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台湾のタクシーが好きな理由


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記事:なべたけいこ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
『なんで、中国語はなせるの?』
当時、決まってこう話しかけられていた。
 
ああ……台湾で勉強していて……と返すと、交換留学生か? 大学院か? どこの大学だ? 何年住んでいるのか? と、次々に聞かれる。
 
はじめは、中国語を話す日本人が珍しいのかな、と思っていた。
 
だが、どこへいっても話しかけられる。電車でも、お店でもだ。なんなんだ、この国は。
中でも、高確率で話しかけられていたのが、タクシーの中だった。
 
弟が日本から遊びに来ていた時なんて、タクシーに乗るたびに運転手さんに話しかけられていた。『隣にいるのは、彼氏かい?』とか聞かれるので、『弟(ディディ)ですよ! 同じ顔でしょ!』と返していたため、弟は帰国する頃には「ディディ」という言葉を覚えてしまっていた。それくらい、話しかけられることは日常的なことだった。
 
台湾で生活をしていて、この国は人懐っこい人が多いな、とは思っていた。明るくてオープンで細かいことは気にしない、南国気質なのかなと。でも、だんだん中国語が話せるようになってくると、感覚は少し変わっていった。
台湾人の中には、日本に興味を持っていて、日本人と話してみたい、と思っている人がいるようだ。だから中国語を話すことのできる私のような人を見つけると、色々聞いてみたくなる、ということなのだろう。そう思うと、なんだかありがたい。少し面倒に思っていたタクシーでの会話も、できるだけ楽しい時間にしようじゃないか、と自然に思うようになった。
 
台湾のタクシーにとって、日本人は乗せたい客なのかな、と思うことは他にもあった。
 
その日、私は台湾のとある観光地のバス停で、台北行きのバスを待っていた。すると、タクシーの運転手らしきおじさんが、200元(日本円で約700円)で台北まで乗らないか? と声をかけてきた。
 
台湾のタクシー事情を少し説明すると、市内でタクシーに乗る際は日本と同じメーター計算なのだが、長距離の場合、交渉や乗合になることがある。観光地周辺では、運転手さんがお客さんを探し交渉しているのは、よく見る光景だ。ちなみに運転手さんは、中国語しか話せない場合が多い。
 
運転手のおじさんが提示してきた金額は、バス運賃の倍額だった。いらない、と断った。おじさんが次々に声をかけていくと、奥の方に並んでいた旅行客の家族3人(おそらく香港人)をつかまえたようだった。こっちに向かって、おじさんが戻ってくる。あと1人乗せたいらしい。私に『150元ならどう?』と聞いてきた。タクシーの方がバスより断然早いし、まあいいか……と思いOKし、タクシーにのりこんだ。
台北市内に入ったくらいのところで、友達から電話がかかってきた。日本語で会話をしていたら、電話終了後、運転手さんに『日本語うまいね』と言われた。え……私は日本人ですよ…と、練習文みたいな中国語で答えると、運転手さんは信号で停車するなり、もぞもぞと名刺をとり出し、私に渡してきた。観光タクシーをやっているから、ぜひ利用してほしい、とのことだった。日本人だと知った瞬間、この態度の変わりよう。同乗していた香港人家族にどう思われようと関係ないのだろうか。日本のお客さんには手厚くサービスをしたい気持ちは伝わってきた。それは日本が好きだからか、景気良くお金を落としてくれるからかはわからない。いずれにせよ、日本人は「いいお客」なんだろうな、と思った瞬間だった。
 
台湾人の気質を表す言葉に「熱情」という言葉がある。親切にする、世話を焼くという意味だ。これは、台湾人のサービス精神を象徴する言葉だと思っている。道を尋ねれば丁寧に教えてくれるし、スマホを落としたときは、色んな人が最大限に手伝って探してくれた。そしてサービスの向上によって商売繁盛につながることもよく知っているように思える。
 
サービスをより良いものにしようという想いを、運転手さんから感じることもあった。
 
その日は、自宅近くから高速鉄道の駅に向かうため、タクシーに乗った。いつものように運転手さんと話していると、以前日本人のお客さんを乗せたときに、『駅まで』と言われて困ったことがある、という話になった。
台湾で駅といえば、「国鉄」と「高速鉄道」の2種類あり、台北以外の場所では、駅が遠く離れている場合がある。そのため行き先を伝えるときに、どちらの駅なのか、明確に伝える必要があるのだ。
日本人客を乗せた時、運転手さんが中国語で国鉄の駅か?高速鉄道の駅か?と尋ねても、通じなかったそうで、その時は筆談でなんとか解決したらしい。日本語で「高速鉄道」はなんというのか、教えて欲しいと言われた。しばらく考えて、私は「新幹線」と答えた。聞いたことのある言葉だったのか、運転手さんは『ああ! シンカンシェーン!』と、理解したようだった。次に日本人を乗せたときは、きっとスムーズに案内できることだろう。
 
台湾のタクシーに乗ると、特有の気質がサービス向上につながっていると思うし、コミュニケーション力の高さも感じる。何気ない会話の中にも、彼らなりのホスピタリティを感じ、なんとなく温かい気持ちになる。だから、私はついつい楽しくおしゃべりしてしまう。「今日は、中国語が話せる日本人のお客を乗せたんだよ」とか、家族に自慢してもらえたら、私は嬉しい。
 
 
 
 
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2020-07-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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