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新婚夫婦の新居がまさかの心霊マンションだったら


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:加藤里加子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
何か……いる。
 
真夜中にふと目が覚めて、思った。
寝室にしている6畳の和室、天井の一角に不気味な気配が漂っている。
寝る時も豆球を点けたままなので、室内は真っ暗ではない。怪しいものは何も見えない。
 
見えないけど、「何か」がいる。
 
隣で寝ている夫を起こそうか。
そう悩んでいると、突然、豆球が消えた。と同時に、不気味な気配が膨らんだ。巨大風船に圧迫されているように、圧が強くなる。
 
無視だ。別のことを考えろ。
 
こちらが意識すると、「あっち」もこちらを意識して、「かまってちゃん」になる。そんなストーカーは無視するのが一番だ。
 
圧に耐えながら無視し続けていると、やがて潮が引くように「何か」の気配は去っていった。そして、豆球が点いた。
 
「あー、点いちゃったよ」
 
隣で夫が呟いた。私と同じく、気配で目を覚ましていたようだ。
 
「消えたままなら、電球が切れたせいなのにな」
「アレがいなくなるのと同時に点いたね」
「まいったなー」
 
そんな会話を交わした後、私たちは寝直す。こんなことは日常茶飯事だ。
結婚して最初に入居した賃貸マンションでの出来事だ。
 
それは、1棟20戸程度のごく普通のマンションだった。住人は、当時の私たち同様、20〜30代の夫婦のみか、小さな子どもがいる家族がほとんど。最寄り駅が2つあり、私も夫も通勤に便利だから決めた新居だ。
 
それが、まさかの心霊マンションだった。
 
夫は頻繁に金縛りに逢う。夜中に怪しい気配で目を覚ます。昼間からラップ音がピシピシ鳴る。そして、そういうときは決まって、私の具合が悪くなる。頭が重くなったり、寒気で震えが止まらなくなったり、心臓が締めつけられるように苦しくなったりする。
 
「別のところに引っ越すか?」
 
住み始めて数ヶ月経ち、さすがに「この部屋には何かある」と思い始めた頃、私の体調を心配して、夫が提案した。
 
私は反対した。
結婚式、新婚旅行、新居への引越し、その他もろもろの出費から、家計は立ち直っていない。引越しをする余裕はなかった。
 
心霊現象なんて、ギックリ腰みたいなものだ。もちろん、来てほしくはないが、来ちゃったら仕方がない。安静にして、じっと耐えて、やり過ごせばいいのだ。うまくつき合えれば、日常生活に支障をきたすことはない。
 
そして、私たちはその心霊部屋で、4年間暮らした。
 
4年間で、私たちの両隣の部屋は、何度も住人が入れ替わった。1年以上住んだ人はほとんどいない。最速では2ヶ月で出て行った夫婦もいる。マンション全体で見ても、私たちの両隣だけ異常だった。
 
もしかすると、隣の部屋でも同じようなことが起きている?
 
当然の疑問が湧いた。でも、
 
「お宅の部屋で、心霊現象はありますか?」
 
とは、聞けなかった。
本気でそんな話をするのは、超常現象に憧れる中二病のお子様か、雑誌「ムー」の愛読者くらいだ。普通の社会生活を送る人にそんなことを言えば、ドン引きされる。
 
隣の住人たちも同じ気持ちだったのかもしれない。「お隣もそうなのかも?」と思いながらも、それを口にすることはできない。怖い思いをして、でも誰にも相談することができずに、ひっそりとマンションを出ていったのだろう。
 
4年経って、引越しできるだけの金銭的余裕ができ、私たちは心霊部屋を退去した。最後に大家のおばあさんに挨拶に行くと、引越しの理由を聞かれた。
 
「転勤するので、もっと便利なところに引っ越そうと思いまして」
 
大嘘である。だが、引越しの理由としては無難な答えだ。大家さんは、何か言いたそうに見えたが「そうですか」とだけ言い、私たちは4年間お世話になったお礼を言って、別れた。
 
今にして思うと、大家さんは住人が頻繁に入れ替わることを気にしていたのだろう。私たちに聞いたように、短期間で退去した人たちにも理由を聞いたのかもしれない。でも、
 
「心霊現象が怖いので、引っ越します」
 
と言い切れる人はいなかったと思う。皆、私たちのように、無難な答えでお茶をにごしたはずだ。
 
あのとき、本当の理由を伝えた方がよかったかも。
 
あれから20年経った今、私はふと考える。
そうすれば、大家さんはお祓いなどの対処ができたし、少なくとも、住人がすぐに退去する理由が分からずに思い悩むことはなかっただろう。
 
住人同士であの現象の話ができていればよかった、とも思う。花粉症の人たちが薬の情報を交換するように、「ここの神社のお札が効いた」なんて話ができたら、もっと前向きに立ち向かえた。
 
アマビエ様の絵が日本中に拡散されても、それはただのブームで、本当に疫病退散に効くと思う人はいない。科学至上主義の現代、ネタではない真面目なオカルト話は蔑まれる。
 
科学で説明はつかない話を、「危ない人」のレッテルを貼られることなく、真面目にできるといいのに。時々そう思う。
 
心霊部屋から引っ越した後は、嘘のように心霊現象はなくなった。夜中に怪しい気配に起こされる心配もなく、朝までぐっすり眠れる幸せを、私たちは満喫した。
 
ただ、あの4年間で、私も夫も感覚が研ぎ澄まされ、霊感のようなものが強くなってしまった。今も、私たちは「危ない心霊スポット」には近寄れない。
 
 
 
 
***
 
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2020-05-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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