ヴィーガンカフェへのお誘い
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:吉田まりえ(ライティング・ゼミ日曜コース)
「ねえ、ヴィーガンカフェって、どんな料理が出るのかな?」
私は、初めて行くヴィーガンカフェの妄想を膨らませていた。
「やっぱり、野菜と豆、玄米とかの料理かな?」
「かもね」
「動物性のものを食べないから、肉や魚は出ないやろう」
「卵も使わないらしいよ」
「体に良さそうだけど、腹には溜まりそうにないな」
福岡市内から1時間程度、海と山の自然が豊かな移住者の多い人気のエリア。
大学時代の同級生K君がヴィーガンカフェ「喫茶ひるねこ」を移転オープンした。
私達、同級生9人で、お祝いを兼ねて食事に行くことになった。
このエリアに住む友人と「ヴィーガンカフェって、おしゃれだろうけど、地元の人にわかるかな。観光客向けなの?」という話になった。ヨガとかするスタイリッシュで健康意識の高い人が行く、値段高めの、都会的な尖った雰囲気のカフェを妄想していた。
ところが到着したのは、静かな田園に囲まれた古民家をK君がDIYしたカフェだった。
デザインが違うテーブルや椅子に思い思いに座った。そもそもの設えがソーシャルディスタンス。なんともゆったり寛いだ気分になった。これは長居しそうだ。
今日は、K君お任せメニュー。「サンドイッチから出すね」
K君は、温かい出来立て料理を出すために厨房に消えていった。
「野菜がたっぷりで美味しい!」
サンドイッチのパンは、茶色の生地なので全粒粉などだろうか。
農家の多い地域だけあって野菜が新鮮。
マヨネーズは使ってないんだろうけど、美味しい。何で味付けしてるんだろう。
ちょっと遠出した私達は、持参したワインやビールを片手に、ピクニック気分になった。
次は、水菜の上に盛られた小ぶりの唐揚げが出てきた。
「……、これ鳥の唐揚げ?」私は驚いた。
「いや違うやろう。でも、見えるな。唐揚げに」お互い顔を見合わせてしまった。
「食べてみよう」
同級生の1人が箸をつけたのを皮切りに唐揚げを食べてみた。
「美味ししい!」
皆、美味しさのあまり、あっという間に平らげてしまった。
「K君、これ何? 唐揚げじゃないよね?」料理を持ってきたK君に聞いてみた。
「それ大豆。いけるやろ?」
「大豆? 歯応えといい、味といい、肉だけど!!」
「豆で作った肉を使ったハンバーガーがあるって、聞いたことない? それなんだよね」
「ある。雑誌か何かで見た。アメリカだったっけ?」
豆で作った肉、これか。
これなら肉として、違和感なく食べられる。
説明されなかったら大豆とは気づかないだろう。
自然商品屋さんに売っていて、水で戻して味付けすればよいらしい。
味付けの仕方が、お店によって違うだけとのこと。
不思議な話だ。
ヴィーガンは、肉は食べない主義なのに、肉のような食感は欲しくなるのだろうか?
とても禁欲的なイメージを持っていたが、そうでないのかもしれない。
「次は、ピザね」
小麦粉は使ってよいらしく、トマト、オクラ、なすがのった出来立てのピザが出てきた。
「K君、このピザのチーズっぽいの、何?」
さっぱりした味なのでチーズではないと思ったが、何か想像できなかった。
「それ豆乳でつくったソース」
チーズのような濃厚さはないが、塩加減がよく、野菜と相まって美味しい。
パスタの次は、デザート。
最後は、豆乳でつくったクリームがのったケーキ。ブドウが添えてあった。
オーガニックコーヒーと甘さ控えめで軽い食感のケーキは最高だった。
豆乳は、ピザには塩、ケーキには甘みを少し足すだけで、こんなにやさしい味になるのか。
自分で料理する時に豆乳など使わないので新鮮な味だった。
私達は、もうお腹一杯だった。誰だ、お腹に溜まらないかもと言ったのは。
後日、K君にお礼のメールをした時に教えてくれた。
当たり前だか、K君は、ヴィーガンだ。
私は、ヴィーガンとは、肉や魚を食べない健康的な食のスタイルのことだと思っていた。
ヴィーガンであることは、環境問題の解決をめざすことだと知った。
食肉の畜産業は家畜用の大量の水の消費と汚物による水質汚染、家畜を放牧するための土地の開拓による森林伐採などの環境問題を起こしている。
人は、肉を食べなくても栄養面では問題はないと言われている。
ヴィーガンが増えれば食肉の消費が減る、結果、環境問題が解決する。
体にいいことが、環境にいいからヴィーガンを選択していると教えてくれた。
豆で作った肉は、人間の健康のためだけでなく、環境問題を解決するために開発されている面もあるようだ。カフェで会った時に言わないのがK君らしい。
ヴィーガンという主義はあるが、お店には尖った主張はない。
ヴィーガンカフェと言われなければわからないカフェだった。
K君の一番の願いは、美味しい食事を寛いで楽しんでほしい、だ。
ヴィーガンカフェもいろいろな種類があると思う。
でも、基本の考え方は似ているようだ。
食材は肉、魚、卵を使わない。季節の野菜、小麦粉と豆乳や豆が中心で素材の味を生かす。
調味料は、化学調味料、みりん、精製した砂糖は使わない。
塩と醤油などオーガニックな限られたものしか使わない割に、やさしい味で、バリエーションがある。体にはとてもよくて、しかも美味しい。
K君のヴィーガンカフェは、休日、友人やパートナーと一緒に、心と体をゆっくりとさせたい時に行くのがお勧めです。
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