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女が「女」でなくなる時


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記事:kotokoto(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「もう、女としての私は、終わったよ……」
 
数年前、友人にそう話したことがある。
 
30歳を過ぎて子どもを産んだ時、
これまで謳歌してきた私の「女」という生き方が、いよいよ終わったのだと思った。
 
もうこれからはずっと、この子の母親として生きていく。
しばらくは自分自身の時間なんて持つことができないし、
この子が成長し、やっと手が離れる頃には、私はもうすっかりおばさんになっているだろう。
 
だいたい、出産と授乳でこんなに身体がくずれるなんて、想定外だった。
お腹にできてしまった妊娠線。
こんな身体では、もう夏が来ても、大好きなビキニは着られない。
これからは、夫以外の人から抱かれることもなく
女性として見られることもないのだろう。
 
こんな考えは、少し私を寂しくしたけれど
そうかといって、それほど悲観していたわけでもない。
 
ただ単に、「あぁ、終わったんだな……」と、
私という人間の人生の第何章かが終わって、次の章に進んだんだ、という静かな気持ちだった。
受け入れたというか、まぁ、卒業という感じだろうか。
これからは母親として、新しい道を進んでいく。
女としての自分は、おしまい。
はい、卒業!
 
「そんなことないよ~」「まだまだこれからだよ~」
周囲の優しい言葉も話半分に受け取り、
私は静かに、自分という女を冷静にジャッジしていた。
 
それにしても、
私たち女性は一体いつ「女」でなくなるのだろう?
 
〇歳になったら?
出産したら?
閉経したら?
 
どれも違う気がする。
 
出産しても変わらず女性らしく、素敵な人はたくさんいる。
むしろ産後、以前にも増して可愛くなった友人も知っている。
私よりずっと年上でも、ため息が出るほど綺麗な女性もいるし、
いくつになっても潤いを感じる美しい老婦人だって、いるのだ。
 
出産経験や年齢なんて、人それぞれ。
あまり当てになるものではない。
 
それではと、夫の答えを聞いてみた。
すると、「性の対象として見れなくなった時かな」と返ってきた。
 
なんともストレートな答えだが、
……やっぱりそれも、正しい答えだとは思えない。
 
だって、人の好みは無数にある。
あくまで、「A男さんにとってB子さんは、女性として見る対象ではない」というだけの話で、そんな理由で「B子さんは女でない」と言うことなんてできない。
それに、たとえ今、B子さんの周りにそんな男性がいなかったとしても、それがなんだというのだ。まだ出会っていないだけで、世界のどこかに、B子さんのことを魅力的だと感じるC助さんがきっといるはずだ。
 
そもそも、誰かの「性の対象」でなければ、あなたは「女」ではないなんて、
そんなの可笑しな話だ。
 
「女」であることを決めるのは、本当に男性たちなの?
誰かのジャッジによって、あなたが「女」であるかどうかが決まるの?
 
ううん、そんな訳ない。
 
それなら
「母親なんだから、もう女ではない」
 
そう決めたのは、一体誰だろう?
 
あぁ……
そうか。
 
勝手に決めて、あきらめようとしていた。
正しくない、けれどもそれらしい理由を付けて、
自分の「女」を捨ててしまおうとしていた。
 
どうして?
 
怖かったから。
 
何が?
 
いつか女でなくなることが。
 
誰かに、もうあなたを女として見れないとジャッジされたり
誰からも女として求められなくなることが。
そんな日が来る前に、自分からさっさと手放してしまおう。
そうやって、ただ自分を守りたかったんだ。
 
本当は、いつまでも「女」でいたい。
いくつになっても、きれいにして、好きな服を着て、
女であることを謳歌して生きていきたい。
 
グリム童話原作のディズニー映画「塔の上のラプンツェル」で、
ラプンツェルは18年間、塔の外に出ることを禁じられていた。
「外の世界は危険だ」「お前は弱い」「外でやっていけるはずがない」
育ての親(悪い魔女)から呪いのように言われ続けていたが、ラプンツェルは自分の力を信じ、憧れの外の世界へと飛び出した。
 
私たちも往々にして、世間や自分自身から、呪いをかけられることがある。
 
もう母親になったから、
もう何歳だから、
こんな容姿だから、
誰も愛してくれないから、
美人に生まれなかったから、
太ってるから、
〇〇だから、
〇〇じゃないから、
 
ありとあらゆる理由を積み上げて、私達は知らないうちに、自分を守る高い塔を作り上げる。
けれども守るはずのその塔の中に自分を閉じ込めて、呪いをかけて身動きできなくしているのは、紛れもない自分自身なのだ。
 
そんな呪い、もう解き放とう。
自分が作った塔からさっさと抜け出そう。
そんな塔で守らなくても、私たちは大丈夫。
 
自分を美しくするのは、自分だ。
誰かの性の対象になんてならなくても、
いくつになっても、
ありのままの私たちは美しく、
いつまでも女でいられる。
 
大事なのは、自分が自分をどう見るか?だ。
条件付きの美しさではなく
本当の自分の価値に気づくことだ。
 
若い頃とはいろいろ違うけど、もうビキニは着れなくても、
あの頃には見えなかったことが見え、感じられなかったことを感じられるようになった。
もっと視野が広がり、人間として日々成熟している。
きっと今の自分にしか出せない魅力をたくさん持っている。
私たち、みんなそうだ。
今の自分の生命にこそ、真の美しさが宿っているのだ。
 
自分のことを最高の女性として扱おう。
決しておろそかにせず、
自分のことを大切に扱い続けよう。
 
本当の女性としての価値に目覚めよう。
いつまでも、女性であることを謳歌して生きていこう。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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