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長期うつ病患者のリアル


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記事:安光伸江(編集ライティング講座)
 
 
学生時代から何十年もうつ病を患っている。
 
東京では音大の非常勤講師などの仕事をして細々と暮らしていたのだが、ある年の暮れ、期末試験当日にぶっ倒れた。それまでうつの自覚はあったからだましだまし仕事をしていたのだが、倒れる直前はわりと元気で、キャパを超えることをしてしまったのがいけなかった。「低値安定」を目指して何年も安定していたのに、ちょっと元気になったからと張り切ってしまったのだ。しかも元気だと勘違いしていたから、倒れた時に行く病院を探していなくて途方に暮れた。
 
その結果春休みはひたすら家で寝て過ごすことになり、新年度が始まる時になってやっとクリニックを見つけた。前期はなんとか乗り切ったのだが、夏休みに復活しようというもくろみは泡と消えた。どうにも動けなくなり、後期が始まる前の週になって休職を決め、父に迎えに来てもらった。東京に拠点を残しておくつもりが、もう仕事はできないだろうという父の判断で、住まいを引き払って下関の実家に帰ることになった。
 
それからもう10年以上になる。その間には両親を看取り、乳がんの手術をした。うつ病の方は、薬は飲み続けているものの、ほぼ安定している。
 
そんな長期うつ病患者が困ったこと、助かったことなどを書いてみようと思う。うつ病などのメンタル疾患かな? と悩んでいる人の参考になれば幸いである。
 
 

診察を受けるところは慎重に探そう


メンタルがやられた時に診てもらうのは、できれば精神科の専門医がいい。「精神保健指定医」という国家資格があるので、それを目安にするのも手だ。医師になって5年以上、精神障害の診断または治療に従事した経験3年以上、などの条件があって、研修も受ける。うちの主治医が医師になった頃は「鑑定医」とかいう資格だったのが自動的に「指定医」になって、5年に一度更新すると聞いた。だから、ちゃんと精神科の勉強をしているということだから、なるべくならそういう先生の方がいい。
 
というのもうちの母がなんとなく鬱々としていた時に、内科かどこかで「うつ病の娘が、私のことをうつだと言います」と言ったら、それじゃぁ薬を出しましょう、と、パキシルを出してきたのだ。パキシルというのは、うつ病やパニック障害などに出される有名な薬なのだが、私に出された時には合わなかったのでかえてもらった経験があるものだ。副作用が私には強かったんじゃないかと思う。パキシルは絶対飲まない、という思い込みが私にはあったものだから、いきなりパキシルを出してくる内科の先生に不信感を持った。もっと弱い、抗不安薬などから少しずつ処方していくのが常道だからだ。もちろん母には「絶対飲んじゃダメだよ」と言った。精神科の薬は始める時もやめる時も慎重にしないといけないからだ。
 
だから、普通の内科の先生でメンタルもちょっと診ますよ、という先生は、個人的にはあまり勧めない。内科の先生に精神科の薬を出してもらうより、精神科の先生に紹介してくれる、という人の方がいいと思う。
 

地域の保健所に相談しよう


とはいえ、どんな先生に診てもらったらいいか、というのはなかなか調べられない。私は東京の先生をネットで探したけど、それがよかったか悪かったかよくわからない。近所を歩き回ってみたが、何かどんよりしたオーラが漂っているクリニックが多くて気持ち悪くて行けなかった。結局バスで一本で行ける駅前の小さなクリニックにしたのだが、大学時代の友人に先生と同じ高校の人がいたとか、行った時の感じがどんよりしてなかったとか、そんな感じで決めた記憶がある。
 
結果としてその先生には、休職のための診断書を書いてもらうのと、実家に帰ってから診療を受けるところへの紹介状を書いてもらうためだけに行ったような形になった。初診の時は詳しく話を聞いてくれたけど、それからは5分くらいの診療で薬が出るだけだった。カウンセラーを紹介されたけど、それは自費で5000円くらいかかるので行かなかった。
 
