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withコロナ時代のユーチューバー

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:朝木亜佐(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
コロナ禍でインターネットの接続時間が以前よりもさらに長くなった。ネットがあるからこそ、親も子もステイホームが成り立っている。が、中学生の息子のネット視聴時間があまりにも長いのが気がかりでもある。食事と寝る時間以外、ほとんどずっとネットにつながっているのではないだろうか。
 
小さいころは電車と工作が大好きで、もちろんユーチューブも喜んで見ていたが、デジタル端末を片時も離さないような生活ではなかった。当時よく親子で厚紙の電車を作って遊んだ。東京の地下鉄路線を全部制覇して、段ボール箱が車両でいっぱいになった。
 
そのうち紙の電車では物足りなくなり、鉄道模型に興味が移った。きっかけはユーチューブ。手先の器用な大人が何日もかけて(ついでにお金もかけて)細部までジオラマを作り込んでいく様子を見るうちに、息子もやってみたくなったようだ。しかし小学生が、本気を出した大人と同じレベルを目指すのは、どう考えても無謀だった。それでも本格的な模型に憧れて、お年玉で材料を買いそろえ挑戦したのだが、案の定、途中で投げ出して終わった。
 
「オレ、飽きっぽくてなんにも長続きしないからさ……」あるとき息子の話し声が部屋から聞こえてきた。コロナ休校が続くなか、中学校の友達とLINEで通話していたのだった。
 
胃のあたりをギュッと掴まれたような気がした。そんなふうに自分にレッテルを貼っていたのか。息子がモノづくりをしなくなったのは、いつ頃からだったろう。小学校の高学年か、中学に入ってからか。代わりにインターネットが、息子のほぼすべての娯楽の窓口になっていた。
 
そこへ新型コロナウイルスの感染拡大である。息子のネット使用を減らすどころか、逆にもっと必要になってしまった。休校が長引き、家の中にいるしかない毎日のお相手はネット一択。さらには授業がオンライン配信されるようになり、傍から見ると、勉強と遊びの境目がない。デジタル端末を学習に使っているのか、遊びで動画を見ているのか、パッと見ただけでは分からない。学校の調べものだと言われれば、引き下がるしかない。親のコントロールは及ばなくなった。仕事や家事があり、年がら年中見張っているわけにもいかない。
 
ネットの完全断ちが現実的でないことは分かっている。そうは言っても、どうにかならないものかという話である。コロナ自粛でみんなが家にこもり続けたら、経済が回らなくなるジレンマと似ているような……。どちらもバランスを取って共存する道を見つけていくしかないのだろう。
 
そんなある日、息子からLINEが来た。
 
「動画作ったから、チャンネル登録よろしく」
 
いつの間にか、鉄道ネタのユーチューブ・チャンネルを開設していたのだ。
 
おお、そう来たか! 電車×ユーチューブ、好きなもの同士の組み合わせ、いいじゃない!
 
自分からまた創作をする気になってくれたことが、親として単純にうれしかった。この際ユーチューブだって、何だっていい。クオリティが高いとか低いとかも、関係ない。ネットの画面を眺めているだけより、はるかにいい。
 
息子は続けざまに3本動画を制作し、再生回数を順調に伸ばした。大ざっぱに言ってしまえば、鉄オタの人達は電車が映っていれば何でも視聴してくれるらしい。
 
子供だと思っていた息子の新たな一面も見た。私と同年代と思われるような視聴者からのコメントに、大人びた返信をしている。「こんな言葉遣いができるんだ!」息子のコメント返しを読むのも、親バカの密かな楽しみとなった。
 
毎日「更新されてるかな?」と息子のチャンネルを開く。再生回数や登録者数が日に日に増えていくのが、自分のことのようにうれしい。
 
息子がやっと夢中になれることを探り当て、ダラダラと動画を見るだけの日々にオサラバできるものと、私の期待は高まった。
 
ところがというか、やはりというか、物事はそう簡単にはいかないものと知る。2、3週間が過ぎても、動画が3本から一向に増えないのだ。「次の動画は作ってる?」と尋ねても、返ってくるのは沈黙のみ。ウザいというわけだ。しかたないのでストーカーさながら、こっそりとチャンネルを覗きに行くが、コメントへのリアクションも取っていないようだった。
 
「もしかして、もうやる気を失っちゃったの?!」もちろん息子に向かっては言えないが。オレ、飽きっぽいから……いつぞやの息子の声が頭のなかに響く。盛り上がったあとだけに、落胆も大きかった。
 
そこへ昨日、突然ボソッと報告してきたのだ。
 
「1か月ぶりに新しい動画を作ったよ」
 
飽きちゃったわけではなかったのか! ちょっと意外だったが、ホッとした。もう一喜一憂の大騒ぎは、やめておこう。なんだかコロナウイルスの感染者数の増減を、固唾を飲んで見守る心理に重なった。
 
 
 
 
***
 
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2020-07-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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