まちの頼れる「薬剤師」
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:高橋祐子(ライティング・ゼミ通信限定コース)
私の友人は、調剤薬局で勤める薬剤師。
小さいころからよく知っているが、彼女の口癖は
「これ体にいいの?」
だった。重度の健康オタクだった、当時はただただ口うるさかった。家族でもない私の食べるもの食べるものに口をはさむ。当時はわからなかったが、大人になってきくと彼女なりの思いはやはりあったらしい。自分の家族が病気がちだったこと、その時身近にいた薬剤師さんにかなりお世話になったこと、そのとき薬剤師さんには「体は口にしたものでできているんだ、体を守るには食事から」と聞いた言葉を素直に受け止めたこと。つまり私はその一連のとばっちりを受けていた。
そのころから、将来は食品を開発する研究者になりたいと豪語していた彼女だが、冒頭の通り今では調剤薬局で新米薬剤師をしている。
きっかけは、研究職を目指しながら通った、実習の思い出らしい。
実は彼女の初めての実習先はドラッグストアだった。そこで彼女は衝撃の出会いをした。
……おじいちゃん。
先輩薬剤師のあまりの高齢さに彼女ははじめ戸惑ったが、このおじいちゃんは期待を裏切るスーパーマンだった。とにかく博識で、聞けば70を超える御年であったがきびきびした動きは若さすら感じるほどだったらしい。彼女は勤務時間中、隙間時間さえあればおじいちゃんから、ひたすら漢方を教わった。なんとおじいちゃん、定年まで製薬会社で営業を勤め上げてから、いちから調剤薬局での仕事を学びなおし、新たな資格まで取得したそう。それが「中医師」。日本では聞きなじみのないこの資格、中国では名前通り医師として認められる。中国医学の専門家なので漢方に詳しいのはそのためだった。
彼女が心つかまれたのはおじいちゃんのパワフルさだった。
「何かしらステップアップになるかな、と期待してね。」
体力の続く限り世に貢献したい、と自身をアップデートするために、中国医学の専門学校にも通われた薬剤師の大先輩。その姿に、いくつになってもこの大先輩のように自分も必要とされたい、と意識が変わった瞬間だった。
彼女の体験談は、確かに私にとっての薬剤師のイメージもがらっと変えるものだった。
彼女の実習の物語はもう一つある。
「薬だけじゃない、食事も運動も含めて、健康へ導くアドバイスができるようになりたいと思って……」
実習生の彼女は、薬剤師歴15年、ベテランの先輩のこの言葉にはっとした。先輩は資格を取得してからこのかた、調剤薬局で勤務を続けているが、ずっとどこか、もやもやした気持ちを抱えているという。毎日薬を渡して見送るが「症状が回復しない」悩みが多い。あまりに多い。足繁く通う患者さんの顔が晴れないことに気付き、先輩も見過ごせず声をかける。体調を気遣い問いかけた先には、意外とご主人の愚痴だとか、ご家族の話、診察を受けた内容とは全く異なる睡眠の悩みがぽろぽろと返ってくる。
「この方に必要なのは、薬の飲み合わせの指導じゃなかったんだ。何でも言えて、労わってくれる存在だったんだな、って気付いて。そこまで近くなれたら、生活背景も想像して一緒に体のメンテナンスができる。そうやって体を一緒に良くしていきたい」
思い立った先輩はこのままでは終わらない。自分自身に欠けていると思った知識を習得するため、漢方薬や食膳、整体、カイロプラクティック(骨格のゆがみを矯正する療法)をはじめ様々な資格を取得した。中医師の資格も現在は取得中である。
「病院で治療するだけでなくても、日本人が知らない体のメンテナンス方法はまだたくさんあって、正しく理解を深めてもらうことが大切だと思う」
健康オタクの彼女、先輩の言葉に第一に感動し、次の瞬間弟子入りを誓ったとのこと。
つい先日話したときに彼女は、ドラマの影響からか、待合室の患者さんの雰囲気が心なしか柔らかくなったように感じる、と話してくれた。そういう意味では、もっともっと、スポットライトがあたって然るべき職業だと、私は彼女の話を聞いて思う。
薬剤師さん=薬をくれる人、と思われがちだが、彼女たちの目指す姿はまるで「保健室の先生」のように心も体も救ってくれる存在である。縁の下の力持ち、そんな意味ではたんぽぽのような存在だと私は勝手に思うようになった。少し話は変わるが今では、薬剤師は通院できない方の自宅へ薬を届ける仕事も担当する。また高齢で合併症がある、また複数の医療機関にかかっている、ような場合には薬の飲み合わせが間違っていないか指導も行う。高齢化もコロナ渦も、陰ながら毎日責務を果たしてくれる薬剤師の存在にこんなにも支えられている。
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