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メディアグランプリ

わたしが旅に出る理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中村里奈(ライティング・ゼミGW集中コース)
 
 
「新婚なんだから早く帰って旦那さんにご飯作ってあげないの?」という上司のセリフに私はポカンとし、とっさに返事ができなかった。「世の中では女性の社会進出を促す流れが強い。ここは女性が少ないから、結婚しても仕事を続けて頑張って成果出して!」って私に言ったのも上司である。平凡な私でも女子というだけで期待されるのは嬉しいし、その期待に応えたいから努力するのだが、ついつい遅くまで会社に居残ってしまう。それでお家で温かい食事を作って旦那を待てというのだろうか? できたらやりたいが、そんなスキルは私にはない。しばらくの間をおいてから、「そうですね」と小さい声で答えた。
 
私はいわゆるリケジョだ。リケジョに憧れたのではなく、理系の仕事がシンプルに好きだった。世間ではリケジョがもてはやされて、華々しく見えるかもしれない。だが、まだまだやはり男性社会なのである。男女関係なく成果を出すのだ!! の一方で『女性は結婚して、子どもを産み、仕事はそこそこで家庭を温かくし、旦那に尽くせ』なのだ。私の考えを述べようものなら「若いね」の一言で一蹴されてしまう。
 
その日の夜、初めて一人で海外旅行をしようと思った。GWの休みに入る1週間前だ。女性とかリケジョとか言われないところに行きたかった。旦那と行っても良かったが、彼を見ると旦那に尽くせというセリフを思い出してしまうから、一人になりたかった。行先はヨーロッパの小さい国、チェコの首都プラハで、古本屋で買った雑誌に掲載されていた写真がきれいだったから選んだだけで、観光できる内容なんて全く知らなかった。しかし、手ごろな価格の航空券を見つけたので旦那に相談する前にポチってしまった。
 
GW連休のはじめ、出発の前々日に40度越えの発熱があり、救急病院にお世話になった。解熱剤のおかげで微熱程度になったが体が重たい。でも、最近の情勢では考えられないことだが、予定通り出発した。
 
日本から16時間、無事にチェコに到着した。全く日本人がいない。チェコの公用語はチェコ語で文字も英語よりロシア語寄りで、看板も何が書いてあるか、周囲の人が何を話しているかわからなかった。知らない土地で文字も読めず一人ぼっちだが、不安はなく、むしろ安心した。誰かから女性だとか言われることもないし、言われててもわからない。人の言うことが気にならなくなった。そもそも一人のアジア人を気に留める人なんていなかった。
人の言うことを気にせず、自分の好きなことができるけど、さて何をしよう? やりたいことリストを作った。有名なお城に行く。教会で開かれるコンサートに毎晩行く。かわいい雑貨屋さんに行く。ビールが有名だからバーで呑む。現地の料理を食べる、などなどとメモをした。滞在期間は限られているし、そもそも体調も絶好調ではないから、本当にやりたいことを素直に優先順位付けした。
 
本当にやりたいことを素直に選ぶ、なんて当たり前だけど久しぶりにやった気がする。実は気づいたらやりたいことリストの内容を全部やっていた。そうか私って、やりたいことを実行する力があるのか、とも思った。
 
「I’d like to ~」 私は~が欲しい、したい、というセリフは海外旅行に行ったら数えきれないほど使う。公用語が英語でないチェコでも英語を使えばコミュニケーションをとることができる。私は英語が全く話せないわけではないが堪能ではない。まごまごしているとお土産物を扱う屋台で不必要なものを紹介され買わされてしまう。「それも可愛いけど、また機会があったときに……」なんて気の利いた間接表現はできず、「これしかいらないの!! No, I’d like this, only!!」と、思っていることをはっきり言ってしまうしかない。お城に行きたい、雑貨屋さんに行きたい、ごはんが食べたいという希望をダイレクトに伝えるのだ。ダイレクトにはっきり言うのだから、本当に自分が望んでいることを厳選して言っているのだ。
 
「私は、旦那と家事を分担して、足りない分はルンバや食洗器で補って、仕事をバリバリやって世の中に役に立つものを創りたいです」なんであの時上司に言えなかったんだろう? 今度からそう言ってみよう。批判されるかもしれないけど、少しずつなら私もやりたいことを実行できるかもしれない。
 
一人旅は自分の希望を正直に言える機会だと思う。素直にダイレクトに言わないと、楽しむことができない。大人になったら相手の考えを汲み取ることも必要だ。しかし、相手の考えや世間の評価に合わせて自分の希望を押し殺す必要はどこにもない。ときどき弱気になってしまうこともあるけれど、私は旅に出て自分の希望はなんだったか? と確認することにしている。
 
 
 
 
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2020-05-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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