「半農半X」は「X」が大事
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:安平 章吾(ライティング・ゼミ平日コース)
「お前は言われたとおりに仕事をすればいいんだ!」
課長から激怒された。
私は一般的には大手企業と言われる会社に入社し、サラリーマンとして勤務して8年目になる。
入社当時は会社に誇りを持っていたし、家族も喜んでくれた。会社の福利厚生も充実し、休日も取りやすく何不自由なく過ごしていた。
しかし、日々の業務を過ごす中で、今の組織での働き方に対して徐々に疑問を持つようになり、不満が溜まってきた。
資料の内容だけを指摘され、言われた内容でひたすら修正を繰り返す。
準備した資料をもとに開催する会議は集まるだけで全員が好きなことを言い合い、具体的な内容は何も決まらない。
指摘は多いが、役員や部長に対して意見を言わず、業務を変えることに対して責任を取らない課長。
そして、お客様からのクレームは全て末端の職員で受け、解決まで対応しなければならない。ときにはお客様を騙すように、自分の本心とは全く逆の言葉で契約を取ってくる。
「何のために仕事をしているんだろう」
「私でなくてもこの仕事ができるのではないのか」
昨年から常にこの考えが頭の中にある。
そのため、自分で理解できない内容であれば課長に意見を言うようにになった。
「この仕事、何の意味があるんですか。」
「この仕事はこう変えた方が良いのではないですか。」
と必ず聞くようにした。
しかし、課長からは回答が無く、質問する度に同じ言葉で怒鳴られた。
何度か同じやり取りを続けるうちに、課長は私の意見ではなく、言われたことを忠実に遂行することが求められていると理解した。
「考えることに疲れた。こんな職場、辞めてしまおう」
そう思い始め、自然と特に目的もなくハローワークのアプリを使って毎夜2時間ほど仕事を検索したり、転職エージェントへの登録を行って他の仕事の情報を収集するようになっていった。
同時に「今の仕事を辞めたい」が口癖になった。家族に対しても仕事から帰るなり「辞めたい」と言い続け、この言葉をきっかけに雰囲気が悪くなり、ときには喧嘩にも発展した。
「この状態を残り30年も続けるのか、家族にまで迷惑をかけて。」
深刻に悩み始め、家で1人でお酒を飲むようになった。
その状態を見兼ねて、ある日妻が言ってくれた。
「家族のためを想ってくれるなら転職しても良いんじゃない。自分の好きなことをまず探してみたら?」
何よりの気がかりが家族のことであった中、妻の言葉で救われ、違う職を選ぶことができるようになった。
新しくチャレンジしたいものとして、1番初めに思いついたのが農業だった。
実家が農業であったことから自分もいつか携わりたいという気持ちと、子どもに父親の背中を見せてやりたいという想いから農業に興味を持っていたためである。
ただ、妻と子どもが2人いるため、農業だけでは生活できず、養うことができないと思った。
そのため、今の仕事を続けるか、少なくとも非常勤の形で別の仕事に就いた上で、好きな農業に携わることで計画を建てた。何より「半農半X」として、今の時代の流れに沿った考えだ。
すぐに市役所に行き、新規就農指導員の農家さんを紹介してもらい、訪問した。
優しそうな農家さんであったため、正直に話してみようと思い、会ってすぐに農業を選んだ理由を話してみた。
「今の仕事を辞めますが、可能であれば、半農半Xという形で別の仕事をしながら就農したいと考えています。」
しかし、私の言葉で農家さんの態度が一変した。
「農業を舐めてんじゃねぇ!」
職場ではないのに激怒され、かなり驚いた。
「毎日必死になって農業で稼ぎを出している人にとって、半分の力だけで農業に携わることは農家を馬鹿している」
と早口で言われた。
間髪入れずに言われた。
「まず、Xがしっかりしてないやつに何ができる!農業以外の仕事を片手間のように考えるな」
この言葉が1番心に突き刺さった。
正直なところ、「半農半X」の形を選んだ理由は自分の甘えが出ていると薄々感じていた。
中途半端な考え、自分に対する甘えを見抜かれてしまったのかもしれない。
「ライフスタイルを変えたいという理由だけでは農業は止めたほうが良い。もう一度自分が何をしたいのか考え直して、その上で農業を選択するならおいで。仲間になるなら歓迎するよ」
何も言えなくなった。
その日はそれから少しだけ農場を見せてもらい、お礼を伝えて帰った。
そして、家で農家さんから言われた言葉を振り返って、自分の考えに芯がないことを改めて痛感し、何かに本気で取り組む覚悟が不足していた。
そう思い、まずは自分を見直すことにした。
自分が夢中になったこと、興味があること、得意なことを洗い出し、何が仕事に結びつくのか、毎日、考え続けた。
農家さんに会ってから半年が過ぎ、サラリーマンとしてもこの4月から9年目に突入する。
正直なところ、まだ答えは見つかっていない。
しかし、心持ちは今までと違う。
いつでも辞めたらいいと思うと余裕が生まれ、仕事や家事、育児が忙しい中でも、空いた時間で色々な人のところへ足を運び、その人の仕事について話を聞いている。
そして、本気で学び、仕事につなげたいと思ったものには、時間とお金を投資をして日々勉強をすることにした。このライティングゼミもその1つである。
何も変わらず、気がつけば定年退職するまで同じ職場にいるかもしれない。
しかし、今の職場で仕事を続けたとしても、自分の何かが変わっているのを実感している。
課長に言われた働き方にしない。
職場の文句を言うだけは止め、行動につなげる。
そして、今の職場を離れるとしても、今与えられた自分の中での「X」を確立させる。
その上で、新しい世界への準備を進め、自分の中で納得できるタイミングで飛び込んでみたい。
30代を過ぎ、世間一般では転職期を過ぎているが、 自分の中での新たなチャレンジを楽しむことにした。
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