実家に帰ることになったと先生に話したら「治療を受けるあてはありますか?」と聞かれた。治療は継続した方がいいという考えだった。東京に出て何十年にもなる私にはまったく心当たりがなかったのでそう言うと
 
「では、見つかるまでの2週間分ほど薬を出しましょう。診察を受ける医療機関については地域の保健所に相談してください。できれば臨床心理士のいるところがいいです」
 
と言われた。保健所では毎月、メンタルが不調な人のための無料相談会をやっている。母が市報に載っているのをみつけてきたのでそれに行くことにしようか、と思っていたのだが、それより早く、保健所に直接予約して相談することができた。
 
保健所の担当の人は、親身になって話を聞いてくれた。そしてすでに精神科に行っているということ、筋道たてて話ができること、などを考慮して、○○病院の××先生がいい、という結論が出た。私より年上のベテランの先生だそうだ。他にもいくつか病院はあるが、もっと精神症状の重い人が行くところなんだそうだ。どうやら私は軽い方だったらしい。あんなにつらかったのにな。
 
 

できればちゃんとした病院に行こう


数日後の午後、○○病院に初診に行った。受付で、東京の先生からもらってきた紹介状を渡し、××先生に診ていただきたい旨を伝える。保健所からはちゃんと連絡が入っていて、先生の前にケースワーカーさんがやってきた。
 
ケースワーカーさんは、アンケートみたいなのを持ってきた。うつ病のなんとかスケールという、うつ病の度合いが点数でわかるものだ。この2週間、ずっと落ち込んでいる、とか、眠れない、とか、そういう質問に「すごくあてはまる」から「まったくない」まで5段階で答えていって、その点数を合計する。これはその後の診察も何回かやって状態を確かめるのに使われていた。
 
それから先生のところに行って、今までの経緯をことこまかに話した。先生はいろいろ質問をしながら、話をじっくり聞いてくれた。臨床心理士がいるところがいいと言われた話をすると、ここにそういう人はいないけど、先生と話をすることでその代用になるから、しばらくここに来る? と言ってくれた。それで、私の症状は「軽い」と言われた。希死念慮はあってもリストカットもしてないし、話は筋道通ってるし、ということらしい。付き添いの母は「すぐ入院って言われたらいややな」と思っていたそうだが、通院ですむとなって安心していた。
 
それからしばらくは毎週、慣れてきたら2週に一回のこともあったが、先生と話をしに通うことになった。東京の先生は5分診療でも500点ついていたけど、こっちの病院では30分以内330点、30分以上370点という感じで、なぜか安かった。しかも薬は院内処方で、ジェネリック薬品も積極的に利用していた。小さなクリニックより、大きな病院の方がいいのかな、と思った。
 
 

治療が長期になったら「自立支援医療制度」を利用しよう


 
母は3ヶ月くらいでひょひょい、とよくなることを期待していたのだが、私の場合再発を繰り返したうつ病だったので、そんなに簡単に治るわけはなかった。1年超えた頃だったか、受付でお金を払っていると、ケースワーカーさんに声をかけられた。
 
自立支援医療制度というのがある。
重度かつ継続的な通院治療が必要な人が利用できる。
初診から半年たった時点での病状が基準。
医療費が1割負担になる。
収入によって上限額も決まっている。
先生に診断書を書いてもらうお金がかかる。
 
などという説明だった。自立支援については、東京のクリニックでも持っている人がいたから存在は知っていた。上限1万円とか言ってなかったかな? 私は月の支払いが1万円いかなかったので、その時は「いいです」と断ったのだが、よく考えてみたら1割負担だけでもいいので、その次かさらに次の診察日に先生に相談してみた。そしたらケースワーカーさんを呼んでくれて、もう一度説明をしてくれた。軽い、って言われていたから、病状が「重度かつ継続」に該当するのか不安だったけど、先生はOKを出してくれた。
 
