模試でE判定を出し続け「太陽は西から昇る」と答えた息子が早稲田大学を受験した話
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記事:渡邊真澄(ライティング・ゼミ通信限定コース)
「太陽って西から昇るやんな?」
息子の言葉に驚き、ため息が出た。「お前はあほか」と久しぶりに言った。2月2日、高校3年生の息子、大学受験初日。帰宅してすぐ私に言ったのが、これだった。世界史の試験でオリエントの語源に関する出題があったらしい。解答の選択肢に「太陽が西から昇る」というのがあった。受験生が真っ先に正解から外す選択肢を、なんと息子は選んだのだ。
「そんなあほあほ言うなや。そこ間違えても、他の問題で挽回してたら大丈夫や」私は全く大丈夫と思えなかった。高校3年生になって間もなく受け始めた模擬試験。受験本番まで5回は受けただろうか。息子の模擬試験結果が届くたび、第三志望までの大学名の下にある合格判定欄は、DとEの文字だけだった。それ以外のアルファベットは、最後の模擬試験の結果でも見ることはなかった。そして迎えた受験初日。帰宅した息子の言葉。もうこれはあかん。私は息子の現役合格を早々に諦めた。だが、息子は気にしていなかった。「大丈夫。今日は初日。しかも第三志望や」と言い、ベッドにごろんと横になった。その日の夜はぐっすり休み、翌日から予備校の自習室へ通った。
そして2月の第2週。リビングのカレンダーには、連日または一日置きに息子の受験予定が書きこまれていた。第3週になると、早稲田大学5学部の入試が続いた。息子の第一志望大学。どうしてもこの大学で勉強したいため、迷った末に5学部受験することにしたのだ。「合格したら、そこで4年間勉強するんやで。そやから、ほんまに自分が勉強したいことができる学部を選びや」願書提出前に息子に強めに伝えた。結果、息子は5学部を受験した。
この週、並行して第二第三志望大学の合格発表が始まった。太陽は西から昇ると解答した大学は不合格だった。当然だ。しかし、同日発表されたセンター試験利用枠で合格していた。驚いた。1月のセンター試験、受験しておいてよかった。その後、第二志望大学の合否発表。自信があったと言っていただけあり、合格。親子で一安心した。
そうして迎えた早稲田大学の受験。「全然出来へんかった」「出来たかどうかもわからへん」
5回の受験、息子は帰宅すると毎回どちらかをつぶやいた。「もっと早めに受験勉強始めておいたらよかったなあ」と息子にしては珍しく、後悔を口に出し始めた。
早稲田大学の合格発表がすべて終わった。スマホで確認するたびに、表示される不合格の文字。息子の願いは叶わなかった。「俺、あの大学通うんか。でも、キャンパスきれいやったし、食堂もきれいやったし。あそこで勉強できるならええかな」息子は第二志望大学に通う自分を想像し始めていた。だが息子の受験はまだ終わっていなかった。2つの学部の合格発表で不合格の下に「補欠者」の文字があったのだ。入学手続者に欠員が生じた場合のみ、補欠者の中から成績順に補欠合格者が選ばれる。「まだ終わらんのかあ」とぼやきながらも、息子は最後の結果が出る3月半ばまで過ごすことになった。
ついにその日がやってきた。午前9時、早稲田大学社会科学部、補欠合格発表。その日は第二志望大学の入学手続き最終締め切り日だった。この日の午後、大学へ行き手続きをして学費納入書をもらい、前期の学費全額を銀行窓口から振り込まなければ、息子は4月から大学生にはなれない。アルバイトと受験勉強の浪人1年生確定だ。リビングのテーブルに銀行通帳を置いて、私は出かける用意を始めた。ひとりで発表見たいと、息子は自室に入りドアを閉めた。数分後、息子の部屋のドアが開いた。「やったで!」息子が私の目の前にスマホ画面を差し出した。合格の2文字があった。早稲田大学社会科学部補欠合格。息子が第一希望としていた学部だった。
「俺なんで合格できたんやろなあ」数日たって、息子が私に聞いてきた。本人はよくわからなかったようだが、私は日々の息子をみていて心当たりがいくつかあった。
予備校でも、高校でも、息子は授業の後先生に毎回しつこく質問していた。予備校では、授業の後質問のために講師室で並び、帰宅が遅くなることもあった。「わからんことそのままにして帰るのいややん。でも、質問したら先生らは丁寧に説明してくれて、ようわかるねん」と話していた。高校でもそうだ。息子が好きな世界史の先生は、授業だけでなく問題集でわからなかったことも答えてくれたそうだ。わからないことは、わかるまでしつこく聞いて教えてもらっていた。そして、息子は最後まで早稲田大学合格を諦めなかった。E判定が出続けても、自信がなくても、諦めなかった。息子が持ち続けた諦めない心と、そんな彼に向き合って応援してくれる先生たちがいたこと。「それが理由やと思うで。このこと、忘れんときや」と息子に伝えた。
「俺が早稲田受かって嬉しい?」高校卒業式の日、息子に聞かれた。「卒業おめでとう。あんたが自分で望んだ未来を、自分の力と周りのひとの応援で叶えたことが嬉しいわ」私は笑って息子に伝えた。
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