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メディアグランプリ

料理と経営は似ているかも


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:渡邊真澄(ライティング・ゼミ通信コース)
 
 
平日午後3時のスーパーは、いつもなら買物客はまばら。通路もカートで楽に通れて、レジもほとんどならばない。だが、先週は違った。買い物客が多く、レジは全て長い列。5日分ほどの食材をカゴに入れてレジに並ぶと、目の前には20代らしき男性が並んでいた。「この時間帯にこんな若い人、珍しいなあ。コロナの影響で在宅勤務なんかな」と彼の後姿を見ていた。レジ台にどんとカゴを2つ乗せた彼。中身が目に入って驚いた。

カゴの中には20個以上のカップ麺が入っている。もう1つのカゴはペットボトルの水でいっぱい。

これで1週間ほど過ごすのだろうか。「おにいちゃん、これはあかんで。食事はちゃんとせな、コロナかかるで」と心の中の声が出そうになった。せめてご飯炊けて、お味噌汁だけでも作れたらええのに、と、彼の後姿に大学生の息子が重なった。
 
帰宅後、息子にそのことを話した。「俺は大丈夫や。米は炊けるし、野菜も入れて味噌汁作れる」と彼は答えたが、私が数日不在の時にご飯炊いて味噌汁作るだけ。それ以外は、ほとんど料理などしない。一人暮らしになったら、どうなることか。「料理はな、たまにやるくらいでは、出来るようにならへんねん。毎日ちょっとずつでもやらんと、いつまでたっても出来へんで」と、つい小言が出てしまった。それは、私が10歳のころから、家族の晩ごはんをつくってきたからだ。
 
両親ともに中学校の教員をしていた我が家は、母方の祖母に晩ごはんを用意してもらうことも多かった。しかし、私が小学4年生になり包丁を使い始め、自分で卵焼きを作れるようになると、「サラダだけでも作っておいて」と母から頼まれるようになった。
 
トマトときゅうりを切りレタスをちぎって盛り付けただけのサラダから、炒め物、煮物と母から頼まれる料理はどんどん本格的になっていった。最初からうまくできたわけではない。とんでもなく辛いきんぴられんこんや、全く味のない煮魚なども作った。父と兄は黙って食べて、母はそのたびにコツを教えてくれた。高校生になると、母が忙しい時期は私が買い物から料理までにやっていた。部活を早退して、買い物して帰宅。晩ごはんを作っているそばで、兄がコタツに入ってテレビを観ていたときは、「ちょっとは手伝えや!」と腹が立って兄の背中に言ったこともある。平日はワンオペ育児なのに、週末自分の趣味に没頭する夫に腹を立てる妻と、あの時の自分が重なる。
 
私ばっかりごはん作らされていると愚痴ったとき、「今はなんで私ばっかりって思うこともあるやろ。そやけどな、大人になったとき、料理できる自分でよかったってきっと思うで」と祖母に言われた。その時は祖母の言葉に素直に頷けなかったが、大人になって祖母の言葉の意味がわかった。
 
20代、海外で暮らして居たとき。現地で買える食材をやりくりして、時々日本食を作って食べていた。その時の日本食は、どんな豪華なレストランで食べる料理より美味しかった。30代で結婚出産したとき。自分と家族のため、美味しいもの、からだにいいものを意識した食事をつくるようになった。息子は「ごはん、味噌汁、焼き魚、おひたし」という、和定食が好きな子どもになっていた。「料理できるようになっててよかった」と、その時々で思った。祖母の言葉を思い出して、「おばあちゃん、ほんまやな。おばあちゃん言うてた通りやわ」と思っていた。
 
料理ができるということは、自分の感覚で決められることがひとつ増えるのだ。食べたいものを、自分が「美味しい」と感じる味でつくって食べられる。誰かの「美味しい」に合わせなくていい。自分の感覚で決めてつくれるのだ。味だけではない。自分で料理することにより、季節やその日の暑さ寒さ、自分や家族の体調に合わせた食事をとる事が出来る。自分の身体、家族の様子をよく観て、必要なものを食事に取り入れる。自分と家族の身体を整え、支えることができるのだ。
 
私はその立場になったことはないが、経営者に似ているのかなと思う。自分の感覚を信じて決める。それだけではなく、会社の状態をよく観察し、必要なものは取り入れ、害になるものは取り除く。自分だけでなく、社員とその家族の生活も支える。いやいや、経営の方が料理より大変やな。
 
経営は全ての人が始められるわけではないけれど、料理ならほとんどのひとが始められる。小学生から大人まで。性別も関係ない。子どものころから始めた方がそりゃいいけれど、大人になった今でも遅くない。失敗しても1食分不味いごはんを食べるだけだ。
 
カップ麺を大量買いしていたあのおにいちゃん。いつの日か料理の楽しさと大切さを知るときがくればいいな。いやいや、あのおにいちゃんの心配する前に、時間を持て余している大学生になった息子に、もうちょっと料理を教えておかないと。祖母に言われたあの言葉も、忘れず伝えておこう。
 
 
 
 
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2020-04-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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