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メディアグランプリ

趣味を休むことをすすめる理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐々木 慶(ライティングゼミ・日曜コース)
 
 
「今日はどこに出かけないといけないんだろう?」
 
私はひどく焦っていた。
まるで、原稿の締め切りに追われる小説家のようだった。
 
遡ること、約20年前。
私は小学生だった。
同年代の友達と割とよく遊んでいたし、病気以外では学校を休んだことはなかった。
休日になると、家族で公園に行ったことをよく覚えている。
それに、年に一回は地元から少し離れた観光地へ家族旅行に行った。
端から見れば、何の問題もない、むしろ幸せな日常に見えたことだろう。
ただ、私の心の中はとてもモヤモヤしていた。
「もっといろいろなところに出かけたいなー」と。
しかし、当時私は小学生。
自分の意志で出かけられる場所なんて限られている。
どうしたらモヤモヤを解決できるのか、分からなかった。
 
中学校では、休日に練習試合や大会が多く、部活漬けの日々。
高校では進学高に進み、勉強漬けの日々。
日々の忙しさからか、だんだんモヤモヤした感情は薄れていった。
 
そんな状況が変わったのは、東北地方にある地元から東京の大学に進学してからだ。
学校が決めた時間割に沿って授業に出席していた高校の時までと違って、数ある講義の中から興味関心や取りたい資格に合わせて、自ら時間割を組んでいく。
複数の資格を取りたいのであれば、講義も多く入れないといけない。
ただ、学校の先生になることを目指していた当時の私にとって、必要な資格は教員資格のみ。
 
自然と、空いている時間が増えた。
サークル活動やら、飲み会やらで何かとお金がかかる大学生活。
空いている時間には、アルバイトも多く入れた。しかし、それでも時間が余る。
暇な時間があると、やはり人は物思いにふけってしまうらしい。
「いろいろなところに出かけたい」
また、あの感情が戻ってきたのだ。
解決策が分からず、ただモヤモヤした日々を過ごしていただけだった小学生の頃。
しかし、この時の私には小学生の時とは大きく状況が異なっていた。
自分が思うように使える時間を手に入れたのだ。
やっと、いろいろなところに出かけられる!
 
そんなことに気付いた私は、堰を切ったようにいろいろな場所に行った。
ひたすら鈍行列車を乗り継いで出雲大社に向かった、島根旅行。
平日の夜に急に思い立って夜行バスに飛び乗った京都旅行。
魚を食べたい、ただその理由だけで片道3時間、レンタカーを走らせた千葉旅行。
数え上げれば、きりがない。
高校生まで「出かけたい欲求」を満たせていなかったことも相まって、本当に楽しかった。
まるで、定期テスト明けの時のような解放感に満ちていた。
モヤモヤともおさらばできた。
 
周りの人々の私に対する見方もだんだん変わってきた。
「佐々木さんって、よくいろいろなところに出かけて楽しそうだよね」
そんな声が聞こえるようになった。
 
自分にとって、出かけるのが楽しい。周りからもよく出かけている人と思われている。
特に何の問題もなかった。むしろ、順風満帆だった。
しかし、これがまたモヤモヤに苦しめられるきっかけになろうとは、この時は知る由もなかった。
 
大学を卒業して、社会人になってからは、出かける頻度がさらに多くなった。
出かける場所は就職後新たに住み始めた群馬県内はさることながら、埼玉、栃木、長野など近隣の県、大学時代を過ごした東京など様々。
働き始めたことで、学生時代よりもお金に余裕ができたことも、出かける頻度の増加に拍車をかけた。
知らない場所、知らない人たちを新たに知る。
行った場所のことを周りの人に話し、話が弾む。
そんなことができる、出かけるという行動が相変わらず楽しかった。
 
しかし、一方でこんな気持ちが心の中に出てくるようになった。
「今度は○○に行かないといけないかな?」
 
出かけることが義務のように感じるようになってきたのだ。
もっといろいろに出かけなければ。
よく出かける人、という私のイメージを崩してはいけない。
 
義務感と焦燥感が心を覆い始めた。
出かけることがだんだん苦しくなってきた。
 
しかし、出かけることを止めることができなかった。
周りの人との話題がなくなってしまうという恐れもあった。
ただ、それよりも止められない理由があった。
 
それでも、出かけることが好きだったのだ。
人生を楽しくしてくれた「出かける」ということを嫌いになるなんてできなかったのだ。
 
このように、悶々としながら出かけることを続けていたある日のことである。
大学時代のサークルの友人に会うことになった。
 
久しぶりの再会ということもあり、大学時代の思い出話やお互いの近況で盛り上がった。
話が一段落ついたところで、私は友人に自分の悩みを打ち明けた。
出かけるのが好きなのに、なぜこんなに苦しいのか、と。
そうすると、友人からこんな答えが返ってきた。
 
「まずは、何も考えず出かけることを休めばいいんじゃない? どんなに好きな趣味でも休まなかったら、そりゃ疲れちゃうよ」
 
友人の言葉にはっとした。
思えば、出かけることにこだわるあまり、休日はひっきりなしに出かけていた。
家で過ごすことは、まずなかった。
いくら好きな食べ物だからといって、ずっと食べ続けていたらお腹を壊してしまう。
趣味も同じだ。やり過ぎで胸焼け状態になっていたのか。
そう気付いた私が自身にできることはただ一つ。
 
よし、休もう。何も考えずに。
 
それからというもの、休日には必ず趣味を休む時間を作った。
その時間はただ、家でのんびりするだけ。はじめは慣れずに、違和感しかなかった。
 
しかし、どうだろう。
だんだんと苦しさがなくなってきた。また、自然と出かけたい感情が出るようになった。
苦しくなる前よりも、もっと出かけることが楽しくなった。
それもこれも、趣味を休む日を作ったおかげである。
 
今では、休日のうち、半分は趣味の時間、もう半分は趣味を休む時間にするのが私の日課になっている。
 
楽しい趣味をしているのに、なぜか苦しい、疲れてしまうという、そこのあなた。
 
趣味を休む時間を作ってみてはどうでしょうか。
おすすめですよ。
 
 
 
 
***
 
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2020-04-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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