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それは魔法のようなものかもしれないけど


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:川﨑 裕子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
娘が未就学児の頃、週末婚をしていた。私はフルタイムで働き、ワンオペ育児の生活だった。毎朝4時45分に起きているのに、いつも時間が足りなかった。
 
遅刻を気にしながら準備をする毎日。なかなか起きない娘を起こす。キビキビ動かない娘に朝ご飯を食べさせ、身支度をさせる。
 
「綱渡り」「自転車操業」「ギリギリの生活」
どんな言葉もピッタリと当てはまる。
本当にそんな毎日だった。
 
「なんとか朝に余裕を持つために改善したい」
「どうしたらいいんだろう」
考えても考えても堂々巡り。結局、次の日の朝も前の日と同じことを繰り返す日々だった。
 
限界に近い私がまず最初に注目したのは、保育園の朝の習慣だ。
 
娘の通っている保育園では、「朝のお仕事」というものがあった。お便り帳にスタンプを押す。タオルを所定の位置にかける。子ども達が自分でできることは自分自身で行うのだ。
 
娘はこの「朝のお仕事」をするのを楽しみにしていた。ギリギリの到着だと朝の会がすぐに始まってしまう。だから「朝のお仕事」ができなくなる。
 
そこで、「朝のお仕事、できなくなっちゃうよ〜」と娘に切り出し、聞いてみた。
 
「朝のお仕事ができないのはどんな気持ち?」
「ヤダ。やりたい!」
 
正直、ホッとした。「だったら、早く起きれるだろう」次の日に期待した。が、話はそう簡単ではない。やっぱり起きられないし朝の身支度はモタつく。
 
そんなある日、転機が起きた。娘がとうとう保育園の園庭でおもらしをしたのだ。オムツが取れるのが早く、おもらしなどほとんどしたことがない娘だった。本人も幼心にショックなようだった。
 
「家でトイレを済ませる時間がないとダメだ」
「時計の針がどこに来たら、『朝のお仕事』はもうできない」
丁寧に教えていただいたようだった。
 
実はギリギリ過ぎて、その日はトイレに行かせるのも忘れていた。母親失格と責められてもおかしくない状況だった。でも、先生はどうしたらいいかを私たち母娘と一緒に考えてくださった。
 
その出来事があってしばらくは、娘も早く支度して行ける日が続いた。が、ホッとしたのも束の間。また、ギリギリの登園になりそうな日があった。
 
で、そのことにに対して、娘は非常に腹を立てていた。
「ママが起こしてくれないから!」
 
私は、何かを間違っていた。やっと目が覚めた。娘の問題に対して私が頑張れば頑張るほど、娘にとっては他人事になっていった。
 
「うまくいかないことを人のせいにする子になるのはヤダな」と心底思った。
 
そこでやっと私は覚悟を決めた。その日の朝は、娘と話し合った。
 
怒りながら準備をする娘に何度も何度も聞いた。
「どうしたら早く行けるかな?」
最初は「分かんない!」を繰り返していた。
 
娘と私は敵同士ではない。娘は保育園に私は仕事に余裕をもって行きたい。私一人で頑張っても抜本的に解決しない問題だ。
 
いつもなら忙しくてうやむやにしていたが、根気強く会話を続けた。
「あなたにできることはあるかな?」
そうしたら娘が逆ギレ気味でとうとう答えた。
「私が早く寝ればいいんでしょ!」
 
「これは魔法か」と思うくらいに、それからの娘の生活が一変した。早く寝れるようになったので、自分で起きれるようになってきたのだ。
 
それでもテレビを観ながらダラダラと朝ごはんは食べる。でも、先生から教えていただいた、時計の針のことは気にするようになった。時計の針に気がつくと「ママ、行くよ!」と言うようになった。
 
私一人が必死に準備してなんとか切り盛りしてもダメだった。
「朝のお仕事」ができなくなると娘を脅してもダメだった。
おもらしは恥ずかしいと訴えてもダメだった。
 
幼いながらに、自分の問題であるということにちょっと気付いたのかもしれない。私が甲斐甲斐しく介入するのを手放したら、子どもが自分で動き出したという皮肉な話だ。
 
永遠の地獄かと思えた朝がおかげでだいぶラクになった。もちろん、娘が大きくなるにつれ、問題もこんなに単純には行かなくなるだろう。同じパターンでもこの魔法は使えないかもしれない。
 
でも、「早くして!」と子どもを怒鳴っているだけではラチが明かない。親ばかりが疲弊する。根気が要るように見えるかもしれないが、実は手っ取り早い方法なのかもしれない。
 
「そんな綺麗事はない」
「絵に描いた餅だ」
「まぼろし?」
まだそんな気もしている、だけど……。
 
相手の力を信じて話し合おう。
相手の問題をこちらで解決しようとしないようにしよう。
そうしたら、人は考えて行動できるようになる。
 
私はそう信じて生きていきたい。
 
 
 
 
***

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2020-06-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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