ロボット掃除機はスマートスピーカーの夢を見るか
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記事:皿メガネ(ライティング・ぜみ特講)
「掃除って面倒だよね」
3年前に妻に投げかけたこの言葉がきっかけだった。
我が家には、ロボット掃除機がいる。
ロボット掃除機は、パナソニック社製の『RULO』という機種で、3年前に購入したものだ。白い、丸みを帯びた三角形をしていて、小さな手のような2本のブラシを生やしている。本体の縁をなぞるように内側に引かれたグレーのラインが、丸みを帯びた形状とは裏腹にシャープさを引き立たせており、未来からきたようなスマートさを感じさせるデザインだ。
当時としては、最新のモデルであり、赤外線センサー、レーザーセンサー、超音波センサーを搭載しており、あちこちにぶつかりながら掃除する某社の丸っこいロボット掃除機とは異なり、障害物をスイスイ避けながら掃除をしてくれる。さらに、三角形の愛らしい形状は、部屋の隅を掃除できるように計算されたものであり、部屋の角や家具の際のゴミも逃さず掃除してくれる。
カメラセンサーを搭載していないため、毎回、掃除の始まりに、暗い部屋の中を手探りで進むようにそろそろと壁に沿って進むが、その不器用さが愛らしい。外出中に掃除しているときには、リビングで迷子になったり、寝室で力尽きてしまっていたり、自分でスライド式ドアを閉めてしまってウォークインクローゼットに閉じ込められてしまったり、とにかく不器用なのだ。
この不器用なロボット掃除機「ルーローくん」が我が家の家族になるにあたっては、私の企みがあった。
あれは新婚生活が日常に変わり始めた、結婚してから1年半が過ぎた頃のことだった。フルタイムの共働きの我が家は、二人とも帰宅時刻が遅く、家事は週末にまとめて行うことになっていた。
日曜日の朝、妻が掃除機に手をかけるのが合図だった。妻が掃除機に手をかけると、私は、スマホをテーブルに置いてWebや新聞を見るのを中断し、雑巾掛けや洗面所の水回りの掃除、雑誌の片付けなど、家事を手伝わない後ろめたさに負けて、やりたくもない家事を探すのが習いだった。
そうして家事を始めると気が付いたら昼間になり、妻と共に昼食を作りながら、貴重な日曜日の朝がやりたくもない、付き合いでやっている家事に費やされてしまったことにやるせなさを覚えるのだった。
嫌だ! 日曜日の朝くらいゆっくりしたい!
そんな子供じみた鬱屈を抱えながら、某家電量販店を歩いているときに見かけたのが、ロボット掃除機だった。私の周りにもロボット掃除機を持っている友人は何人かいたが、「高い金を払ってロボット掃除機なんて買わなくても、掃除くらい自分でやればいいのに」と思う程度で、正直、あまり興味を抱くことなかった。しかし、妻との共同生活を始めた私にとって、ロボット掃除機は救い主に見えたのだ。
ロボットが掃除をすれば、妻が掃除機に手をかけることはない。つまり、ロボット掃除機によって妻が掃除から解放されれば、私もいたたまれない気持ちからやりたくもない家事を探すストレスから解放されるのだ!
こうしてロボット掃除機を購入するための説得工作が始まったが、最初は妻もかつての私のようにあまり興味がなさそうだった。
まずい。このままでは、ロボット掃除機が購入できない。
そう思って悩んでいたところ、本屋で強力な援軍を見つけた。『勝間式 超ロジカル家事』である。この本は、スーパービジネスウーマンである勝間氏が、いかに家事をこなしているかを解説した本であるが、「働く家電に投資する」として、ロボット掃除機どころか床拭き掃除機にも触れられている。
即買いし、さりげなく妻の目に着くところに置いて、チラチラとしばらく様子を見る。そして、某家電量販店で満を侍して出たのが冒頭の発言だ。『勝間式 超ロジカル家事』を読んだ妻は満更でもない様子だった。
私は、まるで販売員のように、必死にセンサーや吸引力の充実した上位機種を妻に勧めた。ここで万が一、安物を買って妻の掃除メガネに叶わずゴミが残ったら、何の解決にもならない。私は考えた。妻になんと言えば、この「ルーローくん」を買ってもらえるだろうか。そう思い悩んでいたところ、妻から出てきた言葉がこれだった。
「ルーローの三角形なんでしょ。いいんじゃない。
ルンバと違って、隅も掃除できそうだし、家具にもぶつからなそうだし」
なんと、よくよく聞くと妻は結婚前に既にロボット掃除機を保有しており、私などよりも遥かにロボット掃除機に詳しかったのだ。つまり、理系出身でロボット掃除機の使用経験のある妻は、その便利さを十二分に承知しており、勝間さんの援軍も、私の説明も空回りでしかなく、私がロボット掃除機を買いたいと素直に言えば、特に反対するつもりはなかったということだった。
ほっとしたのか、肩透かしを食らったのか、悔しいのか、複雑な気持ちを抱えることになったが、こうして我が家に来たのが、「ルーローくん」だ。いい働きをしてくれる。仕事に行っている間にも掃除をしてくれるので、部屋もきれいになるし、たまに充電ステーションを探している様子が目に入ると、ペットのような愛らしさを感じる。
何より、「ルーローくん」のおかげで、日曜の朝に妻が掃除機に手をかけることは、ほぼなくなった。日曜の朝に余裕ができることによって、十分に休んだ感が得られるのだ。自分の手でやらなければならない家事はあるが、ロボット掃除機などの家事を助けてくれる家電を導入することで、夫婦の家事分担のあり方を変え、WinーWinの解決を図ることができたのだ。
皆さんも、スマート家電を導入して、新しい家族の関係を見直してみるのは、いかがだろうか。
そして私には次なる密かな野望がある。
スマート・スピーカーが欲しい。
セキュリティを気にする妻は、援軍・勝間さんが勧めているにもかかわらず、スマート・スピーカーの導入には消極的だ。山は高い。しかし、今度こそ妻を説き伏せるリベンジ・マッチだ。
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