猪突猛進な人生も悪くない。
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:吉田 真子(ライティング・ゼミ日曜コース)
2017年春のある日、私は緊張の真只中にいた。
制限時間に追われながら必死に自分の作品を仕上げることにのみ集中していた。
あいまいな英語の発音のカウントダウンが行われ制限時間は終わった。
遡ること4年前。2013年の春に私はそれまで働いていた職場をやめ手に職をつけるため求職者支援訓練の一環で行われていたネイリスト養成講座に参加していた。
ネイリストとしての私が始まった瞬間だった。
養成講座に通っている時はとても楽しかった。毎日クラスメイトと会い授業を受けネイルの技術を学んだ。中でも一番楽しかったのは課題となっていた卒業までに100本のネイルデザインのサンプルチップを作ることだった。
私は誰よりもサンプルチップを作った。
養成講座の半年間はあっという間に過ぎ、気づけばサンプルチップも課題の倍の数の200本を作り終えていた。
それと同時にやり残していたこともあった。
検定だ。
当時の私は多少不器用で予定としていたネイリストの検定の2級にまだ合格していなかったのだ。
訓練校終了後私は検定に合格するため別の学校に通い始めた。月に2回片道2時間かけ学校に通った。その甲斐あって2級には無事合格することが出来た。
次に待ち受けていたのは1級の検定だった。
私はこれまでにないくらい練習した。
だが1回では合格出来なかった。
学校の練習では物足りなく感じYouTubeで検定に合格するための参考になるような動画がないかを探していた。そして見つけた。
その方はのちに私の師匠になった。
師匠の筆さばき、フォルムの作り方等あまりにもスムーズで無駄がなく何をとっても素晴らしいとしか言葉が出ないものだった。
動画で魅了された私は動画を見て練習するだけでなくどうにかしてその動画の本人に会えないものかと考え始めた。
もちろん直接ネイルに関して指導してもらうためだ。
ようやく師匠が経営している学校を見つけた。
見つけた私は早速スクールに申し込み直接指導を受けることになった。
師匠に指導を受けてみると当然だが想像以上に厳しかった。
厳しいのは当然だ。ネイリストと響きは美しい世界のようだがやはりこれも技術職。技術を身に付けるためには厳しさも必要なのだ。
そしてそんな師匠の指導に私は答えるのに必死だった。
練習して気になったらすぐに質問してまた指導を受け家に帰ったら復習。
まるでアスリートのような生活だった。
いつも通り師匠の下で練習をしていたある日、師匠は私にこう言った。
「海外の大会に向いているかも」と。
私は何のことだかさっぱり分からなかった。
検定の練習をしていたはずなのに師匠から見たら私は国内で検定などを受けるだけではなく海外の大会などに出ることを勧めて来たのだ。
私はよくわからないがその言葉を信じてみた。
師匠の言われた通りに海外の大会に出ることにした。
初めて出た大会は2016年秋台湾での大会だった。
初めての国際大会。練習もそれなりに積み重ねて大会に挑んだ。
だがここで私は初めて私の小心さ加減を目の当たりにした。
沢山練習もしたし検定も何回も受けて来たから緊張には慣れているはずだった。
はずだったのだ。
自分の競技が始まり、私は平静を装ったが体は正直で気持ちとは裏腹に私の手は完全に震えていた。そんな状態で挑んだ大会で私は完全に敗北した。敗因は大会に対する戦い方の準備不足と練習不足だった。
敗北した私は案外冷静だった。
理由は敗北した原因がわかっていたから。
それから半年後私はタイにいた。
もちろん大会に出るためだ。前回の経験の反省を生かし前回以上に練習した。
練習だけではない。大会の会場の情報収集なども徹底的に行い大会当日のイメージトレーニングも何度となく行った。
そして大会は始まった。
競技が始まると私は依然と違った程よい緊張感の中にいた。
緊張の中でも冷静に自分の作品と向き合い競技に挑んだ。
そして競技時間終了の合図が告げられた。
確実に前回よりは自身もあったがそれでも確固たる自信は私にはなかった。
私の競技が終わって数時間後表彰式という名の結果発表が行われた。
自分の名前が呼ばれるのを今か今かとドキドキしながら待ち続けた。
が私の名前は呼ばれず出場した競技の結果発表は終わった。
結果が出せずにホテルに帰ろうと会場を後にし始めたその時だった。
モデルをしてくれていた私の友人が私を呼び止めた。
「今あんたの名前呼ばれたよ!」
私は信じられなかった。
「気のせいでしょ」
と友人に告げたその時、今度ははっきりと聞こえた。
「マコ ヨシダ」
そう。私の名前は確実に呼ばれていたのだ。
それでも信じられなかったが表彰台のほうへ向かった。
そして名前は確かだった。私は入賞できていたのだ。
表彰台に上がった私は完全に放心状態だったが表彰台を降り友人の下へ向かうと私はようやく入賞できたことを実感し嬉しさのあまり涙があふれた。
人生で初めて表彰台。
まさに猪突猛進に信じたことに向かって一直線に突き進んできたことに対する自分の力を知った瞬間だった。
賞を取った私は多少大袈裟かもしれないが自分の生き方に自信を持てた。
今までは好奇心旺盛な気持ちのままやりたい事をやりたいようにする生き方に世間体などを気にするあまり自信を持てていなかったが、賞を取って以降そういう自分の生き方を受け入れ生きていく自信がついた。
そして今、コロナ禍で国際大会に出ることはおろか海外に行くこともままならないが今日もまたネイルの大会に出て賞を取ることを目標に日々練習に取り組んでいる。
猪突猛進、イノシシのごとく目標物に対してがむしゃらに突き進むこと。
私はそういう人生を楽しんでいる。
***
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