花よりリモートワーク
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:新田かな(ライティング・ゼミ通信限定コース)
「部屋を綺麗にするためには、まず、花を飾ってみよう!」
こんな言葉を聞いたことはないだろうか。
花を飾ることで、そのキレイな花が似合うようなすてきな部屋にしたいという気持ちが芽生え、片付けられるようになるという理屈である。
私も何度か試してみたことがあるが、部屋がきれいになる前に花が枯れてしまって終了である。無理。きれいな花、ごめんなさい。
部屋がきれいで快適な空間であることに越したことはないとは思っているが、面倒くさいし、とにかく維持できない。
そもそも自分の部屋なんて誰かに見られるわけでもない、会社から帰ってきてご飯を食べて寝て、また会社へ向かう、ただ休めればそれでいい場所という認識でしかない。
見えないところにお金も手間もかけたくないし、部屋が汚くて死ぬわけでもないし……と、言い訳ばかり浮かび、部屋を片付けてきれいにしようだとか、すてきにしようという気持ちにならないのである。
床に物は散らかしっぱなし、ルンバは買ってから一度も起動していない。
そんな私の散らかった部屋人生に転機が訪れた。
そう、コロナウィルス感染症対策によるリモートワークの導入である。
これにより出勤することはなくなり、自宅でパソコンの電源を入れ、タイムカードを押し出勤、朝の挨拶。打ち合わせも会議もZOOMで行うことになった。
部屋のインテリアなどにも全く興味がない私の部屋は、座るところといえば寝るところと兼用のベッドかトイレぐらいのものである。パソコンを置く机なんてもちろんないので、段ボールを積んでノートパソコンを置き、高いところに置いた食器を取るために100円均一で買った脚立に座って初のリモートワークに臨むことになった。
感想としては、まあ最悪。
まずお尻が痛いし、パソコンと目線の高さが合わなくて背中を曲げるので背中が痛い。何より仕事に集中できない。客観的に見て(実際には見られないが想像してみて)さすがにみすぼらしさがすごい。
WEBでミーティングする相手の背景に映る質の高そうで整った部屋のなんと「まとも」そうなことか。まともな社会人はこのような部屋らしき部屋に住んでいるのかと驚きつつ、パソコンのインカメラに映る範囲をせめてきれいにしようと思い白い壁がなるべく入る努力をした。
こんなひどい労働環境で毎日を過ごすのはさすがに体にも精神的にもよろしくないので、会社に行くためにただ休む場所というだけの役目だった部屋を、仕方なく部屋を整える決意をした。自分の部屋づくりには興味がないが、労働環境は快適にしたい。
手始めに机と椅子を用意する必要があると考え、さっそくインターネットで探しはじめたが、同じことを考えている社会人はたくさんいるらしく、どのネット通販ページを見てもパソコンデスクは軒並み売り切れでお届けに数週間かかるという。
やっとのことで1週間以内にお届けと赤文字でデカデカと書かれた商品を見つけ、即購入。届くのを楽しみに待ったが、一向に届かない。前途多難である。
注文完了メールに書いてあったメールアドレスから問い合わせをすると、
「注文後に在庫がないことがわかりました。すみません。」
……。今はどこも大変だろうから、仕方がない。しかしこのままじゃリモート期間が終わってしまう。ネット通販を諦めて、メルカリで即日発送のタグをつけている人から適当なものを選び買ってみたら、2日ほどですぐに届いた。5000円ぐらいの安いものでしかも中古品だが、充分立派に見えるしこの際贅沢は言っていられない。
机と椅子を置く場所を確保すべく、床に落ちているものを片付け、なんとかスペースを作った。できた空間に机と椅子を置くと、すごい、一気に部屋っぽくなった。
部屋を部屋たらしめているのは机と椅子であったのかと感動さえ覚えた。
自宅でベッドか床以外に座ったことがなかった私には大発見である。
明日、この机と椅子で仕事を始められるのが楽しみでわくわくした。
自分の過ごす空間にこだわりたい人の気持ちがやっと少し理解できた気がする。
翌朝、いつものようにWEBミーティングを始めた私は、上機嫌でやる気満々だった。
もちろん相手に見える画面ではデスクや椅子まで映ることはなく、いつもと同じ白い壁が映っているのだが、初めて部屋らしき部屋で1日をスタートさせることができたのである。その日から、机と椅子はベッドと同じぐらい私のお気に入りスペースになった。
それからは、飲み物を入れたコップを置くのにコースターが欲しいとか、いい感じの照明が欲しいとか、椅子にクッションを置いてみたいとか、机と椅子という標準装備を置いてからどんどん新しい欲求がでてきた。何度か失敗しているが、花を飾ってみてもいいかもしれないとすら思う。
部屋を快適にすることに興味がなかった私を変えたのは、すてきな絵でもきれいな花でもなく、リモートワークにより部屋=労働環境になってしまったために仕方なく仕入れたただのなんの変哲もない机と椅子だった。
大人になってから自分で選択できることが増え、自堕落な生活をしていても誰にも怒られることもないので、慣れた生活環境はなかなか変えられないだろうと思っていたが、環境を変えざるを得ない状況で新しい自分を発見できることもあると知った。
次はどんなものを置いてみよう。ルンバのスイッチを入れる日も近い。
***
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