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40才、独身女性が社交ダンスにハマっている理由。


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記事:喜多島みなみ(ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
わたしは現在40歳。独身である。趣味は社交ダンス。
なぜ社交ダンスにハマっているの? ときかれたらわたしはこう答える。
「片思いしているような、あのトキメキがもらえるから」
 
わたしの社交ダンスの記憶は、小学校1年生の父から始まります。
 
今から30年以上前、父は社交ダンスにはまっていた。
週に数回、夜いないことがあった。
仕事から帰宅して、シャワーを浴び、着替えて、楽しげに出掛けていく。
小学校1年生のわたし、年中の妹、1才の弟を、母は1人で面倒をみていたことになる。
 
その10年後。
2回目の社交ダンスとの接触はバラエティ番組で始まった『ウリナリ芸能人社交ダンス部』である。
 
当時のわたしには、杉本彩様の衣装はかなり刺激的!
見てはいけないものを見てしまっている気分。
 
なにより、中学校・高校と女子校へ進み、男性との交流がなかったわたしには、
社交ダンスというダンスがとてもいやらしいものに見えていました。
 
一方で、ダンスに夢中になる芸能人の姿から目を離せない自分もいました。
 
33才。学生時代、部活にもサークルにも所属したことのないわたしが、ラテンダンスを習い始めたのです。理由はありきたり。太ってきたから。運動不足だったから。
 
友人のダンス発表会で踊っていた女性の先生があまりにカッコよかったのです。
 
そこで、人生3度目の社交ダンスとの接触をすることになるのです。
 
習い始めたのはガールズラテン。女子だけで踊るスクールでした。
後から知ったのですが、それは社交ダンスの『ラテンダンス』というジャンルの踊りだったのです。(本来は男性パートーナーと一緒に踊るダンス)
 
女子だけでよかったと安堵したのを覚えています。
 
ガールズラテンを始めて3年たった頃、確りとダンスのステップを学びたくなったのです。
 
あれは忘れもしない38歳、7月の晴れた暑い日。
家から2駅ほどの場所にある、老舗の社交ダンススタジオに電話をかけました。
 
「あのぉ、HPを見て。体験レッスンを受けたいのですが……」
電話しながら、心臓がバクバク言いすぎて、呼吸が苦しい。
 
「はい、いつをご希望ですか?」
「できれば、今日」
「先生のご希望はありますか?」
「初めてなので、特にないです」
 
すぐに体験レッスンが予約でき、恐る恐る教室のある雑居ビルに入る。
エレベーターで6階をおす。
家を出る前に行ったばかりなのに、緊張でまたトイレに行きたくなる。
 
「こんにちは」
 
自動ドアをくぐると「こんにちはー」と元気な声で返される。
 
うっ、眩しい。
 
ひととおり手続きを済ませて更衣室に行き、早速、後悔することになるのです。
持ってきたウエアがキャミソール!
何でこんな露出高いものにしてしまったんだ!
 
着替えてダンスフロアに出ていく。
スニーカーから7cmのヒールに履き替える。
 
「じゃあ、お願いします!」
 
社交ダンスの先生って勝手におじさんをイメージしていたのですが、
担当してくださる先生が若い。お肌ピチピチ、きめ細かい。あらゆるところからフレッシュさが溢れている。
 
いきなり先生が左手をさし出してきます。
 
えっ!
 
「まず手の組み方から教えますね。」
 
急にもじもじし始めるわたし。
多分、彼にはこちらの困惑は伝わっていないだろう。
なにせ、16年間営業職をしてきているので、感情を表情に出さないことが得意なのだから。
 
そして、出会って5分もしないうちに私たちは手をつないだのです!
そんなことって人生でありますか!?
 
少なくともわたしの少ない男性経験の中ではありません。
 
そして次に彼の右手がわたしの腰に回ってくるのです。
 
えっ!? ちょっと待って! お昼食べた後だから腰のお肉のぷよぷよが気になるの。
しかも真夏日で汗かいてるから、あんまり近づかれたら絶対汗臭い。
歯磨いたけど、息が臭いとか思われたら嫌だから、うかつに呼吸ができない。
もう変な汗かいて脇汗が気になる。胸元にもつーっと伝ってくる汗。
 
もはやダンスのステップどころではないのです。
 
いろいろ恥ずかしくて、つい足元を見てしまう。
 
「踊る時は足元見ないで、僕を見てくださいね」
 
待ってください。今わたしが顔をあげたらキスまでのディスタンス(=距離)ってやつです。
流石のわたしも恥ずかしくて、もう表情を隠せません。
 
誤解の無いように言っておきますが、別にダンスの先生が変なわけでは無いのです。
ついでに申し上げますと、先生はイケメンです。
 
「ありがとうございました!少しスタジオの説明をするので座りましょう。」と
たった5歩程度しかない椅子まで、手を持ってエスコートしてくれるのです。
 
彼との時間は25分。すっかり忘れかけていたわたしの乙女心が蘇っていました。
 
帰りの電車でニマニマ。
速攻、仲良しの友人にLINEで報告。翌日も会社で仲良しの友人とニタニタ報告会です。
 
「月曜日は彼と会う日だから、残業はしません!」
平均帰社時間が22時のわたしは、月曜日だけど20:30の電車に乗るようになった。
彼との連絡用にLINEの連絡先を手にした時には、ウキウキしていた。
 
あれから2年、わたしは先生にかりそめの恋をし続けている。
レッスンの前の日には念入りにお手入れをする。
 
彼とのツーショット写真を携帯の待ち受け画面にしたり。
はたから見たらイタイ女なのだが、本人はそのかりそめのゲームを楽しんでいるし、気分が若くいられるので至って満足しているのである。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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