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直感で洋服選びから始めよう

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山口畝誉(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
「やめなさい!」
 
私が部長にお酒を注ごうとした時だった。
 
「バカにされるからやめなさい! 海外では女性社員にお酒を注がせたりしない。やめないさい!」
 
35年前のことだ。私は当時新卒で入社したばかりの22歳。その部長の一言が私のキャリアの原点だった。
 
私は男女雇用機会均等法という制度が施行される前に就職活動をした。男女雇用機会均等法の説明はもはや必要ないだろう。
だが、当時まだ女性はクリスマスケーキと呼ばれていた。
 
「どういう意味? クリスマスケーキって?」
 
「クリスマスケーキって、ほら、25日までしか売れないでしょ。25歳を過ぎたら、売れ残りってこと」「……日本企業に入ったら、女性はお茶くみがしごと。3年で肩たたきよ。それを過ぎたらお局様」
 
そんな時代。長く、第一線で働きたいと思った。私には日本企業はムリだと感じた。それならばと、私は外資系企業の門を叩いた。
 
「お酒を注ぐのをやめなさい!」
それが新卒で入社した外資系企業での最初の教えだったのだ。
 
その外資系企業は私にとってカジュアルな洋服だった。着心地がよく、とても動きやすかった。それに似合っていた。言わずもがな、部長も社長も「○○さん」と名前で呼んだ。
 
その外資系企業では、帰国子女も多く、留学や転職は当たり前の環境だった。
英語にコンプレックスを持っていた私にとってアメリカ留学は中学生の時からの夢。
自由な環境に後押しされ、私もついに勇気を持ってアメリカの大学院への留学を果たすことができた。
 
帰国すると、なんのご縁か外資系のIT業界ばかりを渡り歩くことになった。実に7社。
 
変化の激しい外資系IT業界はスプラッシュマウンテンだった。
スピード感にあふれ、エキサイティング。予測不可能だった。
突然のCEO(最高経営責任者)交代劇が日常的に繰り広げられた。300名の会社が、あらよあらよと言う間に5,500名の会社になっていたこともあった。朝令暮改は当たり前。夜中の電話会議に毎月の海外出張。買収する側、される側。リストラも経験した。
 
2017年3月、買収される側の会社に勤めていた私はパッケージ(割増退職金が上乗せされたプラン)をいただいた。
 
「私も55歳。そろそろ世の中に還元するときだろう……」
そう思ってキャリアコンサルタントになった。自分を活かせるとしたら、コーチングやキャリアカウンセリング、はたまたコンサルティングかもしれない。なぜなら、これまで人生と向き合い、もがきながら、常にキャリアのことを考えてきたからだ。
 
「……ひょっとして、私がこれから貢献できるのは、変革が必要な日本企業かもしれない……」
うっすらとそんなことを考えていた矢先。不思議なもので、ご縁が訪れた。
それは、まさに「計画された偶発性」だった。
 
「計画された偶発性」とは、キャリア理論の一つの考え方だ。
キャリアはあらかじめ計画して作られるのではなく、80%の人は、一見偶然と思われる出来事や出会いによってもたらされるというのだ。そして、この「計画された偶発性」を引き寄せるのに必要な要素は5つ。
1つは「柔軟性」を持つこと。 2つ目は「好奇心」。 3つ目は「楽観性」。 4つ目は「冒険心、すなわちリスクをとること」。 そして5つ目は「持続性」だ。
 
確かに、私は仕事を辞めた後も柔軟性と好奇心を持って動き続けていた。悲観的になることなく、「なんくるなるさ〜(沖縄の方言で「なんとかなるさ」)を合言葉に。
 
そして、あたかも「計画された偶発性」のようなご縁をきっかけにオファーされたのは日本企業の役員のポジションだった。
 
おそらく、キャリアコンサルティングの勉強をしなかったら、日本企業で働くということは思いもしなかったかもしれない。
 
その大企業の日本企業は、古くて私にとっては新しかった。
 
「キーンコーンカーンコーン♪」
朝9時にならないと誰も電気をつけない。朝・昼・夕には遥か昔聞きおぼえのあるチャイムの音色が鳴り響く。月曜日には8時から朝会と呼ばれる会議。毎日15時から「ラジオ体操」
 
女性で役員は私1人。役員の喫煙率95%。役員の平均年齢60歳。
社員平均年齢46歳。男性社員比率85%。
 
私は役員として就任した。が、部下も組織もなかった。
話しには聞いていたが、カチカチの階層構造に目に見えない組織間の高い壁……。
いわゆる軍隊的組織だった。
 
その大企業と言える日本企業はヴィンテージ(古着)だった。とても完成度が高く、由緒正しきブランド。だが、私には窮屈で体に合わない。重くて固くて動けない。そもそもデザインも似合わないと無意識が感じていた。
似合わない服を着た私は、身動きが取れずに、自分を表現できず、自分が自分ではないような感覚に陥っていた。
 
2020年3月末、退任。契約更新することはなかった。
終わりは始まり。そして私はキャリアコンサルタントとして、ライフ・キャリアコーチとして、はたまた講師としてまず独立することを決心した。
その日本企業で働いたからこそ、改めて自分の人生の点と点をしっかりと結びつけることができた。
 
「だから私は外資系で働いていたのだ! 新卒で外資系に行った選択は正しかった!」「外資系IT業界はとても自分に合っていたのだ!」
 
そうはっきりと確信し、日本企業で働いたことにも大きな意味があった。そう人生を肯定することができた。
 
私は信じている。自分の無意識と歩調を合わせた時、扉が開くことを。
そして、「柔軟性」「好奇心」「楽観性」「冒険心」を持って続けてゆけば、誰もがキャリアを開いて行けると。
 
転機とは、何かの終わりであり始まり。新型コロナウイルスと同じような効果をもたらす。旧来の価値観や行動を大きく変えるチャンスにもなる。
 
誰もが自分に合った服を着て、自分らしく軽やかにイキイキと生きられるお手伝いをする。生涯現役を目指して。
これからどんな服を着てゆこうか。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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