「悪用厳禁! 恋愛における嘘の効用について考えてみた」
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記事:綿谷しふみ(ライティング・ゼミ日曜コース)
「嘘をついてはいけない。もし嘘をついたらエンマ大王に舌を抜かれる」。私は小さい頃から大人たちに嘘は絶対的に悪いものだと、教えられて育ってきた。
だから大人になってからもずっと、嘘をつくことは絶対悪だと思っていたし、いつも正直に生きてきたつもりである。
いやしかし、「正直者が馬鹿を見る」ということわざがあるのはどうしてなのか。
「嘘をついてはいけない」という方が嘘つきなのではないかと、疑問がわきはじめた。
嘘には悪い嘘もあれば優しい嘘もあり、人間関係を円滑にするため、コミュニティによってキャラを使い分けるという演技力が必要な嘘だってある。
馬鹿と鋏は使いようというが、嘘だって使いようなのである。
嘘をうまく使える人間が人生を制するといっても過言ではないだろう。
そして特に嘘が大活躍するのが、恋愛ではないだろうか。
なぜならば、恋愛は主観的なものであり掴めない雲みたいなものだから。
自分の中で勝手に相手のイメージを膨らませ、恋に落ちる。そのイメージが正しいとか正しくないとかそんなこと問題ではないのだ。
だって全てが主観だから。
どっからどうみてもダメ男としか思えないのに、彼じゃなきゃダメと言い張る女子がいるかと思えば、すくいようのないくらい性格の悪い女に骨抜きにされている男もいる。
いうならば、キツネとタヌキの騙しあいみたいなもので、まさに恋愛市場では「正直者が馬鹿をみる」世界なのだ。
この過酷な恋愛市場において、どうせなら勝ち組になりたいと思うのが人の常。
人それぞれ考え方もあるだろうけど、骨抜きにされて振り回されるより、振り回す方が絶対に楽しいはず!
でもどうやって?
答えはヒトラーが知っている。そう悪名高い悪魔の代名詞ともいえるあのヒトラーである。
断っておくが、私はヒトラーを信奉しているわけでも賛美しているわけでもない。正直いって好きではない。
人を操り意のままにドイツ国民を動かしたその扇動力を建設的なことに使えばよかったの
にと思うのだ。
あー話がそれた。何がいいたいかというと、ヒトラーが使った大衆扇動術を恋愛に応用することができるということだ。
ヒトラーは色んな人心掌握術を使っていたが、その中でも神秘性に注目したいと思う。
彼は内向的な性格も手伝ってか、プライベートな部分を出すことをとても嫌がっていた。
私生活についての出版を禁止したり、昔を知る知人の殺害を命じたりとプライバシーに関する気の使い方は半端ではなく、カリスマ性を保つために徹底的にプライベートな部分をベールで隠していたのだ。
情報をわざと不足させることで、与えられたイメージにの上に、想像上のイメージを積みあげていく。
この与えられたイメージとういうのが曲者で、子供と一緒の写真をお披露目して優しい印象を植え付けるなんてことをしていたのだ。
受け取った情報が、いいものであればあるほど、不足部分は想像力によって、実物以上に素晴らしい印象にふくれあがっていく。
ヒトラーも御託に漏れずドイツ国民から慈悲深い偉大なリーダーだと思われていたことは言うまでもない。
恋愛においても、神秘性ほど異性を惹きつけるものはない。なぜって好奇心を掻き立てくれるから。不足した情報はもっと相手を知りたいという好奇心に変わり、妄想の中で勝手によいイメージを作り上げてくれるのである。
神秘性万歳である。
といってもどんな情報をだして、何を隠すかはとても重要なところだ。
私と夫は社内恋愛だった。付き合っていた当時、誰よりも遅く出社し誰よりも早く帰るのが自慢だった私は、夫よりも随分早く退社していたにも関わらず、帰宅は夫よりも遅いという謎の女であった。
夫からすると、とても神秘的に映ったようなのだ。携帯もスマホもなく、家に電話するしかない時代。
いつも家にいない女に男は神秘を感じるものだったのだ。
と、偉そうに語ってみたが計算していたわけではなく、習い事なんかで忙しかっただけで、意識高い系と思われると恥ずかしいから言えなかったというのが正解なんだけど。
退社後の居場所の情報不足が、妄想を膨らませ神秘性を生み出す。
一体どこで誰と何をしているのだろうか?遊び人の様には見えないのに……。
アンビバレンツも加わり頭の中は妄想劇場と化す。こうして脳内麻薬であるドーパミンが発動するわけだ。
こうなったらしめたもの。脳内麻薬を相手に生産させた方が勝ち。
恋愛におけるウソとはつまり情報を隠し自分を何割増しにも見せることだ。相手が勝手に妄想するわけなので、嘘つき呼ばわりされる心配はないし、誰かを傷つけることもない。
必死になって追いかけなくても、神秘性という嘘さえあれば意中の彼をノックアウトできるわけだ。これってコスパ最高だと思いませんか?
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