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大和言葉は月のよう


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記事:さくらしおり(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「大和言葉?」
 
ある日の昼下がり、私はコロナによる自宅での長すぎる時間を何とか楽しく過ごそうと、スマホを片手に、「面白そうなこと」を探していた。
 
そこでふと目に留まったのが、「大和言葉(やまとことば)」。
「大和言葉って何?具体的にどんな言葉?」
私の好奇心のセンサーが作動したのが分かった。
 
「大和言葉」と検索すると色々と出てきた。
ざっと読んでみると、生粋の日本語、美しく、優雅、雅……。
源氏物語を読んだことをきっかけに、平安時代にどっぷりはまり国文科に入った私には、胸が躍るような単語が並んでいた。
 
興味津々となった私は、もう少し詳しく調べてみることにした。
そこには、私の期待を裏切らない世界があった。
 
大和言葉とは、漢語、外来語が日本に入ってくるより以前に、もともと日本にあった生粋の日本語のことを言うらしい。
国文科卒でありながら、今まで知らずに過ごしてきたのがかなり恥ずかしい。穴があったら入りたい。
まじめに授業を受けていたはずだが、聞き逃したのだろうか。
 
次のような言葉が目に付いた。
「いたく」、「こよなく」、「このうえなく」、「胸を打つ」、「胸に染みる」、「目頭が熱くなる」、「思いのほか」、「ご遠慮なく」、「お心置きなく」、「お手すきのときに」、「恐れ入ります」、「お待ちしています」、「心待ちにする」……。
 
私がいつも使っている言葉や、使わないまでも意味は分かるような言葉が、想像していたよりも多く驚く。
「お手すきのときに」や「恐れ入ります」は、大和言葉とは意識せず仕事でもよく使っている。
 
生粋の日本語が、今も日常的に多く使われていることを知って、「なるほど」と思うと同時に、長い年月を生き抜き、人から人へ引き継がれてきた言葉なんだなと思うと、なんだか少し愛おしく、嬉しく感じた。
感情を細かに表現した、丁寧で、奥ゆかしくて、相手を気遣うような言葉。
おもてなしの国の日本ならではの言葉かもしれない。
 
これとは反対に、日常ではあまり使われていない言葉もあった。
例えば、「言祝ぐ(ことほぐ)」。
ちょうど少し前に読んだ本に出て来たけれど、意味を調べるために流れを中断するのが嫌で、正確な意味が分からないまま読み進めてしまった言葉。
言葉で祝福するという意味で、「寿ぐ(ことほぐ)」とも書くそう。
「これも、大和言葉だったのか」と初めて知った。
 
そして、「相思い(あいおもい)」。
こちらは、想像どおり、両思いのことで、対になる言葉が、「片思い」。
「片想い」や「相思相愛」という言葉は、今もよく使われる。
「両思い」の方が根付いてしまい、同じ意味合いの「相思い」は追いやられてしまったのか?
生き残る言葉と、そうでない言葉。言葉って面白い。
 
大和言葉に代わり、洋風な言葉(外来語や和製英語)が使われているものもある。
例えば、「湯船」は、「バスタブ」、「厠」は、「トイレ」。
「湯船に浸かる」はよく使うが、さすがに「厠に行く」と言う人は少ないだろう。
 
私は、京都の中でも緑が多い土地の出身、簡単に言えば、田舎育ちで、祖父母と共に、3世帯の家庭で育ったこともあってか、自分で言うのも何だけれど、言葉使いがややハイカラでないところがある。
ベビーカーを「乳母車」と言ったり、車のウインカーを「指示器」。
最近でこそ言わなくなったが、カフェを「喫茶店」と言うなど、年齢にあわない言葉遣いを同年代の友人に笑われたこともあった。ふと、そんなことを懐かしく思い出した。
そんな私だから余計なのか、「グローバル化の世の中だけど、ここは日本なのに……」と、ちょっと複雑な気持ちになった。
 
時候の挨拶にも、大和言葉が使われていた。
例えば、「此処彼処に春の兆しが覗くころ」、「日ましに春めくこのごろ」、「春も早たけなわ」、「春まさにたけなわ」。
この短い言葉で、季節の進み具合を表現し、かつ、芳しい花の香りや色、鳥の囀り、太陽の光、空、雲まで脳裏に浮かばせるなんて素晴らしい。詩のように美しい言葉とはこういう言葉だと思った。
 
いくつかお気に入りの大和言葉も出来た。
1つは、「あめつち」。
「あめ」は「天」、「つち」は「地」。天地、宇宙を意味するそうだ。
言葉の響きも良いが、何という壮大な世界観を持った言葉なのか。
 
もう1つは、「折り合う」。
自分と相手のちょうど良いところ。
自分だけが良いのではなく、相手だけが良いのではなく、お互いがちょうど良いところ。
自分も他人も尊重する「合う」が良い。
「愛し合う」、「助け合う」、「協力し合う」、「思い合う」……。
今回のコロナのように自分1人ではどうしようも出来ないことも多い。
これからの世の中は、特に、この良い意味での「合う」が今まで以上に大切になる気がしている。
 
大和言葉を少しずつ知っていくうちに、「魂が宿る言葉ってこんな言葉なんだろう」と感じる。
言葉そのものが霊力を持っていて、良い言葉を発すると良いことが、悪い言葉を発すると悪いことが起こるという昔の人々の「言霊信仰」が垣間見える。
 
最初、大和言葉とは何ぞやと思った。
しかし、今は、大和言葉は月のようだと思う。
それは、太陽のように力強くはないけれど、柔らかく優しく暖かい月の光にように、人の心にそっと染入るような言葉だから。
 
日本古来の言葉、大和言葉。
もっと知って、日常で、さらりと使いこなしてみたい。
きっと、その場の空気が一瞬で、ほんわかすると思うから。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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