈琲が入れられていく様子とその香りに包まれ、何とも言えない休息のひと時だ。一緒に頼んだサンドイッチとサラダの美味しさにも舌鼓を打つ中、店で働く人の声が耳に入ってきた。
新人の若い男の子には、
「〇〇くん、席案内最高!慣れてきたね!僕もいつも最高だけどね」
ベテランらしき女性社員には、
「〇〇さん、休憩はあとにしてね。僕今仮眠とるから。うそうそ、〇〇さんが今
休憩に入ったらこの店回らなくて僕帰れなくなっちゃう。だから△△さんの後でお願い
します!(手を前に出してお辞儀している) 」
常連らしき老夫婦には、
「ありがとうございます。明日からはこういう状況なので閉店時間が早まるのですが、
いつもと同じくご来店をお待ちしていますので、ぜひいらしてください」
といった具合だ。
よく聞いていたら、すべて店長が話している。そして、話している相手はそろって笑顔だ。話すテンポも速くてリズミカル、どこかしらの芸人さんかと思うほど言葉を噛まない。そしてオチをつけるタイミングで、必ず相手の笑顔を勝ち取って舞台袖に去っていく。
カウンターでサイフォン式コーヒーに目を奪われる私たち親子にも、しっかりと目を配ってくれていた。さりげなく、そして小学2年生の子どもにもわかる言葉で、入れ方を丁寧にひとつずつ、順序立てて教えてくれた。
この珈琲店にいる間、今が有事だということをすっかり忘れていた。ほっとしていた。きっと店にいた人たちも同じだったのではないだろうか。あの空間は、見えない安心感で包まれていた。
そういえばある韓国ドラマを見ていたとき、
「国連会議で集まるあの人たちは、有事の時にばかり集まる。深刻になりたくないからか、お互いに冗談を言い合う仲になる」
「こういう時ほど、あなたの冗談が救いになる」
そんな会話を耳にしたのを思い出した。
店を出る時も、「またお待ちしております。いつでもいらしてくださいね」と私と娘それぞれに笑顔で目を配り、手を振って送り出してくれたあの店長。ふらりと立ち寄った珈琲店の店長の姿から、有事の際のユーモアセンスがいかに見えない不安を忘れさせ、笑いの先に見えない安心感をもたらしてくれるのかを目の当たりにすることとなった。
最近よく「Doing」より「Being」が大切という言葉を耳にする。有事にユーモアセンスが光ると、自分自身もだが、周りにいる人たちや身を置く場の「Being(あり方)」もおのずと変わってくるように思う。
「この有事を、どう過ごしていくか」
見えないことによる不安に包まれた日々を、ユーモアセンスを媒介として「見えない安心感」包まれる日常に変換できたら、単純に自分はうれしい。
珈琲店からの帰り道、私が「ユーモアセンスのある人、好きだなぁ」と話すと、娘がすかさず「おや?看板わ!」と返してきた。なかなか落ち着かない日々だが、こんなやり取りも悪くない。
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