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深夜25時、ロンドンで迷子になる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:AI(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 

「ここはどこ?」

深夜25時、ロンドンで迷子になった……。
携帯電話の充電は0パーセント……。
自分がどこにいるのかもわからない……。
近くに交番もない……公衆電話もない……。
絶体絶命の危機に立たされていた。

 

その時、1軒の灯りがついたハンバーガーショップが見えた。すると、カウンターに一人の男性客がいた! 藁をもすがる気持ちで男性に声を掛けてみると……。

 

これは、私がロンドンにいた時の出来事だ。
2015年5月、語学留学のため、ロンドンに飛び立った。ロンドンでは25歳以上の社会人が集う語学学校に入学した。この学校では週末を利用して、様々なイベントが開催された。ロンドン生活がスタートして、2週間目の金曜日。私はクラスメイトと一緒に学校のイベントに参加した。この日のイベントは、クラブに行ってスクールメイトとの会話を楽しんだり、踊ったり、お酒を飲んだりして親睦を深めること。スクールメイトは25歳以上から70代までと年齢が幅広く、出身国もバラバラ。クラブでの会話が弾み、楽しい時間はあっという間に過ぎた。気が付くと時計の針はもうすぐ24時。私は翌土曜日も朝から授業だったので、一人その場を離れた。携帯電話の充電が5%しかなかったが、クラブから家までの帰り道は学校の登下校と同じルートだったので、電車の時間を調べることはしなかった。

 

『今日は週末だし、遅くまで電車が動いているはず』

 

この楽観的な考えが後に、大きな騒動を巻き起こすことになる。
ロンドンに滞在する2年前、オーストラリアのシドニーにいた。シドニーは週末になると、電車とバスが24時間走っていた。ロンドンも都会なので、24時間、電車が走っていると思い込んでいた。
 

最寄り駅まであと少し。すると、車内アナウンスが流れた。
「この電車は当駅止まりの最終電車です」
 

『えっ!???』
『週末は電車24時間営業じゃないの!?』
 

私の思い込みは、打ち砕かれた。最寄り駅まであと1駅ってところで電車が止まったのだ。仕方なく、電車を降りて駅を出た。すぐ近くにバス停がいくつか並んでいた。家方面に向かうバス停があった。しばらくすると、2階建ての赤い“ロンドンバス”がやってきた。実はロンドンでバスに乗るのは、この時が初めてだった。ロンドンバスに乗ってみたかったので、少しテンションが上がった。バスのルートは電車と違い、住宅地を走った。バスに乗ることも真夜中に一人でいることも初めて……本当に家に帰れるのか不安になった私は、隣に立っていたおじさんに家の最寄りのバス停までどれくらいか尋ねることにした。するとおじさんは、
「そのバス停は終点だよ」
と優しく教えてくれた。しかし、
『あれっ、終点の地名、違う名前じゃなかったかな?まぁいっか……』
私は、おじさんの言葉を信じ、終点まで乗っていくことにした。しかし、家までこんなにかかるのかというぐらい、バスは進み、終点までやってきた。
 

『ここはどこ……』

 

見たことのない場所だった。運転手にこの場所がどこか尋ねると、
「Bloomberry(ブルームベリー)という場所だよ!」
 

……。

 

私が住んでいる場所ではなかった……私が住んでいるのは、「Brockley(ブロックリー)」というブロッコリーみたいな名前だった。バスの中で親切にバス停を教えてくれたおじさんは、きっと私の発音が悪く、「R」の発音が「L」に聞こえてしまったのだろう……。
バスの運転手にBrockley行きのバスを尋ねると、
「バスは朝まで来ないよ」
 

『……』
『地図見ながら歩いて帰るか……』
 

カバンから携帯電話を取り出し、家までのルートを調べようとした瞬間、携帯電話の充電が切れた……最後の頼みの綱だった、携帯電話も使えなくなった……。
『どうしよう……』
 

本当に困り果てた。ここがどこかも、家までどれくらいの距離かもわからなかった。近くに交番もなく、辺りは真っ暗だった。ロンドンに来て11日目の深夜25時、私は迷子になった……深夜の住宅街はシーンと静まり返っていた……しかし、遠くに灯りが見えた。助けを求めて灯りに向かって歩き出した。すると、そこはテイクアウト専用のハンバーガーショップだった。幸いなことに、男性が一人、商品が出来上がるのを待っていた。私は、この男性にかけた。迷子になったこと、Brockleyという場所に行きたいことを必死で伝えた! すると、男性が、

 

「アナタ 日本人 デスカ?」

 

と日本語で話しかけてきた。

「はい、日本人です! 助けてください!!」

 

映画『世界の中心で、愛をさけぶ』の名セリフ並みに、日本語で叫んでいた!
奇跡の瞬間だった。すると男性は、
 

「シンパイ シナイデ! ボク アナタノ イエマデ イッショニ アルキマス。イエハ  チカイデスヨ」

 

ハンバーガーショップで買い物をしている人が私のヒーローになるとは思わなかった!しかも、神戸で働いた経験があり、片言ではあったが日本語で会話が出来た。彼は友達との飲み会の帰りで少し酔っていたが、家までの帰り道、ヒーローとの会話を楽しんだ。家まで近いと言っていたが、1時間ほど歩いた(笑)。
家に着くころには26時を回っていたが、突然現れたヒーローのおかげで、私は家まで無事に帰ることが出来た。ヒーローの優しさは一生忘れない。
 

迷子になったことで、たくさんのことに気づかされた。帰りが遅くなる時は帰りのルートや電車の時間を調べること、携帯電話の充電状況にも気を付けること。発音を矯正すること。私は特に「L」と「R」、「B」と「V」の発音が下手くそだった。自分では発音通りに出来ていると思っていたが、英語圏の人には特にその単語の発音が伝わらず、会話に苦労していた。この迷子の経験から、発音矯正に力を入れた。おかげで半年後には、正しい発音が言えるようになった。
最後に、ヒーローから学んだこと。困っている人がいたら、手を差し伸べること。そんな人間になりたいと思った。
 
 
 
 

***
 
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2020-04-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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