メディアグランプリ

パジャマ、着てますか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:大田知賀子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「わぁ、こんなに肌触りよくて、気持ちいいんだ」
 
大人になってから、久しぶりの再会になる。
実家を出てからずいぶん長い間、寝るためだけに“パジャマ”を着ていなかった。
 
小学生の頃は確かにパジャマを着ていた。お風呂から出たらパジャマを着ることが寝る準備だった。夏は麻素材のパジャマを着て、冬は少し起毛が入っている温かいパジャマを着ていた。
中学校に入り、体育や部活でジャージを着るようになったころから変わった気がする。ジャージとの出会いがターニングポイントになった。
短くなって裾を切ったジャージとTシャツが、パジャマに取って代わった。
パジャマを着るよりも、ジャージにTシャツを着て寝ている方がかっこいい気がしたのだ。当時の私にとっては、パジャマは少しかしこまっていて、いい子が着ているもののような感じがしたのだ。首回りがヨレているTシャツでも、青春の1ページを刻むには、その方がカッコイイと思っていた。
 
そんな気持ちのまま大学生になったある日、第1次パジャマブーム(自称)がやって来た。
ジェラートピケという手触りフワフワの、つい顔を埋めたくなるような生地を使ったパジャマがブームになった。女の子のカワイイ魂をくすぐるパステルカラーで、クマのぬいぐるみのようなモコモコ感。思わず抱き着きたくなる触り心地だった。
友達の家にお泊りに行くと、お風呂から出てきた友人がジェラートピケのパジャマを着ていた。上着はフワフワ、下のズボンはショートパンツくらい短い。ショートパンツから伸びる足には、指先が出る靴下みたいなものを履いていた。
「パジャマ、かわいいね。足にはいてるの何?」と私。
「これね、足のむくみがとれて、足が細くなるんだよ。履きなよ~」と友人。
足をケアするクリームまで塗っているじゃないか。
 
女子力! ……わたしは内心、だいぶおののいていた。
寝るためにこんなに気合いを入れている人がいるとは……。
 
Tシャツとジャージを着てカッコイイと思っている場合ではなかった。
 
でも長年しみついたTシャツとジャージ生活。
楽だし、エコだな! という気持ちもあり、なかなか抜け出せない。
 
彼氏ができたら変わるかな? と思っていたが、残念ながら変わらなかった。
彼の大きいTシャツを着る方がワクワクしたし、お揃いのスエットを着ていた方が楽しかった。
子どもが生まれてからはなおさら、引っ張られたり、突然の嘔吐にも動じない、ヨレヨレのTシャツが強い見方になっていた。
 
そして最近、パジャマの第2次ブーム(自称)が来たのではないかと思う。
友人が4万円もするパジャマを買ったのだ。
「4万円!? パジャマに? 寝る時しか着ないのに??」
思わず聞いてしまった。
1日のうち、約8時間寝るとすると、3分の1の時間は眠っている。ということは、人生の3分の1の時間を睡眠に費やしているのだから、大切にすべきだと友人は語った。
ごもっともだ! それは理解できる。でも、なんで4万円もするの?
 
生地がオーガニックコットンで出来ているらしい。
“オーガニックコットン”最近よく耳にする。
ただのコットン(綿)ではなく、栽培する過程だけでなく、製品にする過程でも環境や人への負荷を最小限に抑えたもの。そして、労働の安全や児童労働などの人権にも配慮して製造されている製品をオーガニック製品と呼ぶそうだ。
コットンが採れる気候が限られていることに加え、オーガニック基準での生産には数年かかる。個人のお店のオーナーの想いでパジャマを作ろうと思うと、高額になってしまうせいで、4万円もすることがわかった。
 
そのオーガニックコットンのパジャマは肌への刺激がなく、気持ちよく眠れるらしい。4万円もするから、特別感もひとしおなはずだ。
すごくいいよ! 着てみて! おすすめ! と言われたが、4万円か……と思っていた。
 
しばらく経ったある日、GUからオーガニックコットンのパジャマが発売されるという記事をみつけた。なんと、2,990円!!
すぐに友人に知らせると、GUは大規模契約ができるお蔭でステキな値段でパジャマを作れることを教えてくれた。
 
GUのお手頃価格+オーガニックコットンという魅力的な素材の力を借りて、ついにパジャマに帰る決心をした。
 
お風呂から上がり、袖を通したときの“ふんわり”感、気持ちいい!
コットン生地が柔らかく、肌に貼り付かず、ほどよく身体を包み込んでくれる。お風呂のホカホカも、いつまでもキープされている。いつも着ているパジャマ用Tシャツのクタットした重みはなく、着ているというよりは、まとっている感覚だった。
あまりの気持ちよさに、テンションが上がった。
布団にもぐってみると、布団の重みでコットンが肌に密着し、心地よい。
 
パジャマの気持ちよさがようやくわかった。
夜の時間につけるダイヤモンドのような感じがした。小さい粒でも、身につけるとテンションが上がり、自分を大切にしている気持ちになれる。少し落ち込むことがあっても、身につけていると元気をくれるもの。
寝るためだけに作られているパジャマは、自分を大切にして、1日お疲れ様と癒してあげるのに、うってつけだ。
1日頑張った自分を癒し、幸せな気分になれる。
 
私にとっては、ダイヤモンドを初めて買ったときのような、大人の階段を1段登ったワクワク感があった。パジャマを1組買ってみただけで、夜の時間が楽しい気分になるなんて。
ちょっと落ち込んだことがあっても、パジャマが優しく包んでくれる。なんて身近な、優しい存在。
 
ダイヤモンドまでは手が届かないけれど、まずはパジャマを着て、贅沢な気分になってみませんか?
 
 
 
 
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2020-04-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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