東京のクリニックで自立支援を利用している人は、毎月その証明書を受付で見せていた。本来なら自分で区役所に行って手続きをするものらしい。かなり煩雑な手続きである。うちの病院では「手続きするのも大変でしょうから」と、委任状に署名捺印したら手続きを代行し、さらに自立支援の証書みたいなのを病院で保管してくれることになっていた。やっぱり大きな病院の方がなにかといいんだな、とその時も思った。
 
だから私のやったことは、いろんな書類に住所氏名生年月日を書いて、はんこを押すだけ。あとは診断書のお金、当時は税込2000円(今は税別になったので2200円)を受付で払う。限度額を決めるために収入を調べるから、その委任状にもはんこを押した。東京から帰ってすぐだったら少ないながらも収入があったけど、この時は無職で後期高齢者の親の世話になっていたので、私の世帯収入はゼロだった。後期高齢者とそれ以外では別世帯の扱いになるのだ。月の上限、2500円。安っ! あとは市町村が負担してくれる。これは早く働けるようになって、下関市にしっかり納税できるようにならなくちゃな、と思ったのだった。
 
といいつつそれから何年も治療を受け続けている。軽くなったら自立支援はなくなって3割負担になるのかな? だったら病気がよくならない方がいいかも? とよこしまなことを考えたのだけど、病気がよくなってからも、安定させるために治療を続けている、というのだと1割負担のままでいいそうだ。私は少ないながらも薬を飲み続けているのでそれに当てはまる。さらによくなって薬がなくなり、先生とお話をするためだけに来るのでも1割負担でいいみたい。ああよかった。それなら安心して治療が受けられる。
 
自立支援は1年ごとに更新で、書類にはんこをつく。診断書は自費で、2年ごとに新しくとらないといけない。私がこの制度を利用している間に消費税が5%から8%、10%と上がったけど、8%になった時は2000円のままで、10%になるときに2200円になった。それでも安い。ありがたい。東京の先生は休職の診断書を書いてもらうのに5000円かかったから、都会と田舎ではいろいろ違うのかもしれない。
 
うつ病はかかりはじめに治してしまえば3ヶ月くらいで治る人も多いそうだが、何度も再発する人、長期に渡って治療を受けている人、は、この自立支援医療制度を利用して、安心して治療を受けるのがいいと思う。手続きはけっこうややこしいらしいのだが、うちの病院みたいに代行してくれるところもあるので、医療機関で相談するといいと思う。
 
 

訪問看護などを利用しよう


大きな病院だと、訪問看護やデイケアなどをやっているところもある。というかうちの病院はやっている。私は母が亡くなる直前から訪問看護を利用させてもらっている。主治医の指示で看護師さん(作業療法士さんのこともある)が動くのだが、1回30分まで、私の場合は家に来てもらって話を聞いてもらっている。最初は介護していた母を病院に入れたのがつらくて、話をしに来てもらうことになった。複数の看護師さんがチームを組んで家まで来てくれる。ただ、話をするだけでもだいぶ楽になる。
 
あと訪問看護師さんに通院補助をしてもらっている人もいる。車で送ってもらうのだ。私は家から病院まで1.2kmほどなので運動がてら歩いて行っているが、遠くからの人や足の具合が悪い人で通院補助をしてもらっている人を時々みかける。
 
訪問看護は点数が高くてお金がかかるので、自立支援を受けている人じゃないと金銭的につらいかもしれない。だけど、先生とは違った角度からものをみていて、よ~く話を聞いてくれるので、必要な場合は利用したらいいと思う。
 
 

最後に


こんな具合で今の病院での治療も10年を超えた。完全にはよくなっていないが、体調をコントロールして働けるようになり、下関市に納税したい、という気持ちは変わらない。
 
メンタル不調で悩んでいる皆さん、いろんな支援制度があるので、賢く利用し、安心して暮らせるようになりましょう!
 
 
 
 
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2020-07-